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太陽に焼かれて殺されたダニの香りの芳香剤を売れ 第02話 anydaze

浅荷|《あさに》と帰る時に俺は何も気にしていなかった。

何も気にしていなかった、というとなにか強がりに聴こえる気がするので直したい。

いきなり異性と帰ることについて何のためらいもないなどということはなく、なにかしら気にしたほうがいいのだろうとは思うのだが、気にする余裕がない。

というのも、「異性との帰りにおいて気にすべき然としたこと」の外郭すら探る余裕もないほど1日の終わりである帰り道は疲れているからだ。

考えてもみてほしい。人によっては恐ろしく歩いたり、上り坂下り坂を自転車で死ぬほど繰り返したり、殺伐とした社会にすでに参加しているあらゆる年齢の連中とともに放り込まれる満員電車で死ぬほど揺さぶられた後に、死ぬほど退屈な授業を朝から受けさせられ、早く帰りたいのに校則でクラブをやらされ、7-8時間「疲れ」とみっちりつきあわされた後に帰るのだ。

そんな中で異性に気を遣う余裕なんてあるだろうか?どんなに心から愛している異性と共に下校することが確定していたとして……それなら頑張れるのか。俺にはわからない。ともあれ、モチベーションというか気力をそこまで保つ余裕など俺にはなかった。浅荷についても同じなんじゃないかと勝手に思っている。

例えば1日疲れた俺という生き物が排出しただろう老廃物とかが身体の周りに漂ってい、妙な香りとかを発生せしめていたとしてそんなことに気付けるわけがなかった。あるいはそのような人生経験の少なさで気遣うゆとりなどなかった。把握能力自体が芽生えていないということだ。

だから浅荷にとっても同じだろうと思っていたので、水浴びしてから帰ってると聞いた時に単純に羨ましく思った。その余裕さをである。

聞くと大体の部員がそうしているようだった。そうまでしていることにただ単純に驚いた。

女とは斯くも若くしてそのような体裁というか、対面というか、自己の風評について重大に捉えており、超一生懸命考えているのかな、とその時は思うしかなkった。いや、今でもそのような異性に対しての考え方は特に代わり映えしてない状態なのだが……

俺は浅荷のように必至に運動しなければならないクラブなどには所属しておらず、これまでもこれからも所属する気などなく、そのような生活をしていると、特に気温がそうでもない夏場以外に閉じてしまうという汗腺をそのまま閉ざしてしまい、いざ運動して開いた時に通常よりよろしくない老廃物が排出されてしまい、いきおいよろしくない香りを出してしまうというような可能性を抱えながら過ごしているに過ぎなかった(のだが、結果的に夏場以外での斯様な心配をすることはなくなった)。

つまり、誠に浅い俺の論点として─────異性である浅荷と帰ることにはっ、何も感じてないぜと「効いてない感」など演出したいつもりなど決してなく、このように長々とした説明を挟み込まねばならないほどには重く相手のことを意識していたのだ─────ということが伝われば幸いだ。

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