ファンドヨドヨ

コンサート会場。
 
今日は事前告知で、
私が推おしている女性アイドルグループの、
新メンバーお披露目ひろめがあるらしい。
 
私はいつもの装備で会場へ。
 
グッズTシャツ。
首にはオフィシャルタオル。
手には最強ペンライト。
 
このペンライトは、
今日のために買い直した。
 
前のものは愛着もあり、
もう１０年以上使ったが、
この１５色のペンライトは、
きつくなってきた。
 
それは色の問題。
 
デビュー時は５人だったメンバーも、
今では総勢１２名。
 
若干の色の違いは、
近い同系色で誤魔化ごまかしてきた。
 
でもやはりファンたるもの、
正しいメンバーカラーを、
振ってあげたいと思ってしまう。
 
特に今日、
加入するメンバーは、
これからグループの一員として、
頑張っていってねという、
応援の意味を込めて、
今日発表されるであろう正しい色で、
励はげましてあげたい。
 
だからついに、
最強の３０色ペンライトを通販で購入。
 
これでどんな微妙な色の
メンバカラーがきても…イケる！
 
イタリアンレッドも、
ターコイズネイビーも、
アフリカンバイオレットだって大丈夫！

そろそろ始まる…。 

会場にoverture序曲が流れると、
一気に観客席はヒートアップ！
 
そのまま楽曲に突入！
 
あっという間に前半終了。
 
ここでリーダーのMCお話。
 
「ここで皆さんに、
　嬉しいお知らせがあります！」
 
「なに～」　「なに～」　「なに～」
「なに～」　「なに～」　「なに～」
 
「グループに、
　新メンバーが加入しました！」
 
「Wooow!」　「Wooow!」　「Wooow!」
「Wooow!」　「Wooow!」　「Wooow!」
 
「じゃあ、早速紹介しますね！
　どうぞ！」
 
大歓声と大きな拍手の中…
まだ若干、
幼おさなさと初々ういういしさを感じる女の子が、
小走りで入って来てステージ中央に立つ。
 
「新メンバーの◯◯◯◯です。
　これからグループの一員として、
　一生懸命頑張っていきますので、
　よろしくお願いします！」
 
「Wooow!」　「Wooow!」　「Wooow!」
「Wooow!」　「Wooow!」　「Wooow!」
 
綺羅びやかで鮮やかな光が、
左右に小刻みに揺れている。

私もみんなと一緒になって、
思いっきり振った。
 
「ここで、
　お待ちかねのメンバカラーを、
　発表したいと思います！」
 
「Wooow!」　「Wooow!」　「Wooow!」
「Wooow!」　「Wooow!」　「Wooow!」
 
「◯◯ちゃんのメンバーカラーは…」
 
「なに～」　「なに～」　「なに～」
「なに～」　「なに～」　「なに～」
 
「メンバカラーは…
　……
　……ジャン！
　どどめ色です！！」
 
「……」　「……」　「……」
「……」　「……」　「……」
 
客席は一気に暗転。
 
（わ、わ、私の気持ちと…３千円…）
 

 このお話はフィクションです。
実在の人物・団体・商品とは一切関係ありません。