「うつ病九段」は「アル中病棟」のように面白い。
「うつ病九段」はプロ棋士の先崎学が書いた、うつ病からの回復記だ。
「いったいに、本書の内容のようなことは、はじまりの日を具体的に記すことは難しいのだろうが、私ははっきりとその日を書くことができる。それがはじまったのは、六月二十三日のことだった。」
という冒頭から始まる。病状は深く、著者はやがて精神科に入院する。
うつ病の治療には何年もかかるものという固定観念を持っていた私には驚異的な速さで著者は回復していく。先崎九段が自分でも回復期になったと感じた頃(翌年の一月)から、この手記を書き始め、四月には脱稿したという。六月にはプロ棋士としても復帰した。著者は将棋がうつ病を治したと言っている。
文章は素晴らしくうまくてわかりやすく、内容は深刻なのだが軽く読めてしまう。うつエンタテインメントといってもいいくらいである。まるで吾妻ひでおの「アル中病棟」を読んだときのような面白さだった。
うつの人は読んでみるといいと思う。私が #444文字 を始めようと思ったのも、この本の影響が大きい。
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