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中途入社社員の処遇
先日の投稿では、人事・人材マネジメントに関する各社の実情を意見交換しながら、ヒト資源の活用方法について考える「人事研鑽会」で出された問いについて考えました。今日も、その会の中で出てきたことをテーマにしてみます。
ご参加者の中から、次のような問いかけがありました。
「他社では中途入社社員の給与をどのように決めているのか。自社では、能力・実績が近いと思われる社員と同様の給与を当てはめるのが基本的な考え方だが、都度判断に迷う。また、当てはめた結果の金額を提示すると、候補者の希望を下回り辞退されることもある。」
これについては、自社の等級制度に準じるのが基本的な対応と言えます。
自社の等級制度が定める社員等級のうち、どの等級に該当する採用なのかを明確にしたうえで、その等級に相応の処遇をしていくということです。
その基本対応に加えて、同会での意見交換内容も参考にすると、次のようなバリエーションも考えられます。
・中途入社する人材の現(前)勤務先での処遇水準も意識した上で、どの等級に該当するかを判断し、その等級で規定されている給与レンジのどこかに位置付ける。
・「1年後」や「3年後」など時期を設定しておく。当てはめた等級が的確か、見直しが必要かを、その時期が来たら判断する。
・適切だと判断される等級に当てはめるだけでは給与が不十分な場合は、「職能手当」や「調整手当」などを加算して給与を決めるやり方もある。見直し期間後は、その人材がそれらを支給するに妥当だと判断されればそのまま支払い続ける、または上位の等級に格付けし直して処遇を維持した上でそれら手当を外す。妥当でないと判断されれば、適用する等級はそのままにするものの加算していた手当を外す(実質的な給与減額)。
・そうした対応を適用しても処遇できない特殊人材や高度な専門家(例:AI研究者、社内弁護士など)については、個別処遇する。
また、労働市場の相場が上がってしまい、既存人材に適用している給与テーブル等の制度をどのように工夫しても採用に合わない場合は、給与テーブル自体を変更する(ベースアップ)必要があると言えます。労働市場から乖離したテーブルのままだと、既存人材も他社に流出しかねません。物価や経済は停滞していますが、職種によっては人材難で労働市場での賃金相場が上がっている求人があります。普段私がかかわる企業でも、長年給与テーブルを見直していない会社も多いです。外部の労働市場の水準とずれがないか、確認してみるとよいでしょう。
等級制度自体がまだ自社に存在しない場合は、仕組み化する必要もあります。そのうえで、等級制度を仕組み化すると言っても、従来の学卒新人~部門長の「ジェネラリスト1ライン」による等級区分のみで十分かは、自社のあるべき姿によります。ビジネスモデルと会社の理念から1ライン設定が有効な場合もあります。一方で、より多様な人材の活用や社員によっては強み領域に特化した活動に専念してもらうことを仕組みで後押ししたい場合は、ラインを複線化する必要も出てきます。
例えば、2017年時点の労務行政研究所の調べでは、専門職コースを設置する複線型人事管理制度を運用している企業は、全体の45.3%の割合となっています。2021年時点ではもう少し進んでいることも想定されますが、多くの企業では未導入のようです。
人事制度の複線化は、コストが増える、評価が複雑になる、導入によってかえってパフォーマンス低下や公平感の低下をもたらす可能性があるなど、相応のデメリットもありますのでよく検討が必要です。
そのうえで、複線化が必要だと判断される企業においては、「100人いたら100通りの働き方」を標榜するサイボウズの人事制度まではいかないとしても、専門職ラインや限定職ラインの仕組み化などが検討に値するでしょう。
<まとめ>
中途入社社員には既存の処遇ルールを適用して採用するものの、個別対応が前提となることも多い。