最近、終わりを意識することが増えた。 今41歳で、折り返し地点ぐらいだろうか。 気力や体力がある時期は半分よりももっと短いかもしれない。 両親も着実に背中が丸くなってきて、耳が聞こえないとか言い始めた。 体は有限だ。いつか冷たくなって、動かなくなってしまう。 寂しい。と同時に、不謹慎に聞こえてしまうかもしれないけど、限りがあるのはロマンティックだと思う。 いつか終わることを意識するほど、もっと美しいものを見ようと思う。 もっと世界を愛でたいと思う。 辛いこと、
映画は好きだが、撮ったことはない。 しかし、いつか、撮るかもしれない。人生、何が起こるかわからないし。 「この人、映画になりそうだなあ」と思った人たちがいる。 いままで出会ったなかで3人いて、1人はガソリンスタンドの店員。 2人目はイギリスで会った駅員。 3人目は音響の営業マン。 一見バラバラな彼らには共通項がある。 社会的に成功した人たちではなくて、片隅で生きにくそうにしている人たち。 社会に適合しているようで、尻尾を隠せていないたぬきのように、なにかが漏れ
7月2日(火) 散歩好きの国、イギリスには「Footpath」という散歩道が国中にあるという。 川や丘、農場、自宅の敷地内など、国有地だけでなく私有地も通れることが特徴で、その背景には歩く権利が法的に保障されていることがある。 Footpathは小さな看板で誘導されていて、牧草地には牛や羊が逃げていかないように木の柵があり、歩行者はその柵をまたぎながら歩いていくという。私もそれをまたいでみたいと憧れていた。 Footpathの道はグーグルマップには表示されないので不安
7月1日(月) 今日はイギリスにきてはじめての朝食付きプランで宿で朝ごはん。 会場のカフェテリアは独特の色彩センスにオリジナリティーをかんじる、素敵な空間だった。雑誌に出てきそう! 大きな鏡の前にパンやフルーツ、ヨーグルトなどが並んでいる。 たっぷりお皿にとってパンをかじっていたら、スタッフが近寄ってきてメニューからも一つ注文できるよと言う。贅沢だ。 そこでエッグベネディクトに挑戦することにした。 この見た目の料理は、はじめてだ。 上にかかっているソースの下は、一
月に3、4冊Amazonで本を買う。大概が古本だ。値段も安いし、全国の古書店から送られてくる荷物はだいがい梱包も丁寧で、文句のつけようがない。エコにも貢献できる。 Amazonの検索しやすさと利便性がなければ、こんなに古本を買うことはないだろう。この仕組みに感謝している。 一方でがっかりすることもあった。この前、予約していた新刊がAmazonから届いて、封をあけて悲しくなった。 帯はななめに曲がっているし、カバーははずれかかっている。雑に扱われたかんじがする。新しいハー
先日、ふとした時に妙なことを思い出した。 風呂でおなかのまわりをマッサージしていたら、岡山市の地下道にいた時の感覚がよみがえってきたのだ。 あれは、はじめて立ち寄った岡山市を散歩していたときだった。 偶然入った美術館のインドの神々の展示に感動して、昼においしいお蕎麦と天ぷらを食べたあと、駅まで帰り道にとおった地下道だった。 地下道には広場のようなスペースがあって、円の中心にむかってベンチがいくつか置いてあり、会社の昼休憩らしきサラリーマンやおばあちゃんたちがこしかけて
6月30日(日) スーツケースを駅の荷物預かり所に託し、リュック一つで身軽になって、電車に乗り込む。今日はオックスフォードへ出発! 約1時間で到着し多くの人が降りる。比率としては中国人が多いかな。 私はまず駅前の風景に驚いた。 オックスフォードは有名だから、駅ビルがいくつもあったり、「オックスフォードへようこそ」と垂れ幕がかかっていたり、にぎやかな駅前の風景を想像していたら、実際は、茶色の低層のビルが数軒立っているだけだった。 駅から続く商店街には空いているテナント
6月29日(土) あっという間に5日がすぎて、ロンドン最後日。 今日はまずはポートべローマーケット(Portobello Road Market)へ行ってみよう。 毎週土曜日にやっているロンドン有数のアンティーク市。さぞ、かわいい雑貨が並んでいることでしょう! 改札から聞こえる歌声 地下鉄の改札にむかうと、案内役として立っているスタッフが歌を歌っている。アフリカ系の女性で数日前にみかけた時も歌っていた。 有名な曲のワンフレーズをきれいな歌声でリズムよく口ずさんでいる
