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紋章学とギュスターヴ・モロー 、ライオンのドアノッカーがやばい
数年前、Gucciにドはまりした時期がある。当時の私は社畜で、週末はベッドから起き上がれず、日曜の夜は新しい週が始まることが怖くて、安定剤を飲みながら日付が変わっても悶々と寝返りをうち自然と気を失うのを待つような暮らしを送っていた。そんな中私の目を引いたのは、Gucciのライオンリングであった。
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ライオンが色のついた石を咥えているデザインは、豪華賢覧でゴテゴテした装飾が好きな自分のタイプのど真ん中だったので、そこから同シリーズのキャットヘッドのピアスやネックレスなど金をつぎ込んで収集する趣味が始まった。社畜すぎて買い物に逃避していた感も否めないが、今でもたまにまとめて眺めては恍惚とした気分になるし、やっぱり好きなデザインの小物を眺めるのは癒しだ。
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象徴主義、モロー最高!
さて、Youtubeをなんとなく見ていると西洋美術についての動画が流れていた。最近は調べては忘れてを繰り返している西洋美術の歴史とか◯◯派とか、いい加減ちゃんと勉強して覚えようとしている。世界史の授業の中で一番好きだったのは美術史で、ラファエロとかルネサンスとか大好きだった。でも如何せんふわっとしかわかっていないため、せめて自分が好きなものはちゃんと人に説明できるようになりたいと思う。私は漫画家の山田玲司先生のヤングサンデーというチャンネルのファンなのだが、自動再生しているとマティス回が流れて来た。
マティスのすばらしさを玲司先生が解説している内容なんだけど、「見たものをそのまま描くなら写真でいいじゃん。感じたものを描くのが絵だろ!」(※ニュアンス)ということで出てきたのが象徴主義という流れだそうで、これは小学校の頃に私が思っていたことと全く同じだったのでびっくりした。私は図工の成績はいつも5だったのだが、写生会で外に連れていかれるのはあまり好きじゃなかった。目の前の草木をそのまま書くよりも、空を泳ぐドラゴンとかドクロのお姫様とか、「これは何を描いてるの?」と聞かれても答えに困るような絵を描くことが好きだった。デッサンがしっかりできないせいもあるんだけど、見たままを描く、観察する集中力が続かないので頭の中の空想が勝手に筆から漏れていく。その時に思っていたことこそがまさに、そっくりに書くなら写真でいいじゃん、という考えだったわけで、ははあ自分は子供の頃から象徴主義だったのだな!と納得した。じゃあ象徴主義とやらをもっと調べようではないか、と思った矢先、番組MCのおっくんが「モローの絵のあの神話性凄いよね!」と言った。神話性、というのはとても好きな言葉だ。子供の頃の私はギリシャやローマ神話の神様を暗記しており、ドラクエやFFのモンスターの元ネタを調べては興奮したので、世界の神話や伝説は今でも大好きだ。現実はいつもシンドイので、自分を幻想の世界に連れて行ってくれるような「聖なるものを見たい」「この世のものではないものと出会いたい」という強い欲求があるんだと思う。きっとモローも繊細な人だったのかなぁ。どれどれ、とネットでモローの絵を検索するとサロメやスフィンクスが描かれている絵など、なるほど神話や伝説をモチーフにした絵がたくさん出てくる。その中でも私が目を奪われたのは、翼のはえたライオンに婦人が寄り添っている絵だった。
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幻想的な色合い、少しかすれてぼやけたタッチ、物憂げな婦人の顔、なにより翼のはえたライオン!なんだこのどんぴしゃな絵は!と見事に私のハートにぶっ刺さり、絵のタイトルや詳細を知るべく鬼のように検索をかけていく(引っかからない場合は英語で検索したり、画像検索したりすると上手くいくことが多い)というわけで探し出したモローの絵は「Venice」というタイトルで、その名の通りヴェネツィアがテーマの絵のようだ。有翼の獅子はヴェネツィアの聖マルコのシンボルだそう。有翼の獅子。字ヅラがすでにかっこいい。たまらん。ヨーロッパではライオンがアイコンとしてよく出てくる。権威とか強さの象徴なんだろうけど、そういえば私はこの勇々しいライオンのデザインを日常的によく見ている気がする…そうだ、Gucciのリングじゃないか!ということで、冒頭の話と繋がるわけなのだ。
紋章学とかいうかっこいい学問
世の中には紋章学というとても面白い学問があり、紋章の起源,構成,図柄,色彩などを研究し,中世社会文化史を解明する学問のようだ。中世の騎士社会で、兜被って鎧着てると敵か味方かわかんなくね?ということで、見分けるために盾に自軍のマークつけようぜ!というのが紋章の起源らしい。西洋の王家の紋章にライオンがよく出てくる理由は前述した通り権威や強さを象徴するからだそうで、同様の理由でワシや、狼などもよく使われている様子。紋章の構成要素にも色々あり、メインとなる「エスカッシャン(盾)」とそれを支える「サポーター」、エスカッシャンの上部を飾る「ヘルメット(Helmet、兜)」、「クレスト(Crest、兜飾り)」、「マント (Mantling)」、「リース (Wreath)」など、それぞれにさらに膨大な種類の組み合わせがあるようだ。この辺りがちょっとわかっていると、ヨーロッパ旅行がもっと面白くなりそう。イタリアとかイギリスとかの古い建物を見に行くと、きっと紋章がたくさん見つかるんだろう。やばい、専門書が欲しくなってしまう...
ライオンのドアノッカーがやばい
個人的にはやっぱりライオンがかっこよくて、ライオンが何かを咥えてるデザインが特に大好き。ライオンが何かを咥えているといえば、玄関のドアに取り付けて客人が来た時にこんこん、と輪っかを使ってノックするアレを思い出す。調べたところアレの名前はドアノッカーというらしい。このドアノッカーにも色んな種類があって面白い。最近のものだとウサギや鳥など可愛らしいものもあるが、昔ながらのデザインだとやはりライオンや神様の顔、オオカミや鹿などが多い気がした。そもそもドアノッカーのシンボルには魔除けが用いられることが多かったようで、確かに強そうな生き物にどん!と構えてもらって、家に邪悪なものを入れたくないという気持ちもわかる。神社には狛犬がいるし、沖縄の民家にはシーサーがいるし、家を邪悪なものから守りたいという気持ちは古今東西同じなんだろう。
…と、さらにいろいろ調べているうちにこのドアノッカーを模したスマホリングを発見し、可愛すぎて購入してしまった!
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私は手が小さいせいでスマホをよく落とすし、文字入力や画面操作も毎回大変なので、これで少しは改善するといいなと思う。そしてどうか私のスマホを邪悪なウイルスやスパムメールから守ってくれ!