農家さんのお話~農業と地球温暖化~
こんにちは。広報担当です!
先日、私たちのパートナーである農家さんの畑にお邪魔しました。
お邪魔した畑は、福岡県久留米市荒木町にあり、現在4名の方が働かれています。今回貴重なお話を聞かせてくださったのは、大石さんと塚本さんです。
お二人が働かれている畑では、「自然農法と不耕起栽培」という農法を取り入れています。大石さんと塚本さんは、なぜ「自然農法と不耕起栽培」をはじめたのか、農家と地球温暖化との繋がりについて今日はお話したいと思います。
「自然農法」と「不耕起栽培」とは
まず、「自然農法」とは、肥料や農薬には頼らず植物と土の本来持つ力を引き出す農法です。そして、「不耕起栽培」とは、農地を耕さずに作物を栽培する農法のことです。田畑を耕す工程を省略したり、作物を刈った後の株や“わら”などを廃棄せず、そのまま田畑の表面に残して利用するのです。この2つ農法には、メリットとデメリットがあります。
【メリット】
①農地を耕す労力を減らすことができる。
②農作物が強く育つ。
③土壌改善が見込める。
④燃料や農薬等が必要ない。
【デメリット】
①病気やもぐら等の被害が発生する。
②農法が適さない野菜は育たない。
③天候に味が左右される。
④広い農地では、除草作業等の労力が増える。
一見、耕さない農業と聞くと農家さんの負担が減り楽になるのでは?と思われますが、今までトラクターで行っていた除草作業や苗植えを手作業で行う手間や一からこの農法で農作物を育て上げるには何年もの年月がかかるなど、簡単に実現できるものではありません。それなのに、なぜ、大石さんや塚本さんは、この農法にこだわるのでしょうか?
「自然農法・不耕起栽培」を始めたきっかけ
大石さん:日本は戦後、人口増加に伴い食糧を大量生産する必要がありました。そのため、農家は必死に農地を耕し、肥料を撒き、消費者が求める「きれいな見た目と規格に合った形、安定した味」の農作物を多く出荷する必要があったです。近年、日本の食糧は飽和状態にあるものの、規格外の農作物や多くの売れ残った農作物は廃棄されています。また、地球環境は変化しており、その一つが異常気象です。福岡県筑後地区ではここ数年、毎年豪雨災害に見舞われています。元々私たちの畑は水はけが良い方ではないので、畑は何日も水に浸かり、大切に育ててきた農作物を腐らせてしまったり、規格外の大きさにしか育たたず今までのように出荷できなくなってしまいました。
どうするべきか、悩んだ末、行き着いたのが「自然農法・不耕起栽培」です。トラクターを使用しないことでCO2削減でき、それは異常気象を引き起こしている地球温暖化対策になると考えました。また、今まで当たり前に耕していたことが、耕すことでこれまでの根が作った水の通り道や土壌の骨格が崩れ、そこに大雨が降ると土壌がつぶれ水が流れず詰まってしまうという悪循環を招いていることに気づいたのです。不耕起栽培をすることで、何年もかけ土壌を少しずつ改善させ、自然本来が持っている力を最大限に発揮させることができる。その一方で、農作物も水分や栄養を得ようと下に下にと根っこを伸ばし強く育つようになったのです。
「自然農法・不耕起栽培」の普及
大石さん:「自然農法・不耕起栽培」は、農作物の味や見た目が天候に大きく左右されます。そのため、スーパー等へ出荷するための規格に合わなくなることがあります。また、多数派の消費者が持っている農作物への価値観(きれいな野菜がいいもの・安定した味わいの野菜がいいもの等)に合わない農作物となることもあります。そういったリスクや現状のやり方を変えることへの不安があるため、この農法に魅力を感じていても、すぐに飛びつけない農家が多いのです。
塚本さん:スーパー等へ出荷しようとすると、多数派の消費者の価値観(きれいな野菜がいいもの・安定した味わいの野菜がいいもの等)に合わせて販売する必要があるため、従来の農法で栽培することになります。また、元々水はけのよい畑の農家は、従来の農法の方が効率的な生産につながるため、なかなか踏み出せないこともあるかと思います。
自然が相手の職業であり、規格外等の農作物ができた時のリスクは農家がおっているため、なかなか新しいことに挑戦するのも難しいのだと思います。
私たちだけが取り組んでもすぐに何かが変わるとは思っていません。でも、取り組まないといけないんです!
