NOISE: 組織はなぜ判断を誤るのか?( 2021/12/2)/ダニエル・カーネマン【読書ノート】
ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマン教授の待望の新刊、今作は前著『ファスト&スロー』の洞察を更に深める一冊となっている。前作で詳細に解説された「バイアス」の存在とそれに起因する誤判断に対し、本書は「ノイズ」という、我々が意識しづらい判断のゆがみを鋭く取り上げている。射撃のアナロジーがこの両者の微妙な違いを見事に描写しており、「バイアス」とは的の一方向への偏向であるのに対し、「ノイズ」とはその外れ方の不均一性、つまり一貫性の欠如を指す。
「バイアス」は明確な形で現れるため、一度指摘されれば修正へのアプローチが容易だが、「ノイズ」はより繊細かつ抽象的な存在で、意識的な取り組みがなければその影響を見逃すことが多い。読者の興味を引きつけるエピソードや例え話での語り口は、前著が持っていた魅力の一部ではある。しかし、今作『ノイズ』は前著よりも実践的な視点で書かれており、特に下巻ではノイズを排除するための具体的な方法がビジネス書としての形でまとめられている。
人間という存在は日常からビジネス、政治の舞台まで、絶えず判断を下す必要がある。その判断を歪みなく、より正確に導くための手引きとして、本書はまさに欠かせない教材と言えるだろう。
『ファスト&スロー』のカーネマンが、行動経済学を更新する。「ニューヨーク・タイムズ」ベストセラー
「『NOISE』は行動経済学の書籍として必要な要素をすべて網羅している、まさにホームランのような本だ」――アダム・グラント(『GIVE&TAKE「与える人」こそ成功する時代』著者)
「この十数年で読んだなかで最も重要な本。真に新しいアイデアで、すぐにでも実践したくなる。傑作」――アンジェラ・ダックワース(『やり抜く GRIT(グリット)』著者)
ビジネスパーソンから政治家や科学者まで、あらゆる人が読むべき名著
――松尾豊(東京大学大学院工学系研究科教授)
行動経済学の第一人者による、「心理ノイズ」の初の本格書!
――入山章栄(早稲田大学大学院経営管理研究科教授)
さまざまな現場でのノイズの事例だけでなく、それを改善する具体的な方策も豊富に提示されている。重要な判断にかかわる仕事をしているすべての人、必読――橘玲(『無理ゲー社会』著者)
『ノイズ』は、見えないところで起きている社会的な大問題を見事に解明している――スティーヴン・レヴィット(『ヤバい経済学』共著者)
本書で著者は、人間の判断の欠陥に関する独自の洞察を、あらゆる分野に見事に応用している。『ノイズ』は見事な業績であり、画期的な作品だ
――フィリップ・E・テトロック(『超予測力』共著者)
人間の判断力の根幹にありながら、これまで見過ごされてきた部分を扱っている。判断力の低下を明らかにする、必読書
――ロバート・B・チャルディーニ(『影響力の武器』著者)
効果のない政策の最大の原因は、多くの場合、偏見や汚職や悪意ではなく、3つの「I」である。直感(Intuition)、無知(Ignorance)、惰性(Inertia)。
この本は、なぜ3つの「I」が蔓延しているのか、そしてそれに対抗するために何ができるのかを見事に示している。目が覚めるような本である
――エステル・デュフロ(2019年ノーベル経済学賞受賞。『絶望を希望に変える経済学』共著者)
バイアスとノイズについて
バイアスは個人の思い込みで、さまざまな種類が存在します。例えば、人は損失回避バイアスにより、マイナスに強く反応し、同じことが平均よりも良いと思いがちです。
また、平均以上バイアスでは、人々は自分が平均以上であると思い込み、平均的なレベルよりも優れていると考える傾向があります。
保有効果は、人々が自分の持ち物を高く評価する傾向を指します。例えば、100円で購入したコーヒーカップは、同じ商品を買った人にとっては高く評価されることがあります。
ノイズについて
ノイズは、判断や意思決定に影響を与える要因であり、個人だけでなく、組織や集団にも影響を及ぼします。
例えば、同じ判断をする場合でも、個人によって反応が異なり、その結果、判断がばらつくことがあります。
ノイズは経済の予測などで影響を及ぼすこともあり、同じ情報を持っていても異なる判断がされることがあります。
ノイズ対策
ノイズを減少させるために、ガイドラインやチェックリストを使用したり、第三者に確認を依頼する方法があります。
意思決定プロセスを可視化することで、エラーを減らすことができます。
このように、組織が判断を誤る原因としてバイアスとノイズがあり、ノイズ対策として具体的な方法が紹介されています。
経済学者による「NOISE 組織の判断誤りの解説」 - 行動経済学と意思決定の分析【とっとり研究所】
NOISE とは何か?
経済学者の飯田泰之教授が、ノーベル経済学賞受賞者であるダニエル・カーネマンさんの著書「NOISE」について解説します。NOISEは、行動経済学に関連した重要なトピックについて教えていただきます。
ファストアンドスローの理論
カーネマンさんの「NOISE」は、彼の以前の著書「ファストアンドスロー」の続編であり、人間の意思決定におけるファストな論理とスローな論理に焦点を当てています。ファストな論理は直感的な選択に関連し、スローな論理は論理的な思考や倫理に基づく意思決定を指します。
NOISEの概要と問題点
NOISEは、ロジカルな意思決定からブレる傾向を説明しています。人々は平均的な行動やロジカルな判断からのブレを持つことがあり、これが重要な行動経済学的な側面です。例えば、スピード違反や事故の減少を考える際、道路の感覚を変えることがスピードの判断に影響することが示されています。
権威と意思決定
NOISEは、権威や肩書きに基づく意思決定のバイアスも探求しています。多くの場合、人々は権威のある人の意見を信じがちであり、これが正しいかどうかは考えずに行動することがあります。
エビデンスの重要性
NOISEの議論は、バイアスの影響を持つ行動について説明しています。証拠やデータに基づいた意思決定が重要であり、特に人々の行動に影響を与える歪みを理解するためのエビデンスが必要です。
テレビ視聴と成績の話題
エビデンスに関する興味深い例として、1960年代から70年代にテレビ視聴が成績に悪影響を与えるという主張が挙げられます。これは、人々が証拠なしに行動する傾向を示す一例です。このように、経済学者の視点から「NOISE」の内容を解説し、意思決定におけるさまざまな要因とバイアスについて議論しています。