経営人材の育成を考える
2月23日の日経新聞で「経営人材育成、早期・計画的に」という記事が掲載されました。経営人材育成は、すべての企業にとって大きな課題です。同記事の一部を抜粋してみます。
~~長年日本企業の行動そして業績が大きく変わらなかった理由の一つとして、経営者の育成・選任が挙げられるのではないだろうか。適切な経営者の選任は企業統治、特に取締役会の最も重要な役割とされている。
米国では経営者の姿が時代とともに変化している。ピーター・カペリ米ペンシルベニア大教授らは1980年と2001年の米誌フォーチュンが選ぶ大企業100社「フォーチュン100」の経営者を比較し、若年化や最初の就職から経営職に就くまでの期間の短期化を報告している。カロラ・フリードマン米ノースウエスタン大教授は1935年から2003年までの経営者の変化を検証し、1970年代中ごろから生え抜きの経営者が減り、経営人材の会社間移動が増えたこと、経営学修士号(MBA)の学位を取得した経営者が増え始めたことを示した。
経営者属性の変化の理由として情報技術や経営管理手法の進歩、企業の巨大化、事業のグローバル化、多角化に伴い、経営者に求められる経営能力が特定の企業だけで通用する企業特殊的なものから、どの企業でも通用する一般的なものに移ったことを指摘している。
しかし日本企業の社長のキャリアパスはこの30年間大きくは変化していなかった。
かねて日本企業特有の遅い昇進は、リーダーの形成に不利であることが指摘されていた。社長就任者の昇進は他の社員と比べて特段早くなく、またこの30年間に早まってもいない。平均的に内部昇進の社長は入社から部長昇進までに約22年を要し、46歳ごろに部長職に就いている。これは一般的な部長昇進年齢とほぼ同じだ。そして入社から部長昇進、部長から役員昇進までの期間はむしろ長期化の傾向がみられる。
この30年で日本企業を取り巻く環境は大きく変化した。これに比して経営者の変化が緩慢なことが、低業績が続く原因の一つではないだろうか。ほかに適切な候補者がいるのに選任されていないなら取締役会の問題であり、さらなる社外取締役増員など外部ガバナンスを強化する必要がある。だがこれは選任よりも育成の問題ではないだろうか。
日本企業では経営者のポジションが究極の報酬となっている側面がある。そのため早い段階から一部の者だけを経営幹部候補として扱うと、社員のモチベーションが損なわれるとされてきた。しかしこの方法は潜在的な経営幹部候補のモチベーションを損ねている。そして何よりも経営者の重要性、特性を軽視している。
経営者は企業の浮沈を左右する存在であり、経営の不確実性が増す中で重要性は増している。そして経営者は企業経営に関する幅広い知識と経験を必要とするれっきとした専門職だ。日本企業で経営人材育成を進めるには、まずこのことを認識する必要があろう。~~
記事全体として、「入社後長い年月をかけて社長に内部昇格していく日本企業の慣習が、この30年間で全く変わっていない。経営者教育の停滞が日本企業の業績停滞の大きな一因ではないか。」という内容に見受けられます。
入社後長期間かけて社長になるパターンが必ずしも悪いわけではないでしょう。結果的にそうなることもあり得ます。一方で、経営幹部候補を早期に見出し、優先的に教育投資すること自体は、確かにもっとあってよいと言えるでしょう。
先日のテーマ「最新学習歴を更新する」では、日本企業の一般的な傾向として、経営者教育にかける投資が限定的であることに触れました。経営幹部対象の教育に対する考え方と投資額について、見直す余地は大きいと言えます。
https://note.com/fujimotomasao/n/nb8bc9d3d5f3f
私の所属先の小宮コンサルタンツにおいても、経営者教育には力を入れています。社長の後継者候補を集めて少人数で行う「後継者ゼミナール」は、その典型的なプログラムとなっています(私も登壇予定です)。4月開講を予定していますので、ご関心ある方は参考になさってください。
第17期 後継者ゼミナール~事業継承者の「心・技・体」を鍛える
https://www.komcon.co.jp/services/seminar/1831/
日 時:2021年4月15日(木)~2022年2月19日(土)
定 員:10名程度 ※より充実した内容とするため、限定数にて行います
会 場:小宮コンサルタンツ セミナールーム(東京・麹町) 他(合宿研修あり)
対象者:事業継承者、経営幹部
期 間:2021年4月15日~2022年2月19日
3日間/月 × 全12回(ただし、第7回はオプション参加)
<まとめ>
経営人材の育成方法には、再考の余地がある。