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エッセイ|2023-24 ふくしデザインゼミ

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八王子、伊豆大島、滋賀高島、長崎諫早の4つの地域にわかれて活動している23-24ゼミ生のレポートエッセイです。
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記事一覧

ふくしをひらいたその先の景色|大友裕也|2023-24 essay 15

残り香赤羽駅で別れを告げてから、もうひと月の時が過ぎ、私はこれまで通り、文字だけの春休みの中、今日も学生証を武器に大学の門をこじ開け、研究室のいつもの席に座る。 設計、査読修正、共同プロジェクト会議、、、昼夜問わず、ふくしの雰囲気を纏うことはほとんどない。 福祉という世界に対して、私はいわゆる余所者であった。 終電のメトロから降り、人のほとんどいない最寄り駅前の巨大ロータリーを眺めながら小一時間思考の整理をするのが、私にとって一日を終わらせる合図であり、最も幸福な時間だ。

「自分ごと」のそとに7人で|堀はぐみ|2023-24 essay 14

福祉をもっと知りたい!私はもともと、地域コミュニティの希薄化や孤独・孤立の問題に興味があった。大学2年生の夏にボランティアをしたコミュニティカフェ。スタッフさんや障害当事者のお客さんから話を聞くなかで、日本では障害を持つ方の権利が守られていない現状があることを知った。例えば日本は障害者権利条約に批准しているのに、精神障害者の強制入院に対して勧告がでるくらいその条約を守れていないことなど、どれも重大な話なのに私が知らないことばかりだった。人権には関心があったし意識が高いほうだ

うっかりしっかり体験記(後編)|永井煌|2023-24 essay 13

>>このエッセイは3部に分けて投稿しています!(前編)と(中編)から、ぜひ読んでみてください! ひらくためのデザイン「福祉に余白をつくりだす」ための具体的なアイディアを提案することになっている竹端ゼミ。本番の1週間前のオンライン中間発表会では、前半にここまでのゼミのプロセス、後半に「しっかり1.0→うっかり→しっかり2.0」を紹介した。 前半、こもちゃんの「しっかり」した発表は、わかりやすく、コンパクト。後半、「うっかり大臣」ことあっこちゃんの発表は、対照的。フィールドワ

うっかりしっかり体験記(中編)|永井煌|2023-24 essay 13

>>このエッセイは3部に分けて投稿しています!(前編)はこちらから。 やるべきことにしばられない「余白」1ヶ月ほどの準備を経て、私たちは2泊3日のフィールドワークへ向かった。ゼミ講師のひとり・小松理虔さんがキックオフに話していた、「五感をつかうこと」「何気ない小さな変化に気づくこと」を意識しながら臨む。 長崎に降り立ったとき、いつも生活しているまちとは違う空気を感じた。塩の香り。少し温かい風。ついにフィールドワークがはじまるんだなあ、と自然と身が引き締まる。 景色に注目

うっかりしっかり体験記(前編)|永井煌|2023-24 essay 13

難しそうなゼミに来てしまったなふくしデザインゼミが始まった!キックオフキャンプ2日目の午後、私が所属する竹端ゼミでは、これから2ヶ月間のゼミをどう進めていくか話し合っていた。 私たちはフィールドワークで、長崎の社会福祉法人南高愛隣会をたずねる。南高愛隣会では、事業や施設が大きくなるなかで、どうしても、地域の人や職員さん同士のつながりが希薄化している状況もあるのだという。また、福祉領域では最近、制度が充実してきたからこそ、枠にはまった仕事になって一人ひとりに向き合う時間が減っ

スタートラインに、やっと|佐藤佳弥|2023-24 essay 12

どうしよう、やばい、大学2年生が終わろうとしている。とりあえず何かしなくちゃ、という適当な理由で応募したふくしデザインゼミ。何をするかは、正直どうでもよかった。 そこで行われていたのは、「ふくし」というその時の私は無関心の題材についての「あなたはどう思いますか?」「これを踏まえて何を感じましたか?」という対話。意見を聞くだけでも自分の意見を言うだけでもダメ、という空間のなかで、私はとても焦っていた。 他のゼミ生は、自身の経験も重ねながら熱のこもった意見や考えを発言してい

「一歩」があるからひらかれるもの|横田亜弥佳|2023-24 essay 11【田中ゼミ・フィールドワーク】

ふくしをひらくレシピ集田中ゼミは「福祉拠点をまちにひらく」というテーマから始まりました。滋賀県・湖西地域の福祉の一端を担う社会福祉法人ゆたか会さんと一緒にゼミの活動を行っています。 オンラインでのゼミ生や職員さんどうしの交流が渦を巻き、活動が盛んになってきた田中ゼミ。フィールドワークに向けた準備として、「ふくしをひらくレシピ集」の作成を行いました。 (オンラインでの活動の様子は、こちら!) これは、フィールドワーク前の「ふくしをひらくレシピ集」。場をひらく方法や暮らしの

