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真夜中の本屋 2月の一冊
ここは真夜中に開いている本屋。眠れない人、終電を逃した人、夜に遊びたい人なんかがぽつりぽつりとやってくる。小さな部屋の壁一面に本が並んでいて、中央の小さなテーブルに月代わりで選ばれた一冊が置かれている。
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2月の一冊
吉本ばなな『吹上奇譚 第二話 どんぶり』
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ああ幸せだと思う瞬間があるだろうか。
生きてるけど生きてないみたいで、毎日同じことの繰り返しで周りも冴えなくてなんだかな、と思っていたら、この本をどうぞ。
長年の眠り病から目覚めて、美味しい丼🍜を作ることだけに毎日を費やす母。
弔いの花束をつくる仕事をしながら墓の手入れする墓守くん。
主人公のコダマミミは、おじさんのアイスクリーム屋を手伝ったり、友達の墓守くんのアシスタントをしたりしている。
引きこもりがちで痩せぎすでワシと名乗る、墓守くんの彼女、美鈴は、除霊の仕事をしている。
ミミは最近、セックスフレンドを亡くし、美鈴は除霊に失敗・・・。
色々な出来事に一喜一憂しながら、それぞれの道を極めていく。一緒にいる人達の優しさや覚悟や変化にはっとする。お母さんが作る丼をみんなで食べながら、友達のような家族のような、流れているのは安心に似た愛の感覚。
大切なのは、クールに時間を過ごすことじゃなくて心を動かして生きること。
春になれば新緑の葉がめばえるように、未来へ命は流れている。過去は今を奪えない。
はて、ちゃんと今の空気を吸っているかな。
小説の中で過ごして優しい風がふぅと心に吹き込んできたら、それを忘れないで、周りの世界をもう一度見渡してみよう。