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本州最南端の港町 -南紀・串本-/海辺の水彩画

絵・文 岡本 幸雄

本州最南端の港町、和歌山県串本町。
東に熊野灘、西に紀伊水道を控え、南には青い太平洋が広がっています。
町域の南端には潮岬があり、紀伊半島から突出した岬の海岸線にはドライブウェイが走っています。岬先端の30㍍もの断崖上に建つ白亜の灯台こそ、明治初頭から150年ものあいだ沖行く船の安全航行を見守り続ける潮岬灯台です。
南北に延びる町の市街地の前には紀伊大島が横たわっています。
♪ ここは串本、向かいは大島、仲をとりもつ巡航船 ♪
と歌われるように、かつて町と紀伊大島は渡し船で結ばれていました。
しかし、24年前にくしもと大橋の完成により車での行き来ができるようになりました。交通の便がよくなったとはいえ、島の情緒が消えて寂しい限りではあります。

紀伊大島の漁港 数多くの漁船が並ぶ

1890年、オスマン帝国(現在のトルコ)のフリゲート艦「エルトゥールル号」が紀伊大島の沖で座礁沈没するという大きな海難事故が発生しました。島民総出で決死の救助にあたり、献身的に生存者を介抱したことがきっかけで、日本とトルコの友好関係が築かれました。
2015年、エルトゥールル号事件を描いた映画「海難」が、日本とトルコで上映されました。島にはトルコ記念館が建設され、近くの土産物店では独特の粘りのあるトルコアイスが名物にもなっています。

景勝地が散在する串本の海岸エリアは「吉野熊野国立公園」に指定されています。なかでも串本海中公園を中心とした沿岸海域は世界最北のサンゴの海として知られ、「非サンゴ礁海域に存在するサンゴ礁」として、2005年にラムサール条約に登録されています。

町の北端に位置する国道42号線沿いの海岸から、大小40ほどの巨岩群が沖へ向かって一直線に建ち並んでいます。この奇妙で迫力のある眺めは橋の杭のように見えるところから橋杭岩はしぐいいわとよばれており、連日多くの観光客が足を止めて見学しています。
橋杭岩に昇る朝日は素晴しく、「日本の朝日百選」にも選ばれています。特に、町内の高台にある串本ロイヤルホテルから眺める橋杭岩の日の出は絶景ですね。

海の浸食により岩の硬い部分だけが残り、あたかも橋の杭だけが立っているように見える
その昔、弘法大師と天邪鬼が一晩で橋を架ける賭をして、一夜にして立てたという伝説も残る

毎年7月、ここ串本漁港をベースにJGFA(日本ゲームフィッシュ協会)が主催するJBTK(串本カジキ釣り大会)が開催されています。
地元和歌山はもちろん、関西、関東ほか全国各地からカジキボートが集結します。毎年、大きなカジキが釣り上げられていますが、最近ではJGFAの啓発活動によりタグ&リリース(釣ったカジキにタグを付けてリリース)が主流になっています。
JBTKは、地元串本町や漁協の全面的協力のもと開催されています。

大会のスタート時は大型クルーザーが勢いよく海に向かって走っていく
その様子は圧巻の一言である
カジキ釣りに使われるルアー
200kgを超えるようなカジキ、その迫力に圧倒される
自分たちで釣り上げたカジキとともにステージで記念撮影
アングラー冥利に尽きる瞬間

おかもと・ゆきお profile
1944年、姫路市生まれ。1967年古野電気入社。フルノ在籍時からマリンギアライターとしても活躍し、「須磨はじめ」のペンネームでフィッシング雑誌などに寄稿。著書に「魚探とソナーとGPSとレーダーと舶用電子機器の極意」、「魚探大研究」、「魚探・GPS 100%使いこなしブック」など多数。著書の挿絵から水彩画の世界へ。

本記事は2016年〜2022年までBoat Fishing誌にて連載されていた「海辺の水彩画(絵・文 岡本 幸雄)」を再編集したものです。
「本州最南端の港町 -南紀・串本-」は2016年9月号に掲載された内容です。
当時の面影とともに水彩画の世界観をお楽しみください。

- 海を未来にプロジェクト -