「農作物を安定的に生産する」という使命を果たすべく、多くの農家が従来の農法で取り組んできました。しかし、時代と共に、地球環境の変化や一部ではあるものの「いい農作物」の概念が多様化してきているのです。一方で、別の農法に魅力を感じても現状を変える不安から、従来の農法で栽培を続ける農家が多いのも現状のようです。
農作物の価値と価格
これまでの日本の市場では、農作物が不作の時期には価格が高騰し、豊作になると価格が暴落しています。よくニュースや新聞で「大雨被害による不作で野菜高騰」なんていう記事を見かけますよね。でも、これってよくよく考えると不思議な現象な気がします。大雨被害によって農作物が不作だったということは、多くの消費者の価値観でいう「きれいで甘くて美味しい野菜」がなかなか採れなかったということです。一方、豊作だったということは、「太陽をたくさん浴びて栄養たっぷりな美味しい野菜」が採れたということです。つまり、多くの消費者のニーズに合わない農作物ほど高く売れる、なんだか不思議だなと思うのは私たちだけでしょうか。
大石さん:現在、多くの農家で価格競争が起きていると感じます。隣の畑よりも1円でも安く価格を設定しようとします。それは、同じ見た目の野菜なら安い方がいいという価値観が存在するからです。
海外では、「日本の農作物はプラスチックだ」と揶揄されています。それは、スーパーに並んでいる野菜や果物が全て同じように見えるからだそうです。きれいな見た目を保つため農薬を使用し育て、規格内のものだけ出荷する、それがいい野菜だという多数派の価値観が存在するからだと思います。しかし、本来、土も違えば作り手も違う。その年その年で天候も違うため、同じような農作物はできないはずなんです。
塚本さん:私たちが「自然農法・不耕起栽培」で作った野菜は、”やさい畑”シールを貼って無人販売所「やさい畑」やJA直売コーナー等で販売しています。無人販売所「やさい畑」は2年前から始めたのですが、ありがたいことに今では多くのリピーターがついてくださっています。それは、直販で安いからではありません。私たちは他の農家の様に価格を競うことはなく、安定した価格で販売します。それは、自分たちの農作物にそれだけの価値があるからです。そして、そのブランド化の一環として、”やさい畑”シールを貼っています。
大石さん:私たちの農作物を購入されるお客さまの中には、「このキャベツ、虫食いがないじゃないか!農薬を使っているんじゃないの?」とご指摘される方もいらっしゃいます。もちろん、たまたまきれいなキャベツだったのですが…(笑)
「このトマトは酸味があって、さっぱりしてて美味しいね。」
「このキャベツは虫食いがあるから、農薬をつかってないんだね。こどもが食べるには安心だね。」
”トマトは赤くて甘くないといけない”、”キャベツは重くてきれいじゃないといけない”ではなく、それぞれの野菜がもつ見た目の違いや味の違いを楽しむという価値観をもっとたくさんの消費者に持ってほしいのです。
これからの農業
大石さん:農作物は消耗品ではなく”命”です。そのことを消費者にわかってもらいたいと思っています。最近では、シェア農業をされる方もいらっしゃるようですが、そうやって自分で育てた野菜を食べてそのことを再認識してもらうこともできると思います。
そのためにも、現代の「見た目がきれいで、採れたてで、あまい野菜がいい野菜」という価値観だけでなく、多様な価値観を認めていく必要があると思いますし、そのためには農家が積極的にアピールしていく必要があると思っています。
塚本さん:消費者の価値観を変えることは、農家だけでは難しいと思っています。例えば、福岡ソノリクのような保管技術を持つ会社がその技術を活かして長期保管してもらえると、農作物が安定的に供給され価格も安定するのではないでしょうか。そうやっていろいろな方々と一緒になって、今後の農業界を変えていく必要があると思います。
私たちが取り組んでいる「農作物劇場」にて、私たちと農家のみなさん、そして様々な技術を持つプロのみなさんと一緒になって、「見た目がきれいで、採れたてで、安定した味わいの野菜がいい野菜」という価値観だけでなく、野菜本来の魅力を楽しむという価値観を共有していけたらと考えています!
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