図書館司書のお仕事「魔法の呪文みたいなタイトルの小説探してるんです」
こんばんは、古河なつみです。
少し前に福井県立図書館さんが出版した『100万回死んだねこ 覚え違いタイトル集』という本が話題になりましたが、図書館は本当に「覚え違い」の宝庫です。今回は私が遭遇した事例をいくつか紹介していきたいと思います。
『100万回死んだねこ』福井県立図書館
導入で最初に挙げたこの本が生まれた事で新しい混乱が起きています。
「100万回のねこみたいな本ありますか?」
「ああ、絵本の?」
「いえどっかの図書館が出したっていう……」
「じゃあ死んでるほうですね~。ただいまお探しします!」
という会話が司書と利用者の間で繰り広げられています。
生きたのは絵本、死んだのは覚え違い集、と覚えるようにしていました。
『大きな鳥にさらわれないよう』川上弘美
これは間違え方のバリエーションが豊富でした。
「大きな鳥にさからわないよう」「大きな鳥にさわられないよう」「大きな鳥にささやかないよう」といったひらがな部分のタイトル間違いがあったり、「大きな鳥にさらわれないように」と最後に「に」を足してしまう方が頻発していました。図書館の司書が使っている検索の機械は基本的に完全一致でないと書名が出てこない仕組みなので、余計な「に」によって検索に現れない事故が起きてしまい、出版されたばかりの頃は大変焦りました。
『蜜蜂と遠雷』恩田陸
W受賞を獲ってから「蜂蜜と遠雷」「蜜蜂と春雷」といったお問い合わせを何度経験した事でしょう……私が勤めていた頃の中でダントツの覚え違いタイトルはどれか?と訊かれたら間違いなく『蜜蜂と遠雷』です、と答えます。そもそもの問い合わせ数が多い上に覚え違いも多かったので、とても印象に残っています。
『ラメルノエリキサ』渡辺優
利用者さんが「ラ……ララエリ……エリクサー? うーん、こんな感じの魔法の呪文みたいなタイトルの小説なんですけどありますか?」と訊いてきて(それはそうなりますよね……!!)と心の中でツッコミつつご案内した記憶があります。私はたまたま知っていたのですぐ判明しましたが、著者名も出版社も出版時期も情報がなかったとしたら相当手こずっていたと思います。
同じような事例ですが「赤ちゃん向けの絵本でこちょこちょぽん、みたいな子守歌のおまじないがのっていたものを探しているんですが……」という問い合わせの答えが「『おじょらぽん』はせがわせつこ著/さいとうとしゆき絵」だった事もあるので、魔法の呪文めいた書名を見かけた時はメモを取るようにしています。このタイプのレファレンスは知っていないとなかなか答えに辿り着けないのが難しい所です。
今回の紹介はここまでとなります。
また司書時代の事例を思い出したり、友人の司書仲間から教えてもらった時はまた記事にしてお伝えできればいいなと思います。
ここまでお読みくださりありがとうございました。
それではまた、次の夜に。
古河なつみ