Fly me to 外野スタンド~緊急事態に酒愛を⑩
こんなによく晴れた休日には、コンビニでおにぎりと亀田の柿ピーを仕入れ野球場に向かう。今はテレビの中継も観なくなって久しいが、会社帰りのナイターや休日のデーゲームと、昔は結構足を運んでいた。当時は人気じゃないほうリーグの球団を応援していたため、チケットは容易に手に入れることができた。
晴天のデーゲームはセロトニンの分泌とゆっくり飲めるビール。完璧な・休日・だ。帰ってサザエさん見ても悲しくならないくらい、脳みそが休まる。
そしてリアル観戦にはテレビ中継では味わえないものが沢山存在する。
もはや使用言語が違うんじゃないかと、違う部族なんじゃないかと錯覚するほど戦慄する関西ファンの野次とかは、球場にいかないと体験できないので未体験の人にはおすすめしたい。心の弱っている人にはおすすめしない。
本当の幸せ教えてくれそうなレディオを携えた、明訓高校野球部監督の末期っぽいおじさんがいる。この人はほぼ常設的に同じ席にいて、夏も冬もワンカップをしこたまカバンに入れている。※昔は持ち込みOKだった。開場時には完璧に仕上がっているため、デフォルトをよく知らない。だがかなり有名な外野スタンド監督で、声がでかいうえに采配がアバンギャルドだったりするので意外にもファンが多い。そんな徳川カントクはいつも見知らぬ人からサキイカとか色んなつまみを貰っていた。
連休中などは遠くから駆けつけるファンもいたりして、応援団もボリュームアップする。今日は九州支部という人たちがやってきていた。この人たちがすごいのは攻守交替が無いところだ。旗はずっと振ってるし、ずっと太鼓叩いてるしずっとラッパ吹いてる。野球なんか見てる暇はないくらい忙しい。そして野手より消費カロリーが高い気がする。
「本日をもって退団いたします!」
ラッパを高く掲げたメガネの九州青年が声を張り上げる。外野席割れんばかりのすげえ拍手。なんかこの人の引退セレモニーか卒業公演みたいになっててすげえ。しかもすげえ泣いてる。スタジアムでラッパ吹くなんてプロのミュージシャンだってそうそうチャンス無いのに、すげえ羨ましい。
僕は、涙と楽器を丁寧に拭き上げ荷物を片づけている彼の傍まで行くと
「長い間お疲れ様でした!いい演奏でした!」
残っていた柿ピーを手渡した。今日初めて会うラッパ吹きの青年と固く握手を交わし、そして少し泣きそうになった。
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