![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/86179645/rectangle_large_type_2_2de76e27a65b4eb350998e52aef96498.png?width=1200)
文房具コーナーで出会った、届かない(かもしれない)メッセージ
そうだった、修正テープを買わないと。
たまたま寄ったバラエティショップの文房具コーナー。
文房具コーナーとは、まさしく沼であり、魔境である。一度入ってしまうと、数時間は滞在してしまう。
しょっちゅう使う文房具なんて限られているのに、新しい文具のチェックに余念がないわたし……。
店内をぐるぐる見渡して、ふと目についたのは、最近よく見かけるようになった、パイロットの「ジュースアップメタリック」。
メタリックカラーで、黒い紙にも描けるペンだ。
隣に、「クルールフォンセ」シリーズも並んでいる。
こちらは暗いカラーのノートで、
「クリエイティブブラック」
「アミュージンググリーン」
「リラクシングネイビー」
と絶妙なニュアンスカラーが素敵だなあ、と見るたびに思っているノートである。
おお、クルールフォンセシリーズのノートが、ジュースアップ用の試し書きノートにされているではないか!
特にペンを探しにきたわけでもないのに、学生時代からの習慣でちょろちょろっと試し書きをする。
黒い紙に白い文字、新鮮だなあ……。
◆◆◆
ところで、試し書きをするときに何を書くか。悩ましいところではないだろうか?
わたしはそのお店があるエリアを書く(「EBISU」「HARAJUKU」「新宿」など)ことが多いけど、みんなどんなこと書いてるんだろう?
ふと興味が湧き、ぱらぱらとページをめくる。
「今日はつかれた〜」と感想を書いている人もいれば、日付だけをシンプルに書く人もいる。結構バリエーションがあるみたい。
なんだか、お店を訪れた人と交換日記をしている感覚だ。
ゆっくりとページを眺めながら、ノートをめくっていく。すると、1つの深刻?な悩みに遭遇した。
「字が下手だと残念」
ブルーのペンでひっそり書かれた悩み。
全然そんなことないよ、と思うぐらいには美しい字だった。けれど、そうか、これを書いたご本人は字が下手だと思っているのかあ。
ちょっと切なくなってしまった。
と思ったら、下に続きがあるではないか!あれ、でも違う人の文字……?
そこに書かれていたのは、「とてもお上手ですよ」というメッセージだった。
シルバーっぽい色味のペンで、さささっと殴り書きのような筆跡。矢印がひっぱってあって、この人宛のメッセージですよ、と静かに主張していた。
これを書いた人は、思ったことをそのまま届けようとしたんだ。
軽い気持ちかもしれないけど。それでも、どこの誰とも知らない人に返信するというのは、なかなかできない。
2人は出会うことはないかもしれない。再び来店したところで、このメッセージが残っているとも限らないし、メッセージすら届かないかもしれない。
けれど、やりとりの痕跡を見て、なんだかニンマリしてしまった。
メールやSNSが当たり前の時代に、文房具コーナーの小さなノートの中で、こんなアナログなやりとりが繰り広げられていたなんて。
ドラマチックすぎる。
結局、修正テープは買い忘れてしまった。
でも、代わりに「ほかほかしたもの」をもらってきた気がする。
「字が下手」と悩んでいるあなたに、温かいメッセージが届いているといいな。
いいなと思ったら応援しよう!
![fumi](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/120461586/profile_7be9ec69f8d0196df3d3b81652f7c5ab.png?width=600&crop=1:1,smart)