パートナーシップのポテンシャルを開放するデータ革命 パートナー企業との営業データ連携
「営業に関する本を出版します」コロナウイルスが騒がれ始めた頃、五反田のとても騒がしい居酒屋で、中谷くんが真剣な表情で語ってくれたことを今でも鮮明に覚えています。
当時、私は彼と株式会社マツリカの同僚で、Senses(現在はMazrica Sales)というCRMプロダクトを世に広めるため、ともに戦う仲間でした。
その後、私はハイウェイという会社を立ち上げマツリカを離れることになりましたが、その後中谷くんはマツリカで「Deal Pods」という素晴らしい先進的なプロダクトを立ち上げました。そしてあの居酒屋で語ってくれた目標が見事に実現されたんだと思うととても嬉しい気持ちです。ここに至るまでの努力を本当に尊敬しています。改めて、おめでとうございます!そして、今回このような企画にもお声がけいただいたこと、重ねて感謝申し上げます。
PRM(パートナー・リレーションシップ・マネジメント)とは
この度弊社ハイウェイが掲載された「PRM」というカテゴリについて、陶筆ながら解説をさせていただきます。PRMは、パートナー・リレーションシップ・マネジメントを略した言葉です。日本語でわかりやすくすると、「代理店管理ツール」「セールスフォースの代理店特化版」です。
PRMによく似た言葉として、セールスフォースで有名なCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)やSFA(セールス・フォース・オートメーション)があります。日本では顧客管理ツール、営業支援ツールと呼ばれることも多いですが、CRM/SFAが企業の"直接販売"の営業やマーケティングの活動を支援するのに対して、PRMは代理店営業と呼ばれる企業の"間接販売”の活動を支援します。また、PRM製品は社内で直販の営業管理を行うためのSFAやCRMツールとの柔軟なデータ連携ができるよう設計されているツールが多いです。
企業が直販営業を科学し、顧客接点をデジタルに管理し、1 to1マーケティングに進化していくように、販売代理店など外部のパートナー企業との関係性を密にし、販路の拡大、売上の拡大、営業効率性の改善など事業の成長エンジンにしていこうというのがPRMの考え方のベースにあります。日本ではまだまだ馴染みが薄いこのPRMというジャンルですが、海外ではメーカーとパートナーとの間で良好な関係を築くためにこの考え方やツールが浸透してきており、Grand View Research社のレポートによると、PRMの市場規模は2021年の段階で約628億ドル、2028年にかけて年平均成長率(CAGR)が16.2%で成長すると予測されています。
また、テクノロジーに強いシンガポールに拠点を置く世界的なアナリストCanalys社の調査によると、2023年現在、38社ものPRM製品を提供する企業が存在し7億1,000万米ドルの市場規模があるとされています。
PRMツールが解決する課題
PRMツールが一般的に、どのような課題を解決するのか、実際の業務目線でご紹介します。
まずは、パートナーに対する様々なコンテンツの情報共有の課題があります。メーカーの製品の最新情報や営業資料、学習コンテンツなど、パートナーに共有すべき情報は多岐にわたります。しかし、直販の営業部隊と同じように、パートナー企業が正確な情報にリアルタイムにアクセスできている状況は多くありません。代理店担当やパートナーセールスと呼ばれる人々が、パートナー企業からの問い合わせのたびに都度人力で対応している場合も多く、未だメールや電話で対応しているケースも散見されます。その結果、メーカーのコンテンツや知識はパートナー企業内でも属人化し、誰が、何をどこまで見てくれたかを確認することはほぼ不可能に近い状況となってしまいます。
社内にGoogleDriveやNotionといった社内コンテンツ置き場があるように、パートナーが円滑な営業活動のために必要なすべてのコンテンツを一元管理し、パートナーが必要な情報に迅速かつ容易にアクセスできる環境を構築できる、そして誰がどこまで知識をキャッチアップしてくれたのかが一定デジタルに把握できることがPRMツールの大きな特徴となります。
次に、パートナーとの案件情報の共有課題があります。多くの企業が抱える問題として、パートナーが提案している案件の状況がブラックボックス化してしまうことがあります。パートナーのリアルタイムな提案状況が見えないため、企業側としては適切な支援を行うことができず、結果的にいきなり失注したり、逆に予期せず受注したりするケースが発生します。このような状況では、戦略的なサポートやリソースの最適化が難しく、ビジネスチャンスを最大限に活用できません。また、複数のパートナーを抱えている場合、ターゲット顧客の重複やアプローチのバッティングによって、顧客トラブルを引き起こしてしまう要因にもなります。例えば、同じ顧客に対して複数のパートナーが別々にアプローチを行った場合、PRMツールを活用していればターゲット顧客や進行中の案件情報をリアルタイムで共有でき、アプローチの重複を防ぐことができます。もちろん、メーカーの使用しているCRMやSFAとデータ連携することで、運用の負荷を少なくすることも可能になっているツールが多いです。
