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羊皮紙でできた本って図書館にありますか?という質問に司書達が全力を出した話

こんばんは、古河なつみです。
今回ご紹介するのはとある親子からのレファレンス(質問)を受けて当時私が司書として働いていた図書館のスタッフ総出で調べ物をした時のお話です。(※実際のお問い合わせ内容と少し表現を変えて書いています)

Q.図書館に羊皮紙でできている本はありますか? それをさわることはできますか?

お子さんとお父様のお話を伺うと、お子さんが宿題で図書館の歴史について調べ物をした時に「羊皮紙」というものが昔はあって、それが動物の皮が紙みたいになっていると本では書いてあったけれど、どんな感じか想像がつかない、できれば実際に触ってみたい、という内容でした。

お父様も薄々「普通の公立図書館にはないだろうな……」と思っていたようだったので、一度質問内容をお預かりして後日お返事します、と答えました。

最初に頭に浮かんだのは大学図書館や国会図書館にはきっと羊皮紙製の資料はあるはずだけど、公共の図書館へ郵送しての貸出や実際に触れるのは不可能だろう、という事でした。

先輩に相談すると「都内に「紙の博物館」って施設があるけど体験会みたいなイベントはあったかなぁ……」と教えてもらって調べたのですが紙漉き体験がメインのようで羊皮紙にまつわるイベントは見当たりませんでした。

別の先輩が「念のためにウチの図書館でバーコードのついていない(パソコンから検索できない状態の)資料のリストを見たけど、やっぱり羊皮紙製の資料はなさそうだったよ」と教えてもらいました。

さらに上司が「羊皮紙を通販できるサイトはあるね」とネットの情報も教えてくれました。意外と切れ端だとほどほどのお値段で手に入る事が分かりました。

「羊皮紙……触れる……羊皮紙……」

私はぶつぶつ言いながら初心に戻って羊皮紙についての一般書を書棚から探してきました。参考文献や、入手できるショップ紹介などがあればいいなぁ……という気持ちだったのです。そして事務室で本を開くと……

「あっ……ありました、触れる羊皮紙、ありました!!!

うっかり大きな声を出してしまいました。
協力してくださった先輩や上司が集まってきて「本当だ……」「触れる……」「すごいねこの本……」と口々に言ったのが『羊皮紙の世界』(八木健治/岩波書店)という本でした。この本の付録が本物の羊皮紙の切れ端だったのです。数センチ角の小さなものですが、感触を確かめるには十分でした。さらさらとした手触りで、これが遥か昔は紙として使われていたのか……と私自身初めての体験で興奮してしまいました。

すぐに相談してくださった親子に連絡をして、後日実際に『羊皮紙の世界』をお渡しすると、お子さんもお父様も「すごい、すごい!」と大喜びしてくださって、何とかレファレンスが上手くいってホッとした事例でした。

在籍する図書館の雰囲気にもよりますが、一人でレファレンスを引き受けて調べるよりも、館内全員で共有してそれぞれの持ちうる知識を合わせた方が多角的な調べ方を発見できることが多くあります

私がこのレファレンスを受けた時にいた図書館では、司書達で取り組んでいるレファレンスの詳しい情報を共有をしておいて「さっき返却本の中に参考になりそうな本があったよ」とか「検索ワードでこれは調べた?」といった声かけで助けていただいた事がたくさんあったので、自然と司書同士で勉強会ができる良い環境だったと思っています。

今回の紹介は以上です。
ここまでお読みくださりありがとうございました。
それでは、またの夜に。

古河なつみ


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古河なつみ
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