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本紹介『STATUS AND CULTURE』『オトナのひとり住まい』『イタリアのブルータリズム建築』
下記の記事をつらつらと書いていたら力尽きてしまい、昨日は更新できませんでした。今回は軽めに。興味のある方は下記の記事もどうぞ。
『STATUS AND CULTURE——文化をかたちづくる〈ステイタス〉の力学 感性・慣習・流行はいかに生まれるか?』デーヴィッド・マークス 著、黒木章人 訳
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人はなぜこぞって同じものを好むようになるのか。なぜ流行が生まれるのか 本書はトレンドを「ステイタス」という切り口から分析する
こちらは読書記録noteを書いているので、興味のある方はそちらを。ある物事が当たり前になってしまうと、その背景に思いを巡らせるのは難しくなります。近々の話題として、バレンタインはマーケティング的な側面から定着したものですが、そもそもチョコレートもニッチな食べ物だったとか。
そんなに多くの人が知らなかったある文化があっという間に広まっていく。人間が生み出す文化の不思議さは、そうしたものが生み出されるものと同じくらい、それが広まっていく過程も謎めいている。
思ってもみなかったきっかけで世界中に認知されるものもあるし、かつてはニッチだったものが当たり前のように扱われる例だってある。例えば「チョコレートはもともとはコロンブス以前のメキシコのアラスカ王国では、王族と戦士たちだけの"飲み物"だった。」(312頁)という
そうした流行り廃りのメカニズムを知りたい人にはおすすめです。
『オトナのひとり住まい』アートアンドクラフト
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直近の国勢調査によれば、次第に数を増やしつつある単身世帯。にも関わらずひとり住まいにマッチした住宅は少ない……
本書はそんな貴重なひとり住まいの実例やエピソードを数多く掲載する。リノベーション設計施工等を手掛ける企業により編まれた書籍。
単身世帯がのびのびと住むためにつくられた住まいはそれほど多くないそうです。考えてみると「ファミリータイプ」という形式はよく聞きますが、ひとり暮らし向けは、どちらかというと学生や社会人なりたての若者が住む最低限の住まいを想像します。
これは戦後、日本が「核家族」を前提として、住まいを供給するために制度が整えられ、それに合わせて市場が動いた結果でしょう。本書には様々なエピソードが収められていますが、現代の日本はもはやそうした前提は取り除かなければならない時代になっていると感じます。そうすることで、住まいにも多様性が生まれると考えると、面白い風景が生まれそうだと思います。
『イタリアのブルータリズム建築』ロベルト・コンテ、ステファノ・ペレゴ 編・写真 石田亜矢子 訳
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ミラノにあるBBPRのトーレ・ヴェラスカを始め、イタリアにはコンクリートによる豊かな建築文化が存在している。本書はイタリア各地のブルータリズム建築を写真に収め、紹介する。
本書の冒頭でのエイドリアン・フォーティーの論考が興味深いです。フォーティーと言えば『メディアとしてのコンクリート 土・政治・記憶・労働・写真』で、近代からのコンクリートに込められた意匠・文化的な価値を色々な視点から論じています。
本書の対象が「ブルータリズム建築」であるように、イタリアの建築においてコンクリートに思いが託されていたことを記しています。
特定の時間を象徴するものではなく、現在(あるいは未来)と過去を同時に表現できる素材としてコンクリートを正当に評価しよう。そしてイタリアの建築は世界において傑出していることを認識しよう──この思いがイタリアの建築家たちを突き動かしていた。
20世紀においてコンクリートは常に未来志向の素材とみなされていた。これからやってくる時代を予兆する素材とされ、それまでも使用されていたのにその過去を打ち消されていた。しかし第二次世界大戦後、イタリアの建築家たちは未来だけではなく過去も表現したいと切望するようになる。彼らはファシズムとは距離を置きつつ、ファシズム期に繫栄し、政権の支援を得ていたモダニズム建築は否定せずに折り合いをつけようとしたのだ。ファシズムに汚染されていない他のモダニズムも存在したことを明示しようと、彼らはファシズム以前の過去を手繰り寄せていく。
イタリアの建築家と言えばアルド・ロッシ。以前、読書記録を書いた『アルド・ロッシ 記憶の幾何学』でも、BBPRのようなイタリアの建築界の動向とロッシがどのように関係していたかが書かれいていたと思うので、合わせて読んでも面白そうです。
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