【漢訳本文】
【読み下し】
【原典和訳】
第一章:マントラを説いた経典
マントラという祈りの言葉
真実 の 言葉、 真言
マントラを説いた『般若心経』
『般若心経』の生い立ち
『般若心経』のタイトルは原典になかった?
「般若波羅蜜多心」とはどんな意味か
『般若心経』の「小本」と「大本」
『般若心経』は一幕もののドラマ
観自在菩薩の登場と全体の構成
正しい理解のために
第二章:自己の探求瞑想主義と観自在菩薩という意味
マントラを念誦する修行法
インド仏教史の中の『般若心経』
『般若心経』が重んじられてきたわけ
インド哲学で異彩を放つ「空観」
自分という存在を見極める
自己を観察する瞑想
観ることが般若に立脚した修行
「一切の苦厄を度す」という一挿句
仏伝レリーフでわかった『般若心経』のメッセージ
第三章:空の瞑想
五蘊皆空の伝授
的はずれな解釈
色即是空の意味
色即是空という二つの段階
瞑想修行の階段を昇る
四階のフロア、観自在菩薩の境地
「自己」の正体を見極めて「無我」へ
第四章:不生不滅の諸法
原意から探る法(ダルマ)の意味
ダルマはどこに保持されるのか
釈尊の成道と諸法の顕現
五蘊と十二因縁
諸法は空を特徴としている
舎利子の入門
ダルマ研究(アビダルマ)の活発化
アビダルマへの批判が生んだ大乗仏教
なぜ観自在菩薩と舎利子なのか
六つの「不」の真意
「ここ」とはどこか
第五章:空の中には何もない
ないものとはダルマ
『般若心経』にみるダルマの分類法
十二縁起のダルマをどう観るか
因果系列は無明に始まる
十二縁起という瞑想のプロセス
四諦説は「真理」とは無関係
「智もなく、得もなし」瞑想指南の完了
第六章:涅槃の境地
【漢訳本文】以無所得故、菩提薩埵、依般若波羅蜜多故、心無罣礙、無罣礙故、無有恐怖、*遠離一切顚倒夢想、究竟涅槃。
【読み下し】得る所なきをもっての故に、菩提薩埵は般若波羅蜜多によるが故に、心に罣礙なし。罣礙なきが故に、恐怖あることなし。*一切の顚倒夢想を遠離して涅槃を究竟せり。
【原典和訳】この故に、ここにはいかなるものもないから、菩薩は般若波羅蜜多を拠り所として、心の妨げなく安住している。心の妨げがないので、恐れがなく、*ないものをあると考えるような見方を超越していて、まったく開放された境地でいる。
*註:『自性(svabhava)が存在しない』と考えるような誤った見方を離れて、全く開放された境地でいる。
本段の主語は菩提薩埵
般若波羅蜜多によって
心を妨げるものもない
「超越」とは階段を昇り切っていること
「涅槃」の原意は覆いのない状態
第七章:般若のさとり
般若波羅蜜多に立脚して「さとる」
編纂された『般若心経』
羅什訳と玄奘訳
三世の諸仏
仏説の真意
第八章:祈りのマントラ
【漢訳本文】故知、般若波羅蜜多、是大神咒、是大明咒、是無上咒、是無等等咒、能除一切苦、真実不虚故、説般若波羅蜜多咒。即説咒曰。掲諦、掲諦、波羅掲諦、波羅僧掲諦、菩提、娑婆賀。般若心経。
【原典和訳】それ故に知るべきである。般若波羅蜜多の大いなるマントラ、大いなる明知のマントラ、この上ないマントラ、比類なきマントラは、すべての苦を鎮めるものであり、偽りがないから、真実である。般若波羅蜜多の修行で誦えるマントラは、次の通りである。 ガテー、ガテー、パーラガテー、パーラサンガテー、ボーディ、スヴァーハー。 以上で、般若波羅蜜多のマントラ、提示し終わる。
四種の賛辞
*註
羯諦咒の意図⇒自性に合一すること
マントラは有資格者から伝授されたものしか効果をもたない
羯諦咒の伝授と効果⇒全知性と悟り(プルシャ)が得られる
「掲諦、掲諦」にこめられた賛美
参考:仏説 聖仏母般若波羅蜜多経