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「今日は黒の気分」

 今朝、爪を塗った。赤と黒、どっちにしようかと選べず、結局、右手に赤、左手に黒、と言う形を選んだ。優柔不断の象徴のような手になったが、可愛いので良し。
 ネイルは好きだ。洋服には取り入れ辛い色も、キラキラとしたアクセサリーも苦手だが、爪ならそれが全部できてしまう。

 最近はずっと黒色の気分で、できることなら、洋服も髪も爪もメイクも、全部黒を纏っていたい。流石にメイクは黒だと厳つすぎて似合わせる技術がないので、濃い目のブラウンを目の下にも入れたり、アイラインは上に上げてみたりしている。

 自分に自信のあるふりをすることで、自然と自信が湧いてくるもの。先日、ドラムの先生に言われた言葉が、ふとした瞬間に頭によぎる。

 姿勢を正してみる。誰も見ていなくても、見た目を整えてみる。自室で作業するときも、だらけた寝起きのままの格好で作業するよりも、軽く化粧をするなり身支度をするなりしてから、作業に取り掛かる。
 それだけのひと手間があるだけで、手間は増えるけれど、気持ちのギアがグッと入るような気がする。やる気を出したい時は、まず形から入る、というのも一つの手だ。

 2021年に公開された、エマ・ストーン主演の実写映画「クルエラ」が大好きで、私は何度も見ている。70年代のロンドンを舞台にしたファッション業界。それまでの時代が、少しずつ移り変わっていく時代。イギリスのパンクロックも映画に多く登場する。
 今の自分の心を燃やしてくれる映画である。クルエラはパワフルな女性で、自分の作る洋服に対して自信がある。自分こそ最高だ、という闘争心がファッションにも現れていてかっこいい。魅力的なヴィランである。

 クルエラの纏う「黒」と「赤」が似合っていて、かっこいい。黒いファッションに赤リップが目立つのも素敵だし、ドレスコードがモノトーンのパーティーに真っ赤なドレスで登場する、その赤に私は見惚れてしまう。
 爪を赤と黒に塗ったのは、この映画の余韻にもうしばらく浸りたいという気持ちの表れだ。


 可愛いと言われても、その言葉をなかなか素直に受け取ることができないのだが、かっこいいという言葉をもらえたら、わりと素直に受け取ることができる。そういうひねくれた性質が、私には少々ある。
 可愛いと嘘をつくことはできても、かっこいいと嘘をつくことはできない。シンプルな、心からの賞賛。

 容姿より中身だというが、容姿も中身も表裏一体なのではなかろうか。その人の中身を一番手っ取り早く知れる。それが全てではないが、その人を知るたくさんの手段のうちの一つであることには違いない。

 それは別に「可愛い」とか「顔が整っている」というところを見ているのではなく、「この人の着ているチェックのスカートがとても似合っている。その服を選ぶその人の感性に惹かれる、素敵な人だ」とか、「この人はスマートな服を選ぶ人で、シンプルな服装だけど、とても上品。この人にとても似合う形を選んでいる。アクセサリーはしない派なのか」とか、そういう部分。

 どんな関係性の人間であっても、容易に知ることができたり、伝えたりすることができる手段の一つは、外見だと思う。
 外見にその人の普段の生活が現れたり、外見を使って自分の価値観や思考を表現できたりする。その人がどんな自分でなりたいのか、ありたいのか。その人が、どこに重心を置くのか、わかる。


No Buses - Pretty Old Man
 突然、YouTubeのおすすめに出てきた。咳の音によるカウントの始まり方が印象的。邦バンド、英語の歌詞。気づけばこのサウンドが癖になっていた。気だるげな雰囲気がなんとも良い。MVのサビのダンスも、もはや愛おしく思えてくる。



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