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簡単じゃないからこそ続けられる~くず餅職人インタビュー~

船橋屋noteチームの田中です。
アクセスありがとうございます。2月がスタートしましたね!春はもうすぐそこです。
少し遡りますが、実は去年の年の瀬に船橋屋の命「くず餅」を作る職人の穴田さんにお話を聞きに行きました。

くず餅との出会いは大学生の時

───職人の穴田さんが初めてくず餅を知った時の話を教えてください。

大学で乳酸菌の研究をしていました。就活の時に色々食品系で探していて、その時にくず餅を知りました。実際に食べたとき、その美味しさに衝撃を受けて僕はこれを作りたいと思ったんです。

───独特な弾力がありますよね…!ちなみに、くず餅職人から見た、くず餅の魅力はなんでしょうか?

毎日変化があることでしょうか。前日と同じように作れば美味しいくず餅ができるという訳ではありません。気温、湿度、発酵具合など、日々の変化を見極めてその時に適した対応をしなければいけません。難しい所ですがそこが魅力であり、やりがいを感じます。

くず餅は1人では作れない。

───くず餅を作る時、気をつけていることはなんでしょうか。

くず餅の製造にはいくつかの工程があり、作業ポジションが決まっています。つまり1人では作れないんです。
自分の次の人がやりやすいように、と考えるとひとつひとつの作業のやり方が変わってきます。○○さんはこの方がやりやすいかな、とか

───布敷き作業(※1)でも置き方が変わってくるんでしょうか

布敷きってただ空気を抜いているだけに見えるのですが、次の人の作業を邪魔しないように、セットする段階で置く向きを決めて置いています。
(※1 くず餅を蒸す前に、せいろに布をセットする作業)

───次の人のことを意識しながらやらないと詰まってしまうんですね。

与えられた自分の持ち場の作業を全うすることも大切ですが、周りの状況を見て柔軟に対応する臨機応変さも必要ですね。

───集中力が鍵ですね…。見学した際にはみなさん落ち着いて作業しているように感じました。そういえば、私が行った時に職人の方々がくず餅を箱のサイズごとに取り分けていました。

以前はくず餅のサイズごとに取り分ける作業をパートさんがやっていましたが、それも効率化のためにくず餅職人がやるようになりました。

───それも難しそうですよね、作業の習得に時間がかかったんですか?

あれは僕得意です。軽い両利きなので…

───えっ!

湯がき作業(※2)もみんなは反時計回り。僕は時計回り。
(※2 原料に熱湯を加えて混ぜることで、とろみをつける作業)

───個性でますね。

鍵になるのは積極性

───くず餅職人が一人前になるまでの平均年数はどれくらいでしょうか、年数で任せられることは変わってきますか?

あまり年数は関係ないというか、やりたいと言えばやらせてもらえる環境です。
実際にやってみると見た目より難しいことばかりなので徐々にですが(笑)
自発的にその作業やってみたいとか、挑戦させてくださいと言えば、短い年数でもやらせてくれます。何年目だからこの仕事というわけではないですね。

───それは昔からそういう体制なんですか?

そうですね。
どの作業も特殊なので、習うより慣れよの精神です。昔はまずやらせてみるという意味合いが強かったと思います。やはり積極性が大事になってきます。

───積極性を意識すると活発に自主性が生まれるんですね。

変化がある商品なので、毎日同じ作業をしてても成長の伸びは少ないです。
自分で考えて自主的に行動しないと、一定のところまではいけるんですけど、その先には行けずいつまでも同じものになってしまう。

───結構ひとりひとり1つの作業を完璧にしつつ、もうワンステップ上を見据えないとみんなで作業するには大変ですよね。

何をもって完璧かという基準がある訳では無いので、自分がどこを目標とするのかによって変わってきます。
自分に余裕が無いとほかの人のことまで考えられない。自分の仕事を完璧にしただけで完璧といえるのか?を考えますね 。

今は亡き先輩からの言葉

───くず餅をつくる時に一番難しく、習得難易度のたかいものはなんですか?

「あたり」ですね。

くず餅を触って弾力をチェックする、船橋屋のくず餅づくりの中でいちばん重要な工程で習得の難しい作業です。

くず餅の弾力を確認する作業「あたり」

今「あたり」という作業は修行を積んだ職人が担当しています。その美味しいくず餅かどうかの判断できる人がいないと、くず餅づくりは成り立ちません。自分も一人前の「あたり」ができるように現在修行中です。

当時の先輩に、この「あたり」について
「これ(「あたり」)は一生だ」と言われました。「日々勉強で、終わりがない。」と。

僕が入社した時、その先輩は職人30年目でした。その方が「俺も分からない、まだまだだから」と言っていて、本当の職人だなと思いました。
でもその言葉が良かったなと思います。
一生続けられるなと思って。
簡単じゃない道の方がやりがいがあります。

この先輩の言葉だったり、長年続けている方の背中をみて「自分もこうなりたいな」と思います。先代から受け継がれてきた伝統あるくず餅をより美味しくしていくために日々精進していきます。

───私生活での"職人ならでは(?)"なエピソードはありますか?

くず餅にかける黒蜜を作るのが僕なんですけど、そこに対する責任感があって黒蜜はついつい見ちゃいますね。

煮詰められる黒蜜

お店とかで黒蜜が使われている商品があると、まずは黒蜜だけで味見して、(笑)

───黒蜜って字を見ると反応してしまうんですね、今まで試してきた中でグッときたものありましたか?

僕、お酒が好きなんですけど

以前、バーに行ってわさびのジントニックを頼んだんです。その時にバーテンダーさんが黒蜜を入れていて、気になっちゃって味見させてもらったりしました。

───積極性!

京都の黒蜜で甘いんですけど、甘ったる過ぎず、ちゃんと印象に残る味でした。
今まで色々な黒蜜を味見してきましたが、スッキリしすぎているか、甘ったる過ぎるもの(残りすぎるもの)の両極端なものが多くて、、、
その黒蜜はしっかり甘味も感じるのにくどすぎない。バランスが取れていて、これは良いなと思いました。

くず餅と黒蜜、きな粉が合わさってはじめて「船橋屋のくず餅」となるように、常に考えています。
黒蜜がスッキリしすぎると弱くなってしまうので、あえて少しパンチのある(えぐみのある)ようにしています。

───お客様にも黒蜜ファンが多いみたいです、黒蜜を肉じゃがにちょっと入れると美味しいとか聞いたり

手羽先と煮込むと美味しいらしいですよ。
アレンジレシピとして試してみてください☺️

───貴重なお話ありがとうございました!

【プロフィール】穴田祥平 
2012年くず餅職人として船橋屋に入社。
以後現在に至るまで約10年、職人一筋でくず餅製造業務に従事する。
その傍ら、2017年から組織活性化プロジェクトにも所属し、会社の活性活動に貢献。
2019年からはプロジェクトリーダーも務める。
趣味はサッカー、フットサル、登山。お酒と旅行が好きで、休日には日本全国、時には海外にも旅行し、現地のお酒を楽しんでいる。

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