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太宰の時間ですよ!

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太宰治生誕110年を記念して、2019年6月19日から2020年6月19日まで、太宰治を「接続装置=メディア」としたつぶやきをアーカイブしていきます!
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映画「人間失格 太宰治と3人の女たち」レビュー

映画「人間失格 太宰治と3人の女たち」レビュー

大量の絢爛な花、花、花。赤や青の独特な美学を纏った蜷川カラー。妖艶な3人の女優によるしたたかな怪演。祭り太鼓の鼓動のような重低音からラストの意表を突いた東京スカパラダイスオーケストラの踊りたくなる裏打ちビート。ワンシーンごと切り出せば、作品になってしまいそうなアーティステックな構図。そんな、さまざまに仕掛けられた映画を観た後は、間違いなく夢でうなされるだろうと確信した。

過去に私は、映画を観たあ

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本とごはんと実験ちゃん   【太宰治「女生徒」ロココ料理編】

本とごはんと実験ちゃん   【太宰治「女生徒」ロココ料理編】

◆太宰治 『女生徒』
1938年(昭和13年)9月に女性読者の有明淑(ありあけしず)(当時19歳)から太宰のもとに送付された日記を題材に、女生徒が朝起床してから夜就寝するまでの一日を主人公の独白体で綴られた短編小説。作品の中の一文、「キウリの青さから夏がくる」は有名。『走れメロス』新潮文庫他、収録。

「ロココ料理」である。北村薫さんは小説『太宰治の辞書』(新潮社) の中で「このロココ料理のために

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走れよメロス! 〜付け馬事件あるいは熱海事件簿〜

走れよメロス! 〜付け馬事件あるいは熱海事件簿〜

熱海の太宰治事件現場からホンノクロコがお伝えします! 

☆☆☆

梅雨曇りの7月、わたくしは、多くの文豪に愛された近代建築の起雲閣を訪ねました。1948年(昭和23年)、太宰治が『人間失格』を執筆した元旅館としても有名な建物です。現在の起雲閣には、旅館に泊まった作家たちの資料が展示されているのですが、そのキャプションの中に1936年(昭和11年)の「付け馬事件」がしっかりと明記されていました。(

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海をみたかい ?

海をみたかい ?

「東京の三鷹の家にいた頃は、毎日のように近所に爆弾が落ちて、私は死んだってかまわないが、しかしこの子の頭上に爆弾が落ちたら、この子はとうとう、海というものを一度も見ずに死んでしまうのだと思うと、つらい気がした。」

そのような冒頭で始まる太宰治の短編『海』が沁みる。たった5分で読み切れるテキストだが、何度読んでもぐっとくる。

戦争末期になると、日本の本土空襲は激しくなり、明日は我が身かもしれない

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七夕さまと太宰

「七夕の日に雨が降ったら、織姫と彦星は会えなくて可哀そうですよね」と、好きなひとに手紙を出したことがある。すると意中のひとは「星のある場所は雲の上だから、地上に雨が降っていたとしても関係なくふたりは会えると思っています」と返事を来くれて、ますます惚れてしまった。男のひとはロマンチストだと思った。

では、我らが、太宰治さんはどうでしょう。

「バカノ果。コヨヒ、七夕祭。 治。」

この句は、昭和1

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フォスの時間

フォスの時間

「フォスフォレッセンス、フォスフォレッセンス、フォスフォレッセンス」すらすら言える。

「フォスフォレッセンス、フォスフォレッセンス、フォスフォレッセンス」何度だって、私はすらすら言える。ちょっと得意な気持ちである。



初めて東京三鷹にある「古本カフェ・フォスフォレッセンス」を訪ねたとき、店への行き方を道行く人に何度も聞いた。しかし、「フォスフォレッセンス」とすらすら出て来なくて、「フォスな

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拝啓。太宰治さま、

拝啓。太宰治さま、

 2019年6月19日は、あなた様の生誕110年となるのですね。おめでとうございます。昭和は遠くになりにけり、明日は奇しくも令和最初の桜桃忌になりますね。さて、三鷹の墓前に馳せ参じようと思っているのですが、お祝いは何を持って会いにいけばよろしいでしょうか。110年という節目ですから、何か特別なものをと考えているのですが皆目見当がつきません。

 マナーブックを見ていたら、110歳は「珍寿」「椿珍」

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