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台所ひとりモーニングというご提案
ひとりでゆっくり過ごしたいとき、ちょっと早起きして素敵なカフェでモーニングでも食べに行こうかなぁ……なんて考えてはうっとりすることがある。
家もいいけれど、日常からちょっと離れて新鮮さを味わいたい。
しかし、その「カフェでひとりモーニング」を実行できたためしがほとんどない。
理由はさまざまで、午前中に荷物が届くから家を空けられない、お気に入りのカフェが家からちょっと遠い、メイクして着替えることがめんどうくさい(わたしは楽に今すぐ優雅なモーニングがしたいのだ)、お金をあまりかけたくない(どうかケチではなく倹約家ということにしてほしい)などがある。
小さい子どもがいる人などは、そもそも家を空けるのが難しいこともあるだろう。
そう考えると、「カフェでひとりモーニング」は簡単そうに見えて、意外とハードルが高い行為なのかもしれない。
うーん、それならば、家の中にいながら、ひとりでゆっくりと非日常感を楽しめる朝が過ごせたらいいのにな。
……と、思っていたらあったのだ。
あったらいいなにぴったりの場所が。
それは「台所」である。
そんなわけで、今回の朝の工夫は「台所でひとり時間を過ごす」です。
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「台所でひとりチャイを淹れて本を読む」
***
台所で朝ごはん&ゆったり読書?
ゴールデンウィーク2日目。
7時過ぎに起きて、スヤスヤと寝ている夫を起こさないよう忍び足で寝室を出る。手には1冊の文庫本。
誰かと一緒に暮らしている人がひとりの朝を確保したいのなら、「自分がいちばん早く起きる」というのが最初に遂行すべきミッションである。
ひとまずこれは無事にクリアだ。
水を飲んで、ぼーっとしたり、植物に水やりをしていたらおなかがグーとなった。
よしよし、メインミッションである「台所ひとりモーニング」開始!
今日は、苺ジャムトーストと紅茶の気分。
小さなやかんで水を沸かし、ティーバッグをマグカップにin。そしてそして、8枚切りの食パンを魚焼きグリルにin。
やさしい朝の陽がさしこむ静かな台所で、ボコボコボコと水が沸く音がする。火を止め、やかんの細い注ぎ口からカップに熱い湯を注ぐ。
薄い小皿を逆さにしてカップに載せ、フタ代わりにして少し待つ。ふう。
待っている間にちょうどトーストも焼きあがり、苺ジャムをスプーンでたっぷり塗る。苺ジャムの鮮やかな赤とこんがりトーストは、なんて相性がいいのだろう。
豆乳も飲みたくなって、小さなかわいいカップに注ぐ。そうだ、お気に入りの小さなランチョンマットも敷こう。1枚だと小さすぎるけれど、2枚使えばピッタリだ。
読みかけの本も用意して、完成~!
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わー、なんだこの胸の高鳴りは!
台所の小さなスペースに好きなものがぎゅっと詰めこまれている。
静かな小走りで別室からイスを持ってきて、調理スペースを机代わりにする。
リビングのテーブルでまったく同じことをしてもこんなにときめくことはないのに、どういうわけだか今はワクワクが止まらない。踊ってしまいそう。
なぜなんだ?ここはおしゃれカフェではないのに。
パジャマのままだし、寝ぐせもついたままだし、紛れもなく自分の家の台所だ。それなのになぜこんなに……!
苺ジャムにはやっぱり薄切りトーストがよく合う。焼き目の香ばしさも相まって、幸福メーターがぐんぐん上がっていく。
サクサクが消えないうちに、でも急がず、ひとくちひとくち味わって食べた。
トーストを食べ終えて食器を片付けようとしたとき、片付けのあまりの楽さに感動した。
すぐ右横がシンクなので、座ったまま一歩も動くことなくお皿をシンクに移せるのだ。
リビングで食べるときは、用意するときと片付けるときにテーブルと台所の間を行き来する必要があって、そのほんの数歩がめんどくさがり屋なわたしにとっては大きな差。0歩と数歩の間には想像以上に大きな川が流れているのだ。
調理から片付けまでを移動せずに完結できる台所モーニング、ばんざい!
本を読んでいると、ふと時間が気になった。我が家の台所には時計がない。
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思い立って、リビングのテーブルにある置き時計を台所に移動させてみた。
おお~!いい感じ~!
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調理をするために使っていた台所が、ひとり時間を楽しむための空間に変わっていく。
なんだかいつもより集中して本を読むことができた。
おそらく、台所には気が散るものが置かれていないからだろう。自分の部屋やリビングには、いつでもごろんと横になれるソファーやベッド、テレビ、他の本などが周りにあるのであっちこっちに気が向いてしまう。台所には調理道具はたくさんあるが、いきなり「フライパンあるし料理しちゃお!」となることはあまりない。
区切りのいいところまで本を読み終えると、時間はまだ8時過ぎだった。
こんなにも充実した時間を満喫したあとに、これから1日が始まるぞという気持ちになれるのが最高だ。
***
いつものやり方を疑って、日常の一歩外へ
台所でひとり時間を過ごしたら、台所がただの調理場からまるで秘密基地のようにワクワクする空間に変わった。
きっと、ごはんを食べたり本を読む場所をいつもと変えることで、景色が変わって新鮮さが生まれたのだろう。
おしゃれなカフェに出向かなくても、家の中で特別感のある朝を過ごすことはできるのだ。
でも、リビングのテーブルから自分の部屋のテーブルに場所を変えただけだったら、ここまでのワクワク感は感じられなかったはず。
おそらく、「台所は調理をする場所だ」という考えに捉われずに、食事や読書をする場所として使ったことで非日常感が味わえたのだろう。
わたしがアルバイトをしていたとき、休憩室ではなく駐車場の車の中でお昼ごはんを食べるのが、無性にワクワクして好きだったことを思い出した。
「これはここで行うものだ」、
「これをするにはあれが必要だ」など、
いつもの当たり前のやり方を「他の方法もあるんじゃない?」とちょっと疑ってみることで、朝に限らず、いつもの景色がガラッとワクワクするものに変わるかもしれない。
いくつになっても、たのしむことを忘れないやわらかい頭でいたいものだ。