休むこと。 Vol.3 ~ 寝具の選び方 ~
休むこと Vol.2では「眠ること」の科学的なお話についてまとめました。
良質な睡眠を得るためには「寝具」もとても大切になります。
今回は理学療法士から見た「良い寝具の選び方」についてお話していきたいと思います。
「寝具にはお金を惜しまない」
これは「松浦弥太郎ベーシックノート100の基本」に記されている言葉です。
2012年に本書に出会って、ずっと気になっていたけれど実行できていないことの一つです。
寝ることは「健康」を考える上では外せない要素の一つです。
ですから、安眠、良眠を得るための投資のリターンは「健康」ともいえます。
寝て起きたときに熟睡した感じがしない、身体がだるい、痛い、循環が悪い感じがする(むくむ)などの症状が出る方は寝具が身体に合っていない可能性があります。
私も40歳を迎え、最近、朝になると重だるさを感じるようになってきました。
先日は少し良いホテルに泊まって低反発のフカフカのマットレスの敷いてあるベッドで寝たのですが、寝るときは雲の上にいるような心地で気持ちが良かったものの、寝入るとあまり寝返りをうつことができず、朝起きると非常に肩が凝ってる感じがして、あまり調子がよくありませんでした。
このようにいくら高級なものだったとしても身体に合わなければ、逆に健康を害してしまうこともあり、寝具選びは慎重に行う必要があります。
寝具の選び方
勤め先では腰痛、肩こり(頚部痛)持ちの患者さんにどんなベッド(マットレス)を選べばよいのか、どんな枕にすればよいのかを聞かれることが多いですが、それぞれの症状、状態、生活習慣、好みによって条件が変わるため、一様にこれが良いというものはありません。
ただ、少しだけ理学療法士的にアドバイスできることがあるとしたら、自分の背骨の形状によって枕やマットレスの硬さを調整することはできます。
まず、マットレス選びですが、腰椎の前弯が少しきつめ、図のBのような「反り腰」気味の人は、寝返りが打てる程度の柔らかめのマットレス(低反発マットレス)を選んだ方が、腰背部の筋肉は緩みやすくなります。
逆に図のC、Dのような腰椎の前弯が消失しているような姿勢の方はちょっと硬めのマットレス(高反発マットレスなど)をおすすめしています。
枕についてはこちらも頚椎の湾曲の度合いにもよるのですが、弯曲がきつければ(前弯気味)柔らかめを、ストレートな場合は少し硬めを選べばよいと思います。
そして、どちらにしても寝てみて、寝返りをしたときに身体の向きに対して、首がきれいに回るぐらいの硬さと高さがポイントとなります。
高さについては耳のラインが床と平行になるのが理想とされていますが、すでに頭位が前方に位置(耳が肩のラインより前)している方は耳のラインに合わせると低すぎて寝づらいと感じると思います。
したがって、枕を下に押し付けるような筋トレや首の前側の筋肉のストレッチなどの運動療法を加えて頭位を戻してあげながら、タオルなどで高さを徐々に調節していくのが良いと思います。
寝返りが大事
寝返りは血液循環の維持や体温調節、睡眠周期の切り替えに重要とされており、これにより良質な睡眠を確保するとともに、液滞留や圧力負荷による肩こりや腰痛の予防にもなります。
ずっと同じ姿勢(仰向け、横向き)で寝ていると筋の長さや張力も変わってしまい姿勢悪化や関節変形の要因ともなりますので注意が必要です。
理想的な寝方は仰向けが良いとされていますが、横向きでしか寝れない人は足の間に枕を挟むなどして、なるべく骨盤が捻れないように工夫すると、身体が歪みずらく、寝返りもしやすくなります。
寝たときに自分の身体に意識を向けて、全身が力が抜けているのかを確認してみてください。
左右の骨盤を軽く持ち上げながら、身体を回してみて、寝返りのしやすい方、しにくい方がある場合は、筋のバランスや身体の歪みがある可能性があります。
回しにくい方へ軽く数回まわしていくと身体が少しほぐれてくるかと思います。それで最初に寝たときと身体の力の抜け具合や床の当たり方が変わってくるかを確認してみてください。
左右バランス良く、身体がベッドに沈むように感じることができれば、うまく力が抜けていると思います。
私の欲しいベッド
ベッドは高い買い物ですので、できれば寝てみて決めたいと思っています。
ですので、出張の度にホテルのベッドをチェックしてみてるのですが、なかなか理想的なベッドに巡り会うことができず、今も昔と変わらないベッドを使い続けています。
そんな私がいま一番気になっているベッドがこちらのベッドです。
IWATA http://www.iozon.co.jp/news/5844
その名も「人類進化ベッド」です。
このベッドはチンパンジーの作るベッドをヒントに京都の老舗寝具メーカーIWATAが環境デザイナーらと協力して開発したものです。
チンパンジーは実は寝床づくりの達人と言われていて、毎日移動しては木の枝を折り、曲げ、ちぎってベッドを作っているそうです。
その数は年365個になりますから、チンパンジーはベッド作りの達人です。
そのチンパンジーが作るベッドは中央部が凹んだ楕円形で直径は平均90cm程度だそうで、チンパンチー研究者が研究のために木の上に作られたベッドに上がり、横になってみたところ、あまりの寝心地にそのまま熟睡してしまったそうです。
ヒトの祖先も元々は木の上で寝ていただろうことを考えると、妙に納得し、このベッドのネーミングもしっくりきます。
お値段は370,000円(税別)です。
ただ、こちらの商品、揺れるため、お昼寝用には向きそうですが、これで朝まで寝ることは可能なのでしょうか?
こちらのベッドを導入しているホテルがあればぜひ泊まってみたいですね。
まとめ
寝具は身体の形状や状態によって選び方が異なるため一様に「良いもの」はない。
寝たときにうまく力が抜けており、寝返りを邪魔しない寝具選びが大切
身体の歪みや姿勢の変化は寝方に影響を及ぼすため、必要に応じてストレッチや運動などを行う。また、寝たときに歪みを作らない工夫も大切となる。
本日は「寝ること」の続き、「寝具の選び方」についてご紹介させていただきました。次回の「休むこと。」はメンテナンスについてまとめていきます。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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