太陽に焼かれて殺されたダニの香りの芳香剤を売れ 第39.6話
俺の頭の中にはカレンダーがある。なんか詩的なことを言っているわけじゃない。単に日付の把握方法がそうだってだけだ。
別になんか思い出があるカレンダーってわけでもない。可愛いキャラクタや既存のIPが書かれてたりもしない。ひどく灰色なカレンダーがあるだけだ。頭の中で思い出す景色って、灰色以外にないと思うんだが、そんなことはないか?
自分の頭の中をこれまでの俺はこのカレンダーをめくることで整理していた。例えば放課後に始めた、学校の法的に良いのか悪いのかわからんがかなりのずぶずぶな勢いで関わっているスキルシェア業の締め切りなんかは、デジタルでももちろん管理してはいるが、ローカル管理の方法はもっぱらこれ頼みだ。
こんなもの、すぐ消えていく。なぜなら終わった取引に意味なんてなくなるから。「金」というかたちで俺の財布のなかに入ってくれば、過去にどんな相手とどんなやり取りがあったかなんて残ってようがいまいがどうでもいい。頼まなくても、各プラットフォームを見返せば相手とのやり取りが数年間は能動的には一切削除できずに残ってい、それはおそらく後々の言った言わない、つまり係争にプラットフォームとして対応し、「俺を巻き込むな。お前らだけで勝手にもめて解決しやがれ」とさせ、てめえらは楽をするためにユーザに「メッセージのやり取り等を削除させない」というかたちで不便を強いている。
こんなのプラットフォーム管理者の立場の優越を悪用した行為だ。公正取引委員会が目を光らせれば一発だ。だが、そこで働いている人、注文をかける人々は、そのプラットフォームがなくなると生きていけないからいやいや従っているだけだ。こんな思い出が灰色でなくて何色になるだろうか?
灰色なのは変わらんが、なぜか削除されず残っているカレンダーもある。それは俺が出会った企業の中で、割に長い付き合いができることになった相手と出会った頃のカレンダーだ。そのカレンダーは、日付が正しいかどうかなんてわからない。○月1日が月曜日のときもあれば、金曜日として思い出されることもあるだろう。日付と曜日の一致なんてどうでもいいわけだ。
同じように、削除されずに残っている─────というか、勝手にそこに名残り続けているカレンダーがあり、それは
「なんだよこの真っ暗な部屋!!文字通り照らしてどうすんねん」
浅荷と初めて出会った頃から以降の日付が書かれたそれだった。