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山路を登りながらこう考えた。
一時間ほど待った。
年末ならこのくらいは想定内。どこかのBARに寄って呼んでもらうという手もあったが、もう一滴も入らなそうだったし、誰かに合うのも面倒だ。それに、先ほどまでの酒宴がとても楽しかったので、その余韻を残したまま家に帰りたい。スマホで落語を聞きながらタクシーの長い列に並ぶのも悪くはなかった。
だが、不機嫌を隠さないドライバーに当たる日はつらい。
乗った瞬間にわかる。今日はハズレだ間違いない。
キツイ車内の芳香剤。予期したとおりの急発進急停車。狭路を50Km/時走行。あまつさえ「ちっ」と吐き捨てながら50ccバイクの横すれすれを掠め追い越しをかけ、驚きのあまり停車したバイクの運転者を気にも留めず、アクセルを踏み込む。これらが乗車してから僅か5分足らずで行われた僕への攻撃。
限界だった。
「停めてください。」
ルームミラー越しにドライバーはこちらの様子を窺う。僕はミラーを正視しながら同じ言葉を繰り返した。
「ここで降ります。停めてください。」
コンソールボックスにしつらえたコイントレイの上に乱暴に千円札を放り投げると、釣銭も受け取らずに開きかけたドアからすぐさま下車する。
ああ気分が悪い。
飲み会が久々に楽しかっただけに一日がもう台無しだ。
コートの襟を立てマフラーを巻きなおす。うう寒い…少し先ののコンビニでコーヒーを買おうあと肉まんとああなんで今日は革靴履いてるんだここから家まで30分は歩かないとなのに…
見上げると、冴え冴えとした美しい星空だった。
僕はふうと白い息とともに独り言を吐き出した。
「さて問題です。僕は何を得て、何を失ったのでしょ~か」
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