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ショートショート / 詩

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🎖️ ピリカグランプリ すまスパ賞|ショートショート|誰モガ・フィンガー・オン・ユア・トリガー

「私がピストルの引金を引くのは上司に頼まれたからなの。決して私自身が好き好んでではなく……」と彼女は呟き、静かに水を飲んだ。 「それが役割ですから」と僕は返したが、自分でも気の利かない発言だなと思いゲンナリした。それで慌てて付け加えた。「あなたのおかげで、静止した世界が動き出すんです。その先には喜びも悲しみもあるけれど、それはあなたのせいじゃない。まずは誇りを持たないと」  彼女と僕は仕事仲間だ。だから彼女の苦悩も分かるつもり。上からの指示をこなす日々に嫌気がさすこともある

🎖️ ヤマハ発動機 HATSUDO 〈夏、トキメキが発動した瞬間〉 入選|詩|入道雲にはもう手が届かない

たぶんあの時、小4で夏真っ盛り 町民プールへと続く坂道を汗だくで上っていたら、先に上りきった入道雲が頂上から応援してくれた 20年経ったあの場所、入道雲はどこかへ、木々が伸びて空の形も違っている でも悪い気はしなかった

ショートショート|ドアの向こうの季節

 俺は部屋のドアを開き、そのまま押さえ、紳士みたいにまず後輩を室内に入れてやった。この彼とは大学のバドミントン部で交流がある。ちなみにダブルスも組んでいて、俺は前衛で彼は後衛。あんまり強くはない。  いきなり彼は文句を言った。 「うわあ、この部屋暑いですね」  俺は後ろから、自覚できるほどの素っ気なさで返事する。 「そうかい」 「クーラーが見当たりませんが、ぜひ欲しいところですよ」 「バカ言え」と俺は異を唱えた。「お前に文句を言われようと、俺はいつもこの部屋で日々の疲れを癒し

ショートショート|氷の上にある計画

「100万ドルの夜景」なんてロマンチックに表現したりもするが、その光は残業をしているオフィスの灯りだったりする。現実は非情。  しかしなぜ僕が属している開発部はこんなに残業が多いのか。ワークライフバランスも何もありゃしない。  今まさに1人で残業中の僕は心の中でそう愚痴りながら、眠気覚ましに淹れたコーヒーを片手にデスクに戻った。すると、そこには僕の椅子に登ろうとピョンピョン跳ねているペンギンがいた。僕はコーヒーカップを床に落としそうになった。 「あ、こちらにいらっしゃったん

🎖️ note編集部のマガジンにピックアップされました

少し前の話ですが、こちらのショートショート『ハロー・グッバイ・ハロー・グッバイ』がnote編集部のマガジンにピックアップされました

二義文|はやくあくからすくわなくては

はやくあくからすくわなくては 〈1〉早く悪から救わなくては 善良な市民を助けるのがヒーローの使命 〈2〉早く灰汁から掬わなくては 食べたいと逸る気持ちを抑えて大事な一手間

40字小説|荒れ模様

「止まない雨はない」 「名言ですが気象予報士がそれでは困ります」  気象庁も荒れ模様。

最後の1行小説|狂い咲き

 その死は、あたかも季節外れの開花——すなわち狂い咲きのようであったが、美しいことに変わりはなかった。

140字小説|涙のホームラン

 ボールは美しい放物線を描き、これまた馬鹿正直な重力によって盆栽に直撃した。歓喜のホームランのはずが、違う意味で涙ぐむバッターの子。 「怒っていないよ。本当さ」とお爺さんはボールを返して笑った。「広い公園を用意できない大人にも責任はあるんだ。だからせめて広い心を持たんとな」

100字小説|約束、果たせず

 僕らが幼稚園児の頃、妻は言った。「いつか結婚してあげる。約束するよ」  そして今「離婚しましょう」と妻は告げた。「昔あなたは『ヒーローになって地球の平和を守る!』と誓ったわ。でも約束を果たせないみたいね」

ショートショート|ほんの少しの希望があれば充分です

「蝶や鳥なんか見てるとさ、飛べるのって残酷だと思わない? 人間には羽がなくてむしろよかったかもしれないね」 「そう? 空を舞うのって素敵だと思うけどな」 「だって、歩くことが心底億劫になるだろうから……。私たちは本質的に満足ができない生物なんだよ、たぶん」    竜巻のように突然ですが、僕のこれまでの――大した長さではなく残念ながら貴重でもない――生涯について語らせていただければと思います。それでも、すべてを話すとあまりに冗長ですからトピックを厳選します。聴くのに料金はとりま

🎖️ note編集部 ピックアップ|ショートショート|ハロー・グッバイ・ハロー・グッバイ

 走ること自体も楽しいが、走りながら黙々と自分の世界に浸るのがより好きかもしれない。……ちょっと大人ぶってるかな。僕は中学生で陸上部に所属している。専門は長距離走だ。  朝の澄んだ空気の中で行う自主練は至福だ。世界を独り占めしたかのよう。走るのはいつもこの砂浜。2つ理由がある。  1つは、砂に足をとられて走りにくいため、むしろこれが良い負荷になって、脚力を鍛えるのにピッタリだから。アスリートもこのトレーニングは採用しているらしく、模倣するだけでなんだか僕も一流になった気分。

改題|ショートショート|朋友よ、読んでくれてありがとう

改題 『友よ、読んでくれてありがとう』 ↓ 『朋友よ、読んでくれてありがとう』 \本篇/

プロフィール

2024年11月19日 追記:Amazonのアソシエイトとして、福永諒は適格販売により収入を得ています。 プロフィール 福永 諒と申します 1994年、長崎県生まれです 2017年、大学を卒業しました (宮崎大学教育文化学部1年 + 同志社大学社会学部3年 の合計4年でちょっとややこしいです) 2018年1月にショートショートを書き始め、同年9月にサイトを作成し、そのショートショートを公開し始めました (ちなみに下記の通り、現在このサイトは『短編漫画ソサエティ』と題し