具体と抽象を往復し、CRMの本質的な課題に向き合うマーケティングを
近年企業のマーケティング活動はより複雑になり、「絶対的な正解」は消えつつあります。企業は社内外の環境変化の中で揺れ動く自社のマーケティング課題を見据えながら、最適解を求め続けなければなりません。
私たちフュージョン株式会社は、1991年の札幌での創業以来、クライアント企業の抱える多様で複雑なマーケティング課題の解決を伴走型でサポートしてきました。その結果、たくさんのお客様にご評価いただき、2017年に札幌証券取引所アンビシャス市場に上場しました。
当社の強みは、クライアントと深い対話を行い、マーケティングの戦略策定から購買データ分析、クリエイティブ制作、効果測定までワンストップでお手伝いできること。なかでも、CRM、顧客との関係を築くための取組みに特化した会社です。
今回は、代表取締役社長である佐々木卓也に、当社がこのような強みを持つに至った理由や経緯、そしてそこに込められた想いを聞きました。
創業当時から変わらない想いを胸に
――佐々木さんはフュージョンが設立されて10年ほど経った2000年に入社されたそうですが、当時から現在のようにCRMに力を入れていたのでしょうか?
※CRM:Customer Relationship Managementの略称、顧客関係マネジメント
そもそもフュージョンは「データベースを中心としたマーケティング支援をする」という想いで設立された会社です。これは今でいうとCRMのことです。当時はCRMという言葉がまだ入ってくる前だったので、こうした言い方になったのでしょう。
ただ、当社が始めからCRMに取り組めていたかというとそうではありません。最初はどちらかというと広告代理店に近いような、企画やプランニングの仕事がほとんどだったんです。フュージョンはもともと創業者が代表を務めていた印刷会社の関連会社として立ち上がっていますし、創業初期はとにかく会社として生き残っていかないといけないので、そういう仕事をしていました。
「会社としてCRMに取り組もう」という流れになったのは、私が入社した2000年頃からです。ちょうどその時期にCRMという言葉が日本のビジネス界にも入ってきて、そこから少しずつCRMに関する仕事も獲得できるようになりました。
この20年でCRMに関わる環境は大きく変わりました。CRMはデータを活用しながら顧客と企業の距離を縮めることですが、2000年当時はスマホもECもビッグデータという言葉もないし、データサイエンティストもいない、CRMで用いる手段やテクノロジーは今とは大きく異なります。でも、CRMに取り組もうというフュージョンの理念は、創業時からまったく変わっていません。
全国のクライアントのCRM支援をするまで
――CRMの仕事は2000年頃にもニーズがあったのですか?
まだ少なかったです。当時、誰がいつどこで何を買ったかというデータを豊富に持っていた業種のひとつが、ポイントカードを導入している流通業でした。レジでポイントカードを読み込むと、ポイントが付く代わりに買い物のレシートひとつ一つにIDがついて、購買データを取得できます。そうした仕組みを持つスーパーやドラッグストア、ホームセンターに対して「データを預かって分析させてください」と提案をしていました。
でも当時は私も20代後半でしたし、フュージョンも知名度も実績も無いまだまだ小さい会社だったので、札幌のスーパーに飛び込みで訪問して「データください」って言っても当然「お前は何しに来たんだ」という反応で、けんもほろろでした。2000年頃はデータ分析自体の認知度も低かったので、余計ですよね。ポイントカードのデータ分析が流通業の課題ではあったので、提案を続けていたものの、1年以上経っても契約が取れることはありませんでした。
――流通業のデータ活用が十分でないことに課題を感じておられたものの、最初から順調ではなかったのですね。何がCRM領域の仕事を獲得していくきっかけになったのでしょうか?
