時を止める少女たち
異国情緒を感じる雰囲気のあるカフェ。
店内はカップルや二人連れでほぼ満席。
女友達二人。
「最近さあ~
時間経つの早くない?」
「思う。
めっちゃ早い。
まだ私、正月気分」
「それはヤバいね。
間もなく今年も折り返しだよ」
「え?!……やだ!
来月って…6月?!」
「なにそれ?
急に起こされた、
冬眠中の熊みたいなリアクション」
「え?!くまモン?
似てる?」
(この子にこの手のツッコミは
通じないんだった…)
「いいのいいの。
でも1年ってほんとあっという間だね」
「そうだよね。
何だろう?
周り見るとさ…
私たちだけ取り残されてる感じしない?」
周囲は若いカップルが多い。
「春…だったんだね…
私、何してたんだろ…
そういえば桜も見てないや…」
「いつのまにか季節が
通り過ぎてるってあるよね。
私は…夜桜見てきたけど…」
「見たの?!
春、満喫したの?!」
「それほどのことじゃないよ。
会社の人に誘われたから、
行っただけ…だし…」
「会社の人って誰?!
男?!」
「…うん。
でも!別に付き合ってないよ!」
「聞いてないから。
ズルい!
いつの間にそんな小さな春、
見つけてんの…自分だけ。
私だけじゃない…
春が来てないの」
「桜は散ったけど、
まだ暦的には春だよ」
「桜がバックと、
葉桜がバックは絵面が違うじゃない!
私も桜が良かったぁ~。もう~」
「そんなこと言われても…」
「もういっそ…
時が止まればいいのに!」
……。
……。
……。
「急に静かになった…
ねえ、どうしたの?
ねえって…
止まってる?
私以外、みんな止まってる…。
私が言ったから?
時が止まればいいって…
言ったから…
ラッキ~♪
これで春満喫できる~♪
さて、まず…は……
……?」
(あれ?)
「ふ~。
あなたが止めた世界で、
動けるようになって、
さらに私が時を止めたわ。
私も夜桜を見に行った人と、
春のうちにもっと仲良くなりたいの。
そして夏までに…は……
……?」
(あれ?)
「ちょっと!
勝手に止めないでくれる!
あなたはいい感じの人が
いるからいいでしょ?
私は今からパートナーを探さないと、
いけないんだからここは譲ってよ。
止まった世界で、
あれやこれやするんだか…ら…
……?」
(あれ?) (あれ?)
「なに隣の席で好き勝手、
時間を止めてくれてるの?
私と彼は今、
とても幸せな時間を過ごしているの。
だから私たちの邪魔しないで。
私は彼とのこの時間が……
永遠に続くように願うんだから」
(やめて~!) (冬眠はいや~!)