ETCでこんなことができる?物流の2024年問題へ挑むETC活用ソリューションに迫る!
「ピコーン!カードが認証されました!」
愛車のエンジンをかけた時に聞こえるこの声、聞き馴染みのある方が多いのではないでしょうか。そう、ETCです。
ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、実はフルノはETC車載器のメーカーでもあります。
しかし、フルノが作っているのは車載器だけではありません。フルノは約50年に渡って、高速道路の料金収受用装置(ETC車載器を検知するゲート側のアンテナなど)の設計・製造に携わっています。このETC車載器とゲート側装置の両方を製造・開発しているのはフルノが国内唯一のメーカーなのです。
今、ETCは高速道路のゲートを通過するだけではない様々な活用法で注目を集めています。その中には日本全体の課題でもある物流の2024年問題の解決にも貢献しうる活用法も。
ETCを"高速道路で当たり前"から"車に乗ったら当たり前"の技術にしたい。
そんなフルノのETC事業についてご紹介します。
通過するだけじゃない?ETCを活用したシステムとは
今回お話しを伺うのは古野電気 システム機器事業部の北川部長と西村さん。
まずは簡単にETCとは改めてどんなものなのか解説いただきました。
北川さん「ETCは皆さんご存知の通り、高速道路の料金所ゲートを通過する際にゲート側の機器と車両側のETC車載器の間で、無線通信を使って自動的に料金の支払いを行い、通過できるシステムです。この無線通信はDSRC
という規格で設計されたものになります」
無線通信でゲートを通過する。より身近な例えとしては、駅の改札のICカードも似たような技術です。しかし、このDSRC通信は車とよくマッチしているそうです。
西村さん「ICカードは非常に安価ですが、通信距離が10cmほどしか使えなかったり、一時的に停止する必要があります。ETCで使われるDSRC通信は通信距離が2~20mと長く、40km/h程度なら原則として一旦停止不要ということで、高速で移動している車に適した通信方法と言えると思います。
また、一般には知られていませんが、ETC車載器にはひとつひとつに固有のIDが割り振られています。このIDを使って車両を識別するというのがETC活用のソリューションなんです」
このシステムを使うことで例えばゲートに接近した車両を識別し、通過して良いと判断すればゲートを開けることができます。反対にID非登録だったり、識別して通過許可がない車の場合はゲートを閉じるというような活用法も可能です。
日常をもっと便利に、安全に、ETCシステムで入退場管理
このETCを活用した入退場管理システム、身近なところではマンションの駐車場に導入されています。マンションの駐車場などでのゲート開閉システムにはリモコンが活用されていますが、ETC活用にはリモコンにはないメリットがあり、注目を集めています。
西村さん「車をゲートに近づけるだけで自動的に開閉するので、リモコン操作が不要なのが一番のメリットですね。リモコンを探したり、片手ハンドルになることがないので、運転に集中でき事故を未然に防ぐことに繋がっています。またETCは車から直接電源をとっているので、電池切れや紛失の心配もありません」
北川さん「このシステム、そんなに変わるかなと思われるかも知れませんが、実際に体験するととても便利なことが分かります。少しずつ普及が進んでいるので、ぜひ皆さんにもどこかで体感いただければと思います」
ちなみにシステム機器事業部があるフルノのINTセンターでも導入済みで、社有車なら受付なしで通過することができます。
西村さん「さらにこのETCでの入退場管理がより多岐に活用されているのはトラックなどの業務用車両の用途です。管理システムと連携することで、ゲートをETCで開閉するだけでなく、入場後どこに行けば良いかなどの情報を電光掲示板に表示し、案内をしてくれます。また異なったエリアに侵入すると警告を出すなど、ヒューマンエラーにも対応しています」
従来のやり方ではゲートで一時停止し、通行のためのチェックや行き先案内などで時間がかかっていて、混雑時には道路に多くの業務用車両が止まることで近隣の渋滞の原因になっていた現場もあったそうですが、システム導入で効率化に成功。渋滞を緩和するだけでなく、受付も省人化することができたとのことです。
北川さん「中には入退場の流れを全てシステム化することに成功した現場もあります。とある土砂の受入現場なのですが、重量を計測するエリアがあり、そこでも車両を識別した上で入退場前後でどれくらい重量が変わったか、つまりどれだけ荷物を降ろしたかを自動的に測定します。