最後に、パートナー担当者一人ひとりの情報管理の課題です。パートナー企業内でも複数の拠点、部署、役職、担当者が存在し、それぞれの役割や連絡先、活動履歴を適切に管理することは容易ではありません。大手の代理店になると数千から数万人の担当者になることも多く、情報が散逸していると、戦略的な関係構築も難しくなります。PRMツールは、各パートナー担当者の詳細なプロファイルや過去のコミュニケーション履歴を包括的に管理します。これにより、キーマンの特定と攻略が容易になり、一人ひとりにパーソナライズされた関係構築が可能となります。適切なアプローチを通じて、担当者の異動や新規プロジェクトの立ち上げ時にもスムーズな連携が実現し、パートナーシップの質を一層高めることができます。
PRMを導入することで
多数のパートナーに適切な情報をリアルタイムに共有(パートナーポータル機能)が可能になる
新規売上、案件創出に向けた営業連携の強化に取り組める
各パートナーの担当者レベルの理解促進(代理店プロファイルの管理や、組織やキーマン情報の管理)に取り組める
これらのメリットを最大限に活用することで、企業はパートナーとの協力関係を強化し、市場での競争力を大きく向上させることができます。
PRMツールが提供する機能群
現在、グローバルでパートナービジネスに関するテクノロジーはPRMも含めて、細分化すると11のジャンルになると言われています。
PRM以外の主要なジャンルをピックアップします。
パートナーを新たに募集する機能
パートナーに自社の商材を学習してもらう機能
パートナー企業を通じたMA(マーケティング・オートメーション)
インセンティブ(手数料)や販促費用を管理する機能
パートナーとのリアルタイムなCRMデータ共有、アカウントマッピング
1.パートナーの募集と開拓(Ecosystem recruitment and visualization)
パートナープログラムの作成を通じて、企業が代理店戦略を立ち上げる際のサポートをおこなう領域です。代表的な企業に、「PartnerStack」があります。同社のプラットフォーム上で何千ものパートナーを検索し、自社が持つニーズと合致するパートナーを探せます。
また、業界や企業属性でパートナー企業を絞り込みながら、詳細なプロフィールから自社にとって相性の良いパートナー企業であるかどうかを確認することもできます。
2.教育学習支援(Channel learning and readiness):
パートナー企業の営業担当者に自社のサービスを学習してもらうことを支援するジャンルです。日本でもセールスイネーブルメントというカテゴリが流行してきており、その代理店版といってもいいでしょうか。
代理店に対する研修カリキュラムの提供や、学習管理システム、認定資格制度などを運営をサポートします。
3.パートナー企業を通じたマーケティング・オートメーション(Through-channel marketing automation):
MA(マーケティング・オートメーション)の考え方をパートナー企業を通じて行うソリューションです。グローバル企業がローカル展開を進める際に、現地のパートナーとの効果的なコミュニケーションを促し、マーケティングや広告展開を行えるよう支援するテクノロジーです。
グローバルブランドの一貫性を維持しながら、現地のマーケティングキャンペーンの管理ができます。
4.手数料(インセンティブ)管理(Channel incentives management)
自社の商品を販売パートナーが積極的に販売するよう行動してくれるインセンティブの設計・管理を支援します。リベート(謝礼金)やキックバックの金額、マージンなどを設計して、個社ごとに管理ができます。
5.パートナーエコシステム内のアカウントマッピング(Ecosystem data and mapping)
この領域は最も新しい領域とされている、エコシステム内のパートナー企業間で営業データを連携し、お互いの共通の顧客やターゲット企業を具体的にすり合わせる手法をアカウントマッピングというジャンルになります。曖昧になりがちな企業間のターゲット像の伝達や狙うべき企業が具体的になり、両社の共同営業、共同マーケティングが協力に推進されます。
代表的な企業は、「CROSSBEAM」です。
ハイウェイとは?