ある大手の流通系企業の案件に携わったことがきっかけです。
当時その企業では、貯めたポイント分のお買物券が発行されるポイントカード読み取り端末を全店舗に設置し、端末で集めたデータを分析するシステムを入れるというプロジェクトが動き始めていました。その一環としてデータ分析と分析システムそのものの用意をしてくれる会社を決めるコンペがあり、当社が参加し案件を受注することができました。この企業が、今のフュージョンの事業である総合マーケティング支援のいわゆるファーストクライアントとなりました。
そこから少しずつ今のフュージョンの事業ができていきました。最初はたとえば1人で分析して、ダイレクトメールを企画からデザインディレクションして、提案して、効果検証して、システム運用して、すべて1人で完結させていたんです。
――1人でデータ分析もデザインもシステム運用も対応されていたのですか。現在だとそれぞれの業務で専門家が必要になっていますよね。
そうですね。さすがに1人では難しくなり少しずつ分析してくれる人、デザイナーやエンジニアに入社してもらい、気づいたら90名近くのメンバーが集まっていました。
――仲間が増えたことが追い風になってクライアントの数も増えていったのですか?
最初の実績ができてから3〜4年が経った頃から、日本全国に仕事が広がりはじめました。大きかったのは先ほど話したクライアントが「この会社に説明しに行ってみたら?」と別の流通系企業を紹介してくださったことです。そこで自分たちの事業を説明すると「そんなことをやっている会社があるんだ」ってすごく珍しがっていただいて。その後も、いろいろな企業をご紹介いただき、そのうちに現在のように東京、大阪、九州と日本全国にクライアントを持つことになりました。
ただ、どのクライアントも最初は小さなお仕事から始まりました。それでも、小さな仕事を丁寧にしていると、少しずつ大きな仕事を任せてくれるようになり、相談のレベルもあがってきました。当時、相談はガラケーに直電で突然なことも多かったのですが、相談されるだけで本当にうれしかった事を覚えています。
クライアントと向き合うために大切にしていること
――今お話いただいたように、フュージョンのクライアントは拠点はもちろん業界もさまざまです。このような幅広いクライアントに携わることの大変さや面白さについて教えてください。
それぞれの業界を深く理解しないといけないことですね。
大変さも面白さもそこだと思います。ただ、フュージョンはその大変さよりも、それ以上に面白いと感じる人が集まってる会社だと思っています。
まず業界が違えば、使っている言葉が違います。専門用語を覚える必要がありますし、ビジネスモデルや利益構造も違う。働き方も業界によって大きく異なりますよね。絶対にリモートワークできない業種もあれば、全員がフルリモートで働いている業種があったり。あとはひとつの商品を生み出すまでの時間も違います。たとえば化粧品の場合は、一年以上前から企画して商品を作っています。そういった業界知識を得るためにはどうしても勉強が必要です。
でも、クライアントの課題解決をするにはまず相談相手にならなくてはならないし、相談してもらうためには一定の知識が欠かせません。もしそれができないとすると、たとえば「印刷物を何枚刷ってください」などの言われたことをやるだけの会社になってしまいます。でも私たちはそういう仕事をしたいわけではない。なので、クライアント側に立って考えるために、知識を持たなくてはなりません。知らないことを知るための勉強は大変ですが、それ以上に面白さでもあると感じています。
――クライアントの立場に立って課題を深く理解するために、知識以外で佐々木さんが大切だと考えていることはなんでしょうか?
社内でもよく言っていることですが、「具体と抽象の往復」ですね。
『具体と抽象』(細谷功著)という本があります。私も何度も読んでいるバイブル的な本で、社内図書にも入っています。この本に書いてあるように、具体的な話が出たらその抽象度を上げ、抽象的な話になればより具体的なものに落とし込む。そうして往復していくことで、本質的な課題を理解できます。
たとえばマーケティングのための記事コンテンツを作れないという目の前の事象にお客さんが悩んでいたとします。そこから抽象度を上げていくと、単純に人が足りていない、もしくは人手はあるもののスキルを持つ人がいないなどのより根本的な課題が出てくることがあります。反対に「今困っています」と抽象度の高い話をされたときは、何に困っているのか、いつ困っているのかなどより具体的な話を聞いていきます。こうして往復することで、言語化や構造化などの力が身につき、課題解決に近づくことができると考えています。
長期的な関係を築いて、答えのない問いに向き合い続ける
――課題解決のためにはクライアントと対話を重ねることが重要なのですね。ほかに課題解決で大事にしていることはありますか?