イギリスとスペイン1人旅の記録です。 6月28日(金)ロンドン4日目。 今日は、イギリスでどうしてもやりたい、とこだわっていたことを実現させる日。 それは切り立った断崖の上に行って、海の風に吹かれること。 イギリスに興味をもつきっかけになったNETFLIXのドラマ「The CROWN」で、忘れられないシーンがあった。 若きエリザベス女王が断崖で強風や激しい雨に打たれながら立ったまま遠くを見つめるシーンだ。 女王は王という宿命の重責に悩んでいて、その気持ちが荒々しい
あなたの痛みと私の痛みがかさなって全てがほどけて癒えていく。恋にそんな夢を託すのはロマンティックすぎるだろうか。 夢を2日かぎり叶える2人の男たちの物語をみた。アンドリュー・ヘイという監督の「異人たち」という映画である。 舞台はロンドン。主人公のアダムは脚本家で、若くして事故で両親を亡くし、さらにゲイであることも重なって周りの人を避けるようになった。 孤独になれすぎたアダムは、たった二人しか入居していないロンドンのマンションにて、もう一人の住民であるハリーと出会う。
この夏、イギリスとスペインに一人旅をした時の日記です。 6月27日(木) 午後 ロンドンで噂のインド料理を初体験 「ロンドンで食べるものに困ったら、インド料理屋にいくといいですよ。」 そういってくれたのは、梅屋敷にある本屋、葉々社の店主さんだった。 「インドはイギリスの植民地だったから、インド料理のレベルが高いんですよ。」 その言葉が記憶に残っていたせいか、 ウエストミンスター寺院に向かうためパディントン駅をめざして歩いていたつもりが、気づくと吸いこまれるように
この夏、イギリスとスペイン旅行に一人旅に行った時の日記です。 6月27日(木) ロンドンで2度目の朝。今日もよい天気。 しかし、うー、今日は体が疲れている。昨日走り回ったせいだ。 事前の計画では、今日はマーロー(Marlow)という、ロンドンから片道1時間の街に遊びに行く予定だった。静かで眺望のきれいなテムズ川沿いの街は、林望さんの『イギリスはおいしい』という本にでてきて、憧れだった。 この街でゆっくりアフタヌーンティーを飲みながら過ごしてみたい、と思っていたのだが
6月26日(水) 時刻は6時半。ロンドンでむかえる初めての朝。 カーテンを開けると気持ちよく晴れていたので公園で朝ご飯を食べようと思う。 朝ごはんはハイドパークで Googleマップでみるとハイドパークまで歩いて8分くらいだ。ハイドパークは2.5平方キロメートルもある大きな王立公園だ。 ホテルにおいてあったペットボトルの水と昨日買ったりんごをリュックに入れて外に出ると、半袖だと少し涼しいくらいだ。 歩いていると周囲にはなんとも可愛い街並みが続く。白やパステルカラー
ここ1週間、腑抜けのようで、地に足がつかなくてフワフワしている。旅先で出会った人たちにお礼の連絡をする時と、お土産話をしている時だけ気持ちが湧き立つ。あとは、ぼおとしている。 3週間のイギリスとスペインの旅行は楽しすぎて、心がさらわれてしまったようだ。 先日、予約サイトのBooking .comからこんなタイトルのメールがきていた。 ”KIMURAさん、「旅行ロス」を感じてはいませんか?” 開いてみると、飛行機の写真が添えてあって、 ”旅行ロスの特効薬?それには新た
その人はいつも家族と一緒に買い物に来る。 190センチに届きそうな長身の旦那さんと、ひょろひょろとした息子さんと。 私は息子さんが小さい頃から見ていた。恥ずかしがってすぐにお母さんのかげに隠れてしまう男の子。今も面影がある。 息子さんの性格は旦那さん譲りとみえ、旦那さんはいつも静かに奥さんの数歩うしろを歩いている。 私が商店街に来てから10年はたつけど、見かける時はいつも3人一緒だ。 その人はいつも決まった店で買い物をする。 お肉屋さんにお魚屋さん。昔勤めていた店
借りて読んでみたら、予想以上に良かった本だったのでご紹介。 この本は、一汁一菜を見直すことを提案している。一汁一菜とは「ご飯、味噌汁、お漬物」を原点とする和食の型である。 この本の面白さは、一汁一菜から始まって、美意識や文化に深く触れていくところである。 こういう精神論も、味噌汁から語られるとすんなり読めるし、日本に伝わる思想について知る機会はあまりなくて、読んでみると乾いた土に水が染み込むような満足感があった。 本の中を読んで、二つ、印象に残ったことがある。 一つ