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憧れのパリにて、「たゆたえども沈まず」原田マハ


 新年あけましておめでとうございます。
 最近は一年に数えるほどしか書けていないブログですが、今年はもう少し頑張って更新したいと思います。おつきあい、どうぞよろしくお願いいたします。

 年末に読んだ本ですが、今回はこちらから。

 そういえば・・・まだ読めていなかったな、読みたいな・・・と「板上に咲く」を読みながら思い出していた作品。きっと同じような人がたくさんいるのだろうか、年末に空港の書店で平積みになっているのを見つけて、あ!と手にとった。
 
 「ひまわり」の画家、ファン・フィンセント・ゴッホの、その苦悩に満ちた生涯を、弟テオの目から描いた小説、生涯にわたり気むづかしい兄を信じ、献身的に支え続けたテオについては、その手紙が残されていることもあり、よく知られている。
 よく知られているはずのゴッホ兄弟を、同時代のパリに生きた美術商、林忠正とその助手、加納重吉の目から俯瞰することで、より立体的で生々しい、彼らの姿が浮かび上がった。
 19世紀後半のパリ。世界中から美と富が集まる花の都で、そのパリに憧れ、足を踏み入れてしがみつき、台頭にビジネスをしようと奮闘する林と重吉の姿は、高浜寛さんの漫画「ニュクスの角灯(ランタン)」の美世とその仲間達にも重なる。そう、日本が必死に、西洋の文化に追いつこうとしたこの頃、パリ万博などの機会を得て、日本の伝統工芸や、特に浮世絵が西洋人の目にとまることになる。だがそれは、決して偶然の産物ではなく、バリに乗り込み、日本の美を丁寧に紹介した、彼らの才覚と努力なくしてはここまでの成功はあり得なかっただろう。
 テオもまた、富を追ってオランダからパリへ出てきた青年の1人だった。パリの大手ギャラリーでやり手の画商として活躍する彼は、裕福でではない家庭を支え、自分自身と、何をやっても続かず落ち着かない兄を支えるため、時に意に反する仕事も決してそれを顔に出さず、スマートにこなしていた。
 大都会パリとは言え、美術品を扱う外国人の商人どうしであった彼らに接点がなかったと思う方が難しいのかもしれない。
 19世紀末のパリ。ゴッホ。画商たち。舞台にも役者にも不足はない。こうして、原田マハさんのすてきな物語が、また一つ生まれた。

 羽田からローマへの長時間フライトが気にならないくらい、パリに思いを馳せながら夢中で読んだ。

たゆたえども沈まず
原田マハ
幻冬舎文庫

4 gen 2025

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