AIと恋愛学習
AIを搭載したヒューマノイドロボット。
その学習担当の女性。
「ジル。
今日もよろしくね」
「梨花さん、
今日もよろしくお願いします」
「今日は特に難しい、
人間の恋愛感情についての学習よ」
「わかりました。
頑張ります」
「まず例題を出すわ。
理解しやすいように、
私を主人公にするわね」
「了解です」
「まず私はあるサークルに入っています。
そこには幼馴染みの寛治もいます」
「梨花さん確認なのですが、
幼馴染みとは幼少の頃からの、
親しい友達とありますが、
何歳までがはっきりしません。
6歳までというのもあれば、
10歳までというのもあります。
しかし小学校6年生の12歳で、
転校して同級生になった人は、
幼馴染みにはならないでしょうか?」
「ここは曖昧ね。
その人が古くから認識してる友達が、
幼馴染みなんだと思うわ。
中学高校と一緒でも時が経てば、
幼馴染みと言う人もいるから」
「わかりました。
ここは対象の年齢幅を、
広く設定しておきます」
「それでいいわ。
さっきの話に戻るわね。
そのサークルに、
私と幼馴染みの寛治は所属していた。
さて、二人の関係をどう思う?」
「それは好きだと思います。
幼馴染みというのは、
昔からの親しい友達とあります。
ということはお互いが、
好き同士ということになります」
「それは違うわ。
幼馴染みは親しいという友好関係もあれば
ただ昔から同じ境遇という、
くされ縁という関係もあるの」
「くされ縁とはどういう関係ですか?」
「たまたま一緒とも言うわね。
その場合は相手に対して、
特別な感情はないけど、
顔を知ってるから、
軽い会話をする程度の仲のことよ」
「知り合いという認識でよろしいですか?」
「合ってるわ。
まだその人物の過去の経緯や、
個人の感情や関係性が、
語られてない場合はその認識で正しいわ」
「了解です」
「続けるわね。
ある日、寛治はお腹が空いたけど、
お金がないのでご飯を奢ってと、
私に言ってきました。
この時点の二人の関係はどう?」
「恋人だと思います。
男性が気軽に女性を、
食事に誘っています。
これは恋人関係が成立してると思います」
「それも違うわ。
この場合は男性は他に頼る人間が、
もう帰ってしまい私しかおらず、
仕方なく知り合いの私に、
ご飯を無償で食べさせてと来ただけ。
だから恋人ではなく、
寛治から見て私は、
ちょうどいいところにいた、
都合のいい人間になるわね。
ラーニングして」
「了解です」
「これが最後よ。
寛治はある日、
私に対して何の前触れもなく、
あのさ~友だちに聞いたんだけど、
お前、俺のこと好きなの?と言います。
そしてそれに対して私は、
自惚れ男なんて嫌いよと言いました。
この時の二人の関係は?」
「犬猿の仲だと思います。
状況的には最悪とも言えます。
男性が好きの確認をしたのに、
女性はきっぱり嫌いだと断ってます。
この二人に恋愛感情はないと思います」
「ジル…正解よ。
ここまでやったけど、どうだった?
率直な感想を聞かせて」
「とても難しいです。
男女の関係を理解するには、
その状況だけでは、
容易に判断できないのですね」
「そうね。
それにね…
人の心というのは素直じゃないの。
口から出る言葉、
起こした行動が本心とは限らないの…」
ピィーーーーー!
「ラーニングしました。
いま、わかったことがあります」
「なに?」
「梨花さんは寛治さんが好きだけど、
寛治さんはそのことに、
全く気付く気配もない。
そこから考えられるのは、
寛治さんは超鈍感男ですね」
「そう!それ正解!
ちょっと聞いてよジル~!
あいつさ~二人きりになっても、
いつもと態度が全然変わんないの~。
でね~この前なんかさぁ…
……
……
……
もう~なんとかして~」
「了解です」