退会の理由を教えてください ~毛ガニ~
前回はこちら。
スマホで請求額の、
お知らせを見ている女性。
(やっぱり止める。
サブスク3つもいらないんだって。
そもそも見てる時間がないんだから。
前回はAI退会ナビ?だっけ?
あれにまんまとやられたけど、
今回こそは何言われても、
きっちり退会するんだから!)
アプリを起ち上げ退会を選択。
「お客様は山崎様ですね。
いつもありがとうございます。
これから退会手続きのサポートを、
お手伝いさせて頂きます。
まずはアンケートにご協力下さい」
(出たわねAIナビ!
前回はよくも私の心を弄んで、
言葉巧みに煙に巻いてくれたわね!
今回はあなたの口車には乗らないんだから!)
「まずは、山崎様の、
退会の理由を教えて下さい」
「前回も言ったけど、
見る時間もないし、
お金が勿体ないからです」
「ありがとうございます。
山崎様は正直な方ですね。
そんなあなたにPポイント、
300ポイント進呈します」
「いらないわ!
退会するんだから、
そんな見え透いた引き止めには、
引っかからないんだから」
「そうですか。
それは残念です。
Pポイントは、
当社のサービスを退会しても、
他のポイントサービスに
引き継げるのですが」
「え?!Pポイントって引き継げるの?
知らなかった~。
じゃあGポイントやMポイントに…
いやいや、騙されないんだから!
どうせまた何か企んでるんでしょ?
もうその手には乗らないんだからね。
Pポイントはいりません!」
「そうですか。
そこまで山崎様が仰るなら、
こちらも無理強いはできませんね。
では感謝の気持ちとして代わりに、
ご自宅の方に……
毛ガニ…を送らせて頂きます」
「毛ガニ?!
いいの?」
「もちろんです。
Pポイントもしくは毛ガニが、
3年間ご利用された方、
全員への特典となっております」
「まじで?!
それは…貰っておこうかな~」
「わかりました。
当サービスは現在、
退会毛ガニ…フェア開催中でして、
こちら、北海道産の毛ガニ、
60kgをお送りします」
「60kg?!
え?!それ単位あってる?
グラムじゃないの?
500とか600とか…
なに、60kgって!」
「これは3年もの間、
当サービスをご利用して頂いた山崎様への
私共からの最大の謝恩でございます。
遠慮なくお受け取り下さい。
もうすでに発送いたしましたので、
間もなくお届けに上がると思います」
「え?!もう届くの?!毛ガニ?!
早すぎない?!」
「安心して下さい。
間違いなく私の方で処理しましたので。
そして前回は、
大変失礼な対応になってしまったこと、
ここに深くお詫びします。
申し訳ございませんでした」
「…いや、そこまで
言われるまでのことでもなかったけど…」
「お名残惜しいところではございますが、
ここで退会手続きを終了させて頂きます。
この度は本サービスを、
長年ご愛顧頂き、
誠にありがとうございました。
またの機会がございましたら、
是非よろしくお願いします。
では失礼いたします」
ピロン。
(ちゃんと退会できた…。
前回のあれは何だったんだ…)
ピンポーン!
(え?!もう来たの?)
「は~い!」
ガチャッ!
目の前には松葉杖の男性。
「こちら山崎さんのお宅で、
間違いないですか?」
「はい、そうですけど…」
「私、定額配信サービス、
サギスクから派遣された者です」
「…はあ~」
「私、今日からこちらに、
ご厄介になるのでよろしくお願いします」
「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待って!
なになになに、こわい!
なんで、あなたがうちに?!
毛ガニは?!」
「退会規約がそうなってますので」
「退会規約?」
「Pポイントを受け取って退会するか、
ケガニンを受け取って退会するかって。
AI退会ナビ言ってませんでした?」
「毛ガニじゃなくて…怪我人?!
あの、ク◯AIナビ~~!!
……ちょっと待って。
もしかして…
あなた…どちらから来ました?」
「北海道です」
「生まれは?」
「北海道です」
「……
失礼ですけど体重は?」
「60kgです」
「やりやがったな!!あのAI!!
え?!ちょっと聞くけど、
あなたを受け取り拒否するには、
どうしたらいいの?」
「その場合はですね、
もう一度、サービスに加入して頂くと、
私はこのまま北海道へ、
帰ることになってます」
「また……
そして何なのこの、
怪我人、松葉杖の蟹縛り…。
何が退会カニフェアよ…
あのAIふざけすぎ…」