版を重ねるごとに語義解釈が変わる『広辞苑』-「パンダ」という単語を例に-
このイラストは、『広辞苑』における「パンダ」という語彙の説明が、各版を経てどのように変わってきたかを示しています。今回は、各版の変更点について詳しく考えていきたいと思います。
1. 『広辞苑 第二版』(1969年刊行)
『広辞苑 第二版』 は、1955年の初版に続き、1969年に発行されたもので、『広辞苑』としての初めての改訂版です。この版では、当時の社会的背景や科学の進展に合わせて、語彙の追加や修正が行われました。「パンダ」という項目も、この第二版で初めて登場しています。
パンダに関する説明は、ネパール語「pandal」に由来すること、食肉目に属する哺乳類であること、そして「大熊猫(ジャイアントパンダ)」と「小熊猫(レッサーパンダ)」が共にチベット付近の高山に住んでいるという内容です。まだこの時点では、ジャイアントパンダとレッサーパンダが明確に区別されておらず、両者は同じ「パンダ」としてひとまとめに扱われています。
2. 『広辞苑 第二版補訂版』(1976年刊行)
『広辞苑 第二版補訂版』 は、1976年に発行されたもので、第二版の内容をベースにした修正版です。「補訂版」という名前が示す通り、これは新たな版というより、第二版に対して細かな訂正や追記を行ったものです。このような「補訂版」は、辞書や百科事典では一般的な更新形式であり、内容の大幅な改訂ではなく、時事的な情報や誤りの訂正、語義の追加が行われます。
「パンダ」項目の変化:
補訂版では、パンダに関する記述がより詳しくなり、いくつかの補足が加えられました。具体的には、パンダの生態や生息地に関する情報が更新され、言葉の使用状況や学術的な認識の変化が反映されています。たとえば、ジャイアントパンダとレッサーパンダが共に含まれていた説明が、少しずつ整理され始めており、これが後の第三版以降の記述の分岐点になっていきます。
また、細かな表現の見直しや、当時の最新の動物学的知見が追加されている可能性があります。これにより、「パンダ」という語の説明が、より正確で現代的な内容へと更新されています。
第二版と補訂版の違いのまとめ
第二版 は1969年に刊行され、初めて「パンダ」の項目が追加されましたが、ジャイアントパンダとレッサーパンダが同一の「パンダ」として扱われていました。
第二版補訂版 は、その後の科学的進展や社会的変化を反映して、1976年に発行されました。補訂版では、パンダに関する情報がより精緻化され、言葉の説明に対する誤りの訂正や細部の修正が加えられました。この補訂版が後の第三版に引き継がれ、ジャイアントパンダとレッサーパンダが明確に区別されるようになる布石となりました。
この違いは、辞書全体の進化と、時代ごとの知識や科学の進展がどのように反映されるかを示す良い例です。
3. 『広辞苑 第三版』(1983年刊行)
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