#10|町のシネマは未知へのとびら【兵庫区・新開地「パルシネマ」】
映画通のための映画館?
「パルシネマ」の存在に気がついたのは兵庫区に引っ越したばかりのころ。
レトロな看板。古そうな名画のポスター。
外観からも年季が入っているのが伺える。
その趣深さから、「映画通のための映画館」とはじめは勝手に神聖視していた。
ところが兵庫区で暮らすうちに、その印象が変わっていく。
ただマニアが映画を観る場所ではなさそうだぞ。
ご近所のカフェとのコラボ上映会、新開地といえばの落語の会など、なんだかいろいろなイベントをやっている。
毎月発行される上映スケジュールのチラシも、映画への熱があふれる手作りだ。大きな映画館ではもう観られそうもない、でも興味をそそられるタイトルが並んでいる。
むしろ「老若男女みなさんどうぞ楽しんで」と手を広げているようで、こんどは勝手に親しみを感じるようになっていった。
それからSNSで上映作品を欠かさずチェックしては、チャンスを伺っていたある朝。とうとう、どうしても気になる一本が見つかった。
昔一年ほど住んだアイルランドが舞台で、夏らしくて爽やかそうな映画だ。メジャーではなさそうだし、きっとここでしか観られない。
ということで、念願のパルシネマデビューをしてきました。
はじめてのパルシネマ
少し薄暗い入り口のそばで、受付の方が券売機へと案内してくれる。
平日の昼間だから空いているかな、と思ったけれど、主にご年配のお客さんたちがひとり、またひとりと館内に吸い込まれていき、小さな劇場はほとんどいっぱいになった。
座席に座ってそっとあたりを見回すと、持参のお茶を片手にたのしそうにおしゃべりする人や、雑誌を広げている人もいる。
いわゆる大手の映画館の、あのぴりぴりした雰囲気とはちがってみんなのんびりとして見えた。
そんな和やかな空気も、劇場が暗くなるとふっと静まり、非日常感に包まれる。映画は、とても美しかった。
スクリーンと近いからかもしれない、なぜか思い出のフィルムを眺めているような温かさを鑑賞中ずっと感じていた。
パルシネマは基本的に二本立てなので、上映後もそのまま座席にのこって次の映画を観ることもできる。
その「幕間」に支配人さんが舞台に現れて、今後上映される映画のみどころ紹介がはじまってびっくりした。あとで聞くと、支配人さんが出勤の日はほとんど、こうして自分で映画紹介をするのだという。
だれかの、何かに対する好きの気持ちを生の声で聞くのは久しぶりだった。
ぜんぜん映画通でもない私だけど、へええ観てみたいと思わされてしまう。
ここで新しい映画と出会う人はきっとたくさんいるだろう。
おわりに|身近な未知のとびら
キャラメルポップコーンを貪りながら大スクリーンでアクションを楽しむ、そんな映画体験とはまた別の時間が、パルシネマには流れていた。
想像もしなかった映画と出会い、日々の生活からちょっとだけ離れた世界へ連れていってくれる。
身近にそんな場所があることは、なんだかとても心強いことのように思えた。
次は何を観ようかな。
あっさりパルシネマに魅了されたわたしは、次の上映スケジュールにまた目を凝らしている。
おまけのおやつ|Miss Teaのタピオカドリンク
わたしは映画館に行くと集中するからか、すごく喉が乾く。
暑い日はなおさらだ。ということで、帰りに大好きなタピオカ屋さんに寄った。
この日選んだのは、タピオカじゃなくて仙草ゼリーが入ったジャスミンミルクティー。
ゼリーはぷるぷるでクセがなく、つるんと飲めてしまう。夏のおやつドリンクにとってもおすすめです。