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お題:レトルト三角関係 「あんな女より、私の方がいいでしょ?」 そう言ってキスに耽り始めた男女を横目に、ぎゅっと鞄の持ち手を握る。「酷い」と呟き、足早にドアへ。ばたんと大きく音を立てて部屋を出れば、ふーっと肩を力を抜き、鞄から手鏡を取り出して髪とメイクを確認しながら自己採点。 「うーん、まあ……87点ってとこかな」 ぎらぎらとネオンの眩しいホテルから出ると、いつもの送迎の車が目に入る。何も言わずに後部座席に乗り込んで、欠伸をひとつ。運転席から、「お疲れ様です」の一
一切の発電が不可能になった20xx年。 一部の人間が、電化製品や必要な電気に関するあらゆる能力を手にすることになった。 人間の新しい進化の形である。 そして、ある男、三代という男が避雷針の能力を手にした。 雷が落ちれば全てこの男に集まる。 まさに、歩く避雷針。 三代の仕事は、自身の体に溜まった少しの電力を、いろいろなところに供給するために、日々歩き回るというものであった。 三代の人気は凄まじく、一部の地域では神と崇められている。 そんなこの男にも悩みはある。 雷が落ちる時に人
「離婚届はどこでもらえますか?」 離婚届の所在を探すことになるなんて、人生は分からないものだ。それは所得証明や戸籍謄本などの申請書が並べられている台には見当たらなくて、女性職員にまた尋ねた。 「こちらです」 彼女はさっき所得証明申請書の置き場所を教えてくれたときと一ミリも変わらない表情で、離婚届の場所も素早く教えてくれた。いや、もしかしたら彼女の表情は数ミリくらい動いていたかもしれない。冷静なつもりの自分がほんの少し動揺していて、その表情の変化を見落とした可能性がある。
(公園のベンチで深刻な表情をしてる青年が座っている。) 青年 語り・もう会社には行かない。いいんだそれで。自分が行ったところで誰かの役に立つわけじゃない。変わりはいくらでもいる。 (携帯の振動が止まらない。) 青年 語り・この振動も少ししたら止まる。知ってる。無断で休んだ相手に連絡を入れる業務を淡々とこなしていることも。 (携帯の振動が止まる。) 青年 語り・ほら。自分なんて誰も必要としていない。必要してるふりをみんながしてるだけで、自分なんて誰も。 (青年の目か
日沈み、地下出(いず)る国の反体制機関紙『スキゾちゃんぽん』第四号 ※本機関紙を手に入れたラッキーなあなたへ。末尾にあるQRコードを読み込めば、次号以降の配布予定箇所がわかります。しかし! 弾圧回避のため大概場所が変わります。・「元先生」が死んだ目の学生たちに語るサバイバル術 「本当、どいつもこいつもしけた顔してるよな~。諦めがくっきり顔に現れてるわ。おっと、ここから離れようとしても無駄だぞ。扉は開かない」 隙間なく生徒が座っている大講義室。天井も高く広々としていて