当たり前のことではあるんですが、結果を必ず確認することです。
そもそもCRM自体がそういう営みなんですよね。ダイレクトメールやメルマガを送ったりプッシュ通知を行ったり、こうした施策はすべて点です。
ただ、企業と顧客の間で関係性を作ろうとすると、点をたくさん打って線にして、最終的には面に感じるまでやらないと難しいんです。面までにするには、一つ一つの施策の結果を検証し、改善を繰り返すことが必要です。一回きりの施策で関係性ができるほど人は簡単ではありません。
普段は家から出ないのに「天気いいから外でお茶飲もう」とカフェにいく日もあれば、馴染みのお店があってそこに行こうとしていたのに、ちょっといい匂いがしてきて目的の店とは違う別のお店に入ってしまうこともある。だから簡単に科学的には立証できないし、ある種答えがないことをずっと考え続けないといけない仕事なんだと思います。
もちろん、もっと簡単に、「これをやってほしい」と言われたことを、「わかりました、できるだけ安く早くやります」というビジネスの選択肢もあります。でもそこはすごく生き残るのが難しい世界です。どこまでも安く、速くやらないといけなくなって、疲弊するし、大抵短い取引で終わるので自分たちの成長機会も限られてしまいます。
――アクションの結果を確認することがクライアントとの長期的な関係の構築にも大切になってくるのですね。
我々が事業を永続的にやっていくためには、クライアントと長期的な関係を築いてスピードや価格以外の価値を提供していかないといけません。であれば、やはり結果を共有してもらって、次の打ち手をまた考えられるような伴走スタイルで進めていくのが一番ではないかと考えるようになりました。
そしてそれはフュージョンにとってのマーケティング活動のひとつにもなっています。最初はコンペで勝ち取ったところからスタートした事業ですが、現在はなるべくコンペには出ないようにしています。
――コンペに出ないというのは大きな決断かと思います。なぜそのようにお考えになったのでしょうか?
コンペはすでに物事が整理されて課題もわかっていて、何をやるかも決まっているなかで提案してくださいという状況が多いからです。そのような状況では、クライアントと時間をかけて対話を重ねながら真の課題を抽出することが難しいのです。私たちが成し遂げたいのは、クライアントの先にいる顧客のデータを分析し、顧客ニーズを中心としたマーケティング活動を実行することで企業と顧客の距離を縮める事なのです。
こうした取り組みを続けてきた結果、今ではお客様から「一緒に仕事ができてうれしい」、「一緒にいてくれてありがたい」などのありがたいお言葉をいただいたと社員からよく聞きます。個々の施策というよりも、私たちの存在自体に感謝していただいていて、そんな関係性を築いてくれていることをとてもうれしく感じています。フュージョンは仕事を進める上でクライアントと同じものを一緒に見て、一緒に考え、あるべき姿に向かって行動する「伴走」を大事にしていますが、社員たちが体現してくれていて、だからこそ、こうした声をいただけたのでしょう。
クライアントに寄り添う人間味あふれる会社であり続けたい
――これまで過去や現在のフュージョンについてお聞きしてきましたが、今後は会社としてどんなことを目指していきたいですか?
テクノロジーが発達すればするほど、合理的、自動化、生産性などの言葉が語られるようになりました。また、何かに悩んだ時にもすぐに答えを求めたり白黒はっきりつけたがる人が増えてきたと感じています。
でも私はそういうものがあまり好きではありません。
具体と抽象の間を往復してひたむきに試行錯誤したり、紆余曲折を恐れずに突き進める、人間味あふれる人たちが集まった会社であり続けたいと思っています。どこまでいっても、働くのも消費するのも意思決定をするのも人なので、「マーケティングに体温を」というミッションの通り、これからもクライアントに寄り添いながら、血の通ったサービスを提供していきたいですね。
――最後に、これを読む方にメッセージをお願いします。
フュージョンは今年で33期目を迎えました。
30年以上続いていて上場もしていると聞くと、安定していて完成された会社だと思う人もいるかもしれません。でも実際は、日々の課題に紆余曲折しながら、まだまだ足りないピースも多い会社です。
私自身、今がゴールではなくスタートしたばかりだと感じているので、同じように思って、一緒に会社やサービスをより良くする道を探索していただける方をお待ちしています。
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