うっかりからの、「しっかり2.0」(後編)|大和田奈津|2023-24 essay 10 【竹端ゼミ・フィールドワーク】

こんにちは。ふくしデザインゼミの竹端先生のゼミで活動している大和田奈津(なっちゃん)です。竹端ゼミでは、「福祉に余白を造り出す」ことをテーマに長崎県諫早市の社会福祉法人・南高愛隣会に行って「余白」について考えています。 この記事は、先日長崎にフィールドワークをして感じたことをエッセイにしたもので、今回は後編をお送りします。 色んな感情、言葉に向き合った二日間の記録です。それでは、よろしくお願いします! ▽ 前編はこちら ▽ 朝からモヤモヤ2日目朝。新幹線開通に合わせて

うっかりからの、「しっかり2.0」(前編)|大和田奈津|2023-24 essay 10 【竹端ゼミ・フィールドワーク】

こんにちは。ふくしデザインゼミの竹端先生のゼミで活動している大和田奈津(なっちゃん)です。大学院で社会学の観点から地域コミュニティの研究をしながら、地元の役場で若者のまちづくりの仕事をしています。 竹端ゼミでは長崎・諫早にフィールドワークに行ってきました。前編、後編にわけて記録します。 生の充足と、しっかりと、うっかり竹端ゼミでは、職員さん、利用者さんと、人と人として出会い、「友だちのような関係」を築き、「会いたい人に会いに行くフィールドワーク」にするために、1か月間準備

ふくしをひらく糸口をさがして|大山健太|2023-24 essay 09 【小松ゼミ・フィールドワーク編】

はじめまして!大山健太と申します。 ふだんは大学で広告を学んでいます。 このエッセイでは、福祉とはあまり関係ないことを学んでいる私が、「ふくし」について思ったこと、福祉の外の人がどうやったら福祉に関われるのか考えたことを、言葉にしました。少しでも読んでいただけると嬉しいです。 0日目|福祉の話を聞きに行くフィールドワークの前々日から、小松ゼミは動き出した。 その日の午前中は八王子駅周辺を散策した。 八王子に住んで2年。大学に入るまで「八王子」という名前しか知らなかった私

荒波に揉まれ、ふくしに漂流してみて|叶谷凜生|2023-24 essay 08 【影山ゼミ・フィールドワーク】

どうも、かのちです。やっっと!やっと、このエッセイが書ききれそうな気がして。 ずっと逃げていました。大学の期末レポートだったら即落単ってぐらい締め切りを過ぎているけど、今更ながらどうしても書きたくなりました。影山ゼミへの気持ちが、自分の中で確かな言葉になりました。 「かのち!何があったんだ!」そう思うでしょう?今日は少しだけ、影山ゼミの軌跡をたどっていきたいと思います。 始まってしまった、影山ゼミ。私たちのテーマは「半福半X~地域と福祉をつなげる~」。キックオフキャンプ

歪みのなかにいる|Y.O.|2023-24 essay 07【小松ゼミ・フィールドワーク】

意識的にあれこれ動くのを止め、ふわふわと漂流するからこそ感じられることがある。 このエッセイは、「『ただ、いる』を浮遊しながら考える」をテーマにした小松ゼミの、東京・八王子でのフィールドワークの体験記です。前半では、写真を通して「ただ、いる」滞在の雰囲気を味わっていただけたらと思います。後半では、そのなかで考えたことを記してみています。 「ただ、いる」2日間1日目はまず、社会福祉法人武蔵野会が運営する「八王子福祉作業所」をおとずれました。集合した西八王子駅から施設までの

はじめてのモヤモヤ|林加津葉|2023-24 essay 06【田中ゼミ】

モヤモヤの幕開け1月に行われたキックオフキャンプ。私はすごく、モヤモヤしていた。 講義や対話をするうちに、「効率的に回るように管理された思考」から外れることの大切さや、わたしに刷り込まれていたいろいろなバイアスに気付かされた。 今までなら、なにかを進めるときは逆算して、「こうしてこう進めよう」とすぐに答えを出すようにしていたが、ふくしデザインゼミではその進め方は求められていなかった。 その状況に戸惑い、どんなふうに話を広げればいいのかわからず、モヤモヤしていた。 福祉

うっかり、受け止め、紡ぐ。|居城柚那|2023-24 essay 05

こころがやわらかくなる魔法のことば「うっかりする。」 1月のキックオフを終えて私の心に一番残ったのは、この言葉だった。それはたぶん、わたしにとって、とてつもなく苦手なことだからなんだと思う。 23年間の人生のかなりの部分が、「しっかりしなきゃ」という呪縛にとらわれていて、余白と呼べるものは少なかった気がする。物事を前に進めることはできても、無理をしているので自分にとってはしんどい。おまけに余裕はまったくなくて人との距離も詰められない。そんな自分に辟易する。 だからこそ、