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今年の本。

あと数時間で今年が終わる。
なにかやり残したことがないかと探していたら、noteをしばらく書いていないことを思い出した。

12月に大事な試験があり、10月以降はその試験勉強に時間を全振りした。
全振りしたといっても、その間に職場の勉強会の資料作りや函館に呼んでいただいて講演をすることなって、その資料作りなども平行して行っていたため、試験が終わるまでの間は本当に時間がなかった。

たぶんここ数年で一番忙しい年末だったように思う。
けれど忙しいときに限って、今見なくてもよい過去のドラマや家にある漫画に手を出してしまうのはなんなのか。
この現象に名前が欲しい。

なので今年は忙しかったけれど、それなりに逃避をしていたので本は読めた。いま数えたら20冊は読んでいた。

中でも今年読んで面白かった本は沢木耕太郎の「深夜特急」と以前紹介した、若松英輔の「悲しみの秘儀」、伊坂幸太郎の「逆ソクラテス」である。

「深夜特急」は言わずとしれた旅本の古典というべき本であるが、私はその存在が気になっていたものの手に取ったことはなかった。

ある日、70歳代の女性の患者さんの部屋にいくと、TV台の上に文庫版の深夜特急が6冊並んでいるのが見えた。
私「本、読まれるのですか?、深夜特急とは渋いですね」

女性「そうなの、これ好きで何回も読んでるんだけど、これを読むたびに、私を違う世界へ連れてってくれるの」
「世の中には知らないことがたくさんある、知らない文化もたくさんある、人が知っていることなんてほんの少しだけ、そう思うと謙虚になれる」

なんて素敵な言葉だろう。

女性「わたしにはもう必要のないもの、読むならこれあげる」

そういって女性は私に深夜特急1-6を渡した。

そのときの私は忙しさのピークにあったが、ありがたく受け取り、勉強の合間に本を開いては、頭の中でトリップしていた。

やらなきゃいけないことの鎖にしばられ、がんじがらめになっていた私が唯一自由になれるときだった。
そしてそんな状況でさえも幸せだなと思えるような環境が世界には無数にあることを知った。それは知識よりも著者の圧倒的な体験であった。

読み終えたあと、無性に旅がしたくなり、深夜バスに乗っていく、青森行きのフェリーのチケットをとった。なるべく身体全体で街を味わえるような旅がしたかった。

私にとって2023年はようやく井の中から手を出し、這い上がろうとした年だったように思う。
ある占いにもそのようなことが書いてあった。
そして2024年からは新たな世界が「圧倒的」に拡がっていくのを目にするのだという。

いま思えば、これまでの10年はそんな世界で生き残るための準備をしていた期間だったように思える。

もう怖いものはない。

2024年、井の縁にかかった手を頼りに思いっきり身体を引き上げる。
そこにどんな世界が拡がっているのか、

あのタイミングで「深夜特急」を手にしたのは必然だった。
2023年、私の一冊。

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ふつうのひと@理学療法士_JSPO‐AT
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