ハイウェイは先程ご紹介した新しい領域である、パートナーエコシステム内の企業とのアカウントマッピング(Ecosystem data and mapping)を推進する日本初のプロダクトです。パートナー企業間の具体的な営業データの安全な連携・統合を可能にし、クロスセルに最適な狙うべきターゲット企業の抽出や、パートナー間のアプローチバッティングを防ぐことができます。
パートナービジネスにおいて最も重要な「理想的なターゲット企業」
パートナービジネスでは、異なる外部企業が協力してビジネスを推進します。しかし、直販営業と同様に最も重要なのは、ターゲットとなる企業を明確にし、それをパートナーと具体的に共有できるかどうかです。ターゲットが不明確なままでは、効果的な販売戦略を立てることは難しく、多くのパートナーシップがこの点を曖昧にすることでうまく立ち上がらない現状があると考えています。
最近、企業がパートナービジネスを始めるタイミングはPMF(プロダクト・マーケット・フィット)してからだ、という話をよく耳にするようになりました。これを裏返すと、PMFしているということは、一定の勝ちパターンが見えるターゲット企業が明確になっており、そのセグメントをパートナーに攻めてもらえば、市場攻略がより早く進んでいくということだと思います。一方、PMFが見えず、ターゲットセグメントが不明瞭もしくは複数存在しているような場合は、パートナー側の営業難易度が上がり、結果に繋がらず早期の立ち上がりが難しいと考えられます。
一般的に、代理店などのパートナー企業はメーカーほど製品知識が高くありません。私自身も代理店側の営業の経験がありますが、代理店には本当にたくさんの取り扱い製品があり、個々の製品については「この商品はこのような企業のこのような課題をこう解決できる製品だ」と、ワンセンテンスでしか覚えられません。そのため、協業の取り組みが浅い段階でパートナーのみで複雑な高度な営業ができる場合は少なく、課題が顕在化していて、営業難易度が低い企業でないと成果を出すことは難しいです。
そのため、メーカーは製品知識を覚えてもらうことも重要ですがそれ以上に、営業難易度の低いターゲット企業を明確に示してあげることが必要であると考えています。その上で、さらにパートナー企業がそのターゲット企業にパス(人脈)を持っていれば、営業ハードルはぐんと下がり、より早く協業の成果を創出することができます。
外部企業との営業データ共有というハードル
直販営業の世界では、ターゲット戦略が何度も何度も磨き上げられてきました。しかし、パートナー企業との会話になると、途端に「誰に製品を売るのか」「どの企業が一番価値提供しやすいか」といった基本的なターゲット設定が曖昧になる傾向があります。その背景には、データ共有のハードルが存在します。
日本のパートナーシップの現場では、セキュリティ意識と商習慣が障壁となり、深いターゲット戦略の議論が進みにくい状況があります。多くの企業が顧客情報や営業データの共有に慎重であり、それがパートナー間での突っ込んだ議論を阻害しています。セキュリティへの過度な配慮や情報共有への抵抗感から、エクセルやメールで中途半端に情報を共有するにとどまり、お互いに「見えない顧客」を相手に営業活動を行っているケースが多いのです。
このような状況では、パートナー企業と効果的な販売戦略を立てることは難しく、ビジネスチャンスを逃してしまう可能性があります。ターゲット企業や市場ニーズを具体的に共有しないままでは、協力のシナジーを最大限に活かすことができません。
「ハイウェイ」は、パートナー企業間での安全かつ深い営業データ共有を可能にするプロダクトです。これにより、パートナービジネスにおけるターゲット戦略やGTM(Go-To-Market)戦略をよりリアルタイムかつ具体的なものにします。ハイウェイはCRMとの連携や名寄せ技術を活用し、ターゲット企業の選定や市場アプローチを高度に最適化します。その結果、双方の営業担当者が迅速にコラボレーションでき、市場攻略のスピードと精度が飛躍的に向上します。
実際に弊社の製品をご利用いただき、Box Japan様は国内の大手代理店とホワイトスペースをリアルタイムに共有しました。その結果パートナー経由の案件数が増加するとともに、パートナー同士のアプローチのバッティングが減少するという実績を上げています。
「CRMは売上に貢献できるのか?」企業の垣根を超えてデータを紡ぐ時、CRMは初めてその問いに"直接的"に応える
