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図書館司書が密かに文庫版は出ないのかなぁ……と思っていた小説の話

こんばんは、古河なつみです。
たまたま朝日新聞の記事(2023年6月6日夕刊一面)で読んだのですが、書泉グランデの書店員さんが長い間重版されていなかった本を出版社に掛け合って売り出したところ、2ヶ月で2万冊もお客さんに手に取ってもらえたという出来事があったそうです。熱意ある展示方法の紹介を読みながら「図書館もここまでできたらなぁ~」と羨ましく思っていたのですが、そういえば私も司書時代に「どうして出版されないんだろう?」と不思議に思った小説があったのを思い出したので紹介します。

『薔薇の名前』/ウンベルト・エーコ著/河島英昭訳/東京創元社

この『薔薇の名前』は上下巻構成の長編推理小説で、出版されたのは1980年とずいぶん昔です。ショーン・コネリー主演で映画化もされ、ドラマにもなったり、当時は大ベストセラーとなった作品なのでタイトルだけは聞き覚えがあるような……?という方もいらっしゃるかと思います。

あらすじとしては中世の修道院を舞台としたお話なのですが、推理小説ジャンルの中ではやや禁じ手の「謎は全て解明されない」という結末が採用されています。

図書館では昔のベストセラーということで『薔薇の名前』は年配の男性に人気があるのですが……利用者さんに頼まれて私がこの本を持ってくると皆さん笑って「大きいねえ……文庫版はないの?」と尋ねてくるのです。

実はこの小説、上巻だけで400ページ越えで……すごーく分厚くて……。

そのせいで「重たいから持って帰れない」というご意見を利用者さんからいただいて先輩司書を何人も巻き込んで文庫版がないか探し回ったのですが、何故か今も(2023年6月6日現在)出版されていないらしく「この単行本しかないんです……」と問い合わせの度に何度も答えた記憶があって、7年間の司書生活において『薔薇の名前』は非常に謎めいた一冊になりました。

文庫版が出版されない理由についてはインターネットで調べた限りは判然としませんでした。権利関係の問題か、文庫サイズだと上下ではなく1~4巻などの分冊になってしまい出版するにはリスキーなのかなぁ……という想像くらいしか出来ないのですが、図書館ではどんな本でも最近は文庫本の需要がかなり高いのでぜひ出版されるといいな、と思っています。

ここまでお読みくださりありがとうございました。
それでは、またの夜に。

古河なつみ

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古河なつみ
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