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#ショートストーリー

【毎週ショートショートnote】レトルト三角関係

お題:レトルト三角関係 「あんな女より、私の方がいいでしょ?」  そう言ってキスに耽り始めた男女を横目に、ぎゅっと鞄の持ち手を握る。「酷い」と呟き、足早にドアへ。ばたんと大きく音を立てて部屋を出れば、ふーっと肩を力を抜き、鞄から手鏡を取り出して髪とメイクを確認しながら自己採点。 「うーん、まあ……87点ってとこかな」  ぎらぎらとネオンの眩しいホテルから出ると、いつもの送迎の車が目に入る。何も言わずに後部座席に乗り込んで、欠伸をひとつ。運転席から、「お疲れ様です」の一

避雷針人間

一切の発電が不可能になった20xx年。 一部の人間が、電化製品や必要な電気に関するあらゆる能力を手にすることになった。 人間の新しい進化の形である。 そして、ある男、三代という男が避雷針の能力を手にした。 雷が落ちれば全てこの男に集まる。 まさに、歩く避雷針。 三代の仕事は、自身の体に溜まった少しの電力を、いろいろなところに供給するために、日々歩き回るというものであった。 三代の人気は凄まじく、一部の地域では神と崇められている。 そんなこの男にも悩みはある。 雷が落ちる時に人

「涙」

(公園のベンチで深刻な表情をしてる青年が座っている。) 青年 語り・もう会社には行かない。いいんだそれで。自分が行ったところで誰かの役に立つわけじゃない。変わりはいくらでもいる。 (携帯の振動が止まらない。) 青年 語り・この振動も少ししたら止まる。知ってる。無断で休んだ相手に連絡を入れる業務を淡々とこなしていることも。 (携帯の振動が止まる。) 青年 語り・ほら。自分なんて誰も必要としていない。必要してるふりをみんながしてるだけで、自分なんて誰も。 (青年の目か

ふたりの記憶

「それ、押し花?」 読まなくなった本を片づけてほしいと母に頼まれ、久しぶりに帰省した。 ほんの少しの時間があれば、いつでもページをめくっていた母の姿を、わたしはそっと思い出す。 歳と共に目が悪くなっていった母は、本を読まなくなってどのくらい経つだろう。 欲しい本があれば、好きなだけあげるという母の言葉に甘えて、本棚から何冊かを選ぶ。 母のにおいが残ってる本をぺらぺらとめくっていると、一枚の紙がはらはらと足もとに落ちた。 色褪せた紙のまんなかには、赤い花びらが数枚、きれいに