これまでご説明してきたハイウェイの特徴である、パートナーエコシステム内の企業とのアカウントマッピング(Ecosystem data and mapping)は、従来のCRMデータの価値を飛躍的に向上させる仕組みだと考えています。
一言で言えば、CRMのデータをパートナーと共有することです。しかし、それは単にデータを共有するだけでなく、自社のCRM内に蓄積されたデータから、パートナーにとってビジネスチャンスとなる顧客を見つけ出すことを意味します。これは単純なデータ共有ではなく、新しい営業のアプローチです。
これまで、CRMはデータを管理することに注力してきました。しかし、蓄積したデータが売上に繋がらなければ、何の意味もありません。そして、それが入力する営業担当者にとって直接的なメリットがなければなりません。パートナーとデータを共有し、ビジネスチャンスを創出して売上を上げることができれば、それはデータの価値を大きく向上させます。そうすることで、データを蓄積する意味を初めて営業担当者が実感できるのではないでしょうか。
企業の垣根を超えてデータを紡ぐ時、CRMは初めて「売上に貢献できるのか?」という問いに直接的に応えるのだと、CRMと長らく向き合ってきたた経験から確信しています。
人口減少という難題に挑む日本に「Ecosystem Led Growth」という新しい事業成長モデルを
私は創業以来、このプロダクトが「パートナーエコシステムによる企業成長モデル」の開発につながると信じ、挑戦してきました。
近年、世界的にも多くのPRMベンダーが「パートナーエコシステム」という言葉を頻繁に使うようになっています。
「セールスレッドグロース」や「プロダクトレッドグロース」に続き、「エコシステムレッドグロース(Ecosystem Led Growth)」、そして「アウトバウンドセールス」や「インバウンドセールス」に続く「ニアバウンド(Near Bound)セールス」といった新たな概念が提唱され、パートナービジネスを新たなGTMの手法と捉え直す動きが出てきています。
これは特にB2B SaaS企業のビジネスモデルが、従来の販売やマーケティング中心のアプローチから、パートナーシップとエコシステムを核とした新しいアプローチへと移行しており、新たなGTMのイノベーションが求められているためだと考えています。この変化の背景には、世界的な不況やSaaS企業の時価総額マルチプルの見直し、顧客獲得コスト(CAC)の高止まり、そしてサードパーティクッキーの廃止などの要因により、従来のGTMプレイブックが通用しなくなってきていると言われています。
2000年代は、Salesforceが牽引した「営業のデジタル化の時代」でした。そして2010年代は、MarketoやHubSpotが牽引した「マーケティング自動化の時代」で、データを活用して効率的に顧客を獲得し、企業は成長を遂げてきました。しかし、これまでの20年間にわたるデータ活用やデジタルマーケティングによる成長モデルは、現在、調整局面を迎えています。2020年代には、新たな戦略として「パートナーエコシステムの時代」が求められているのだと思います。
さらに日本はこれから、人口減少と人材不足という大きな試練に直面します。この状況下で各企業が生き残り、成長を続けるためには、より効率的で生産性の高い営業活動が求められます。日本こそ、企業がエコシステムに投資し、外部企業とのシナジーを最大化することで、新たなGTMモデルを確立していくことが必須だと考えています。そして、これからもハイウェイはそのモデルを支えるプロダクトを懸命に開発していきます。
今後に注目しているカテゴリ
ハイウェイが属する「エコシステムデータとマッピング」のカテゴリに、引き続き注目しています。特に、先ほどご紹介したCrossBeamは最近、フランスの製品であるRevealを買収し、さらなる拡大を続けています。世界的にもまだ新しいこの分野を、日本でも盛り上げていけるように、ハイウェイ社も全力で頑張りたいと思います。
最後に
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
ハイウェイに少しでも興味を持っていただいた方、是非一度お問合せいただけると幸いです!
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