そのため、いつ現場に入り、どのエリアで、どれくらいの荷物を降ろし、いつ現場を出たかを自動化し、さらに書類や請求書までも自動作成してしまうことで、業務の効率化・適正化を支援しています」
業務用車両ではETCの普及率が特に高いことから、導入しやすいこともメリットとして捉えられているとのこと。一般の目には映らないところですが、いろんなところで進化しているんだなと感じました。
車番認識とのハイブリッドで現場改善へ
物流2024年問題にも切り込むFLOWVIS
このような業務用車両の入退管理は物流の2024年問題とも絡んで非常に注目を集めています。
そこでフルノではETCによる車両識別システムにカメラによる車番認証システムを組み合わせたハイブリッドの車両入退管理サービス"FLOWVIS(フロービス)"をリリースし、この問題の解決に貢献したいと考えています。
西村さん「ETCによる車両識別のデメリットは全ての車両に付いているとは限らないということ。反面、カメラによる車番認証はすべての車両で可能なので、より一般的な車両識別方法として普及していますが、雪や泥、光の反射、霧などで識別率が落ちるというデメリットもあります。特に工事用現場車両では車体は汚れることも多々ありますので、カメラだけでは十分な識別装置とは成り得ません。」
また車番認証ではご当地ナンバーなどで図柄が追加されるたびにバージョンアップが必要なのだとか。しかしETC車載器固有のIDであるWCNを利用したシステムでは心配はありません。このようにETCとカメラを組み合わせることで、より確実な車両検知システムとしてFLOWVISは作られています。
西村さん「ETCのIDは一般の方々は調べることができないので、最初は車番情報だけを管理システムに登録することになります。しかし、一度FLOWVISを通過すると車番に対してETCのIDを紐付けますので、以降はハイブリッド認証が可能になります」
北川さん「車両識別と物流の2024年問題への貢献がどのように繋がっているか言いますと、主には車両滞在時間の可視化によるドライバー拘束時間の改善です。というのもトラックドライバーの勤務時間において、長時間の荷待ち時間が発生しており、長時間勤務になりがちなのです。FLOWVISを導入してもらうことで、来場を事務所に通知したり、バースに自動的に誘導することで荷待ち時間を削減することができると考えています。
これから運送事業者が荷主を選ぶ時代に変わりつつあります。渋滞緩和によるCO2削減など企業CSR活動の促進にもなりますので、そのメリットが多くの荷主さんに伝わってほしいですね」
現状の見える化からデータ活用による改善へ
広く普及したETCだからこそできること
先日東京ビッグサイトで開催された国際物流総合展 INNOVATION EXPOでFLOWVISを出展したところ、ブースは大盛況で、多くの事業者さんからお問い合わせをいただけたそう。ETC車載器は高速道路で使うものというイメージを大きく覆したシステムに「え、ETCでこんなことができるんだ」と驚きの声も多くいただきました。
西村さん「ETC活用による車両識別システムの認知をもっと高めないといけないなと考えていましたので今回の展示会出展は非常に良い効果を得ることができました。また業界他社さんとも協業するようなお話も進んでおり、自社システムのクオリティも上げつつ、例えば他社バース予約システムなどと連携することで、サービス・認知の拡大を図っていきます。」
"2024年問題もあり、注目を集めている分野。モデルケースを作って良さを外部にアピールしたい"と西村さんは意気込みを語ってくれました。
北川さん「これから荷待ち・荷役時間を2時間以内するというルールが進んでいくと思います。それに対応するためにはまずは入退場時間を把握したいというニーズがあると思います。そしてその先に荷主側への通知や行き先の自動案内、他社システムとの協業などがあります。
FLOWVISの活用で現状の見える化からデータ活用による改善に繋げることでドライバーの待機時間の削減だけでなく、業務効率化/コスト削減やセキュリティ対策などドライバー・荷主両方がwin-winとなると考えています」
今回伺ったETC活用による車両識別、それはETC車載器だけでなく路側装置も開発していたフルノだからこそ成せる技。フルノの技術とETCの活用は、ホワイト物流の推進のための鍵、今後さらなる進化と普及が期待されています。
執筆 高津 みなと