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「論文を作成するにあたっての基礎事項を学びましょう」

Ⅰ「起承転結」の由来・用法・意味について

「起承転結」(きしょうてんけつ)は、日本の伝統的な文学や演劇において重要な要素を示す四字熟語です。これは物語や文章の構成を表す言葉であり、物語の展開や構造において必要な四つの段階を指します。

由来: 「起承転結」は、中国の古典的な文献である「左伝」(さでん)に由来しています。『左伝』は、春秋時代に成立した歴史書で、その中の一篇に「文公十四年」の出来事についての記述があります。この篇において、「起」・「承」・「転」・「結」という言葉が現れ、物語の展開について説明されています。これが後に日本に伝わり、文学や演劇における物語の構造を表す四字熟語として定着しました。

意味・用法:

  1. 起 (き): 物語や文章の最初の部分で、登場人物や出来事の背景や導入が行われる段階です。物語の舞台が設定され、読者や観客に物語の舞台背景や主要登場人物の状況を理解させる重要な部分です。

  2. 承 (しょう): 物語や文章が進行していく段階で、問題や事件が起こります。登場人物たちが行動を起こし、物語が動き出す部分です。しばしば、登場人物の対立や困難が浮き彫りにされます。

  3. 転 (てん): 物語や文章の展開が転機を迎える段階で、物語の方向性が変わる瞬間です。大きな事件や転換点が起こり、物語が新たな局面に移行します。

  4. 結 (けつ): 物語や文章の最後の部分で、物語の結末が明らかになる段階です。登場人物の行動や決断によって、物語が最終的な結末へ向かいます。

これらの四つの要素は、物語の構造を明確にし、読者や観客に物語をわかりやすく伝える役割を果たします。日本の文学や演劇において、この「起承転結」の概念は、物語作りや脚本作成において重要な指針とされてきました。また、それだけでなく、プレゼンテーションや文章の構成などでも応用されることがあります。

Ⅱ「起承転結」のそれぞれを論文に当てはめるとどうなるか?

「起承転結」の概念は物語や演劇に限定されるものではありません。これは一般的なコミュニケーションや論文作成においても適用されることがあります。以下は、「起承転結」の概念を論文作成に当てはめる方法の例です:

  1. 起 (き): 論文の「起」の部分では、研究の背景や目的、問題意識を明確に述べます。研究の動機や研究テーマの重要性を説明し、読者に研究の全体像を把握させる部分です。また、先行研究の概要や研究の枠組みも示します。

  2. 承 (しょう): 論文の「承」の部分では、具体的な研究方法やアプローチを説明します。研究の手法やデータ収集方法、分析手法などが記載されます。また、研究対象やサンプルについての詳細な説明も含まれます。

  3. 転 (てん): 論文の「転」の部分では、研究結果や分析の結果を提示します。この部分では、論文の主張や仮説が支持されるか、あるいは否定されるかが示されます。また、予想外の結果や重要な洞察もここで述べられるでしょう。

  4. 結 (けつ): 論文の「結」の部分では、研究の結論や総括が行われます。研究の成果と意義が再強調され、研究目的に対する答えや洞察がまとめられます。さらに、今後の展望や課題、可能性なども示されることがあります。

「起承転結」の適用により、論文の構成が明確になり、読者にとってわかりやすい論文となるでしょう。論文作成においても、物語のような流れを持たせることで、情報の整理や伝達効果が向上します。読者が論文の内容をスムーズに理解しやすくするためにも、「起承転結」の原則を意識して執筆することが重要です。

Ⅲ「序破急」の成立過程・意味・用法について

「序破急」(じょはきゅう)は、日本の伝統芸能や武道において重要な概念であり、特に能楽(能舞台の演劇)や武道(特に剣術や弓術など)の演武において使われる用語です。これは物事の進行や展開における段階を示す言葉で、能楽や武道の演技において特有のリズムとして重要な役割を果たしています。

成立過程・由来: 「序破急」の成立過程については、複数の説がありますが、主な説として次のようなものが挙げられます。

  1. 能楽説: 「序破急」は、能楽(特に能舞台の演劇)に由来するとされています。能楽の演目では、物語の構造やテンポを示すために「序」「破」「急」という三つの語が用いられたとされています。演目の最初の部分である序(じょ)では、登場人物や舞台の状況が紹介され、物語が静かに始まります。次に、破(は)の部分では、物語に転機が訪れ、物語が進展し始めます。最後に、急(きゅう)の部分では、物語が急速に進行し、クライマックスが迎えられます。

  2. 武道説: 「序破急」は、武道の稽古法や演武において重要な概念として広がったという説もあります。武道においても、技の習得や演武において「序」「破」「急」という段階を経て、身につけることでより効果的な動きや戦術が身につけられるとされています。

意味: 「序破急」は、物事の進行や展開における三つの段階を示します。

  1. 序 (じょ): 物事が始まり、まだ静かな状態である段階。物語の導入部や演武の最初の動作が含まれます。

  2. 破 (は): 物事が変化し、転機が訪れる段階。物語や演武が進展し、動きが活発になります。

  3. 急 (きゅう): 物事が急速に進行し、クライマックスが迎えられる段階。物語や演武が最も盛り上がり、高まります。

「序破急」の概念は、物語の演出や武道の動きをより効果的にするために重要な指針として使われます。能楽や武道の演技においては、このリズムを意識することで、観客や相手により強い印象を与えることができます。

Ⅳ「序破急」と「起承転結」の類似点と異なる点について

序破急と起承転結は、どちらも物事の進行や展開における段階を表す概念ですが、それぞれに類似点と異なる点が存在します。

類似点:

  1. 物事の進行を示す: どちらの概念も、物事の展開を段階的に示すことが共通しています。物語や文章、演劇、演武など、様々なコンテキストで利用され、事象の順序を整理する際に役立ちます。

  2. シンプルな構造: 両方の概念は、シンプルかつ明確な構造を持っています。起・序では物事が始まり、承・破で物事が進展し、結・急で物事が終わるまたはクライマックスに至るという基本的なパターンがあります。

異なる点:

  1. 起承転結 vs. 序破急: 起承転結は物語や文章の構成に関する概念であり、物語のはじめから終わりまでの全体的な展開を示します。一方、序破急は、主に能楽や武道の演技に関連する概念で、特定の場面や演技のリズムに焦点を当てます。

  2. 用途: 起承転結は、物語の構成に関連して物語作成や文章執筆に広く応用されます。一方、序破急は、主に能楽や武道の演技におけるリズムの演出に使用されます。それぞれの用途が異なるため、使われる文脈や場面が異なります。

  3. 要素の数: 起承転結は、四つの要素(起・承・転・結)から成り立っています。一方、序破急は三つの要素(序・破・急)から成り立っています。両者とも段階的な進行を示す点には共通性があるものの、要素の数に違いがあります。

これらの類似点と異なる点を理解することで、起承転結と序破急の各概念を適切な文脈で理解し、適用することができるでしょう。

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