130泊のヨーロッパ長期旅行の計画のために行ったこと
海外旅行にまともに行ったことない人が130泊にも及ぶ長期旅行を計画しました。今年(2024年)の9月から出発し、現在はウィーンに滞在しています。来年(2025年)の1月に帰国予定です。
本記事では旅行の計画編として、ヨーロッパ長期旅行を計画する上で調査・準備したことについてまとめてみました。お金とか仕事とかどうしたの?という基本的なところや、「劇場巡り」というテーマにおいてどのようなことを思考・整理したかをまとめてみました。ヨーロッパ旅行を計画されている方の一助となれば幸いです。
そもそも長期旅行のきっかけ
今年(2024年)のはじめ頃、気の合う芸術仲間がフランスへワーホリに行くと決めたと聞きました。初め聞いた時は「ワーホリかぁ。頑張れー」って応援の気持ちくらいしかありませんでしたが、ふとその挑戦に感化され、自分の中で心の奥底に眠らせていたヨーロッパ渡航の憧れが次第に膨らんできました。「いつか」は今だと、自分の中で何かが走ったような感覚でした。ろくに1年の目標も掲げないままスタートした今年でしたが、やると決めちゃえばとんとん拍子にやりたいことが膨らんで、形することができました。人生、ほんとに何がきっかけで動き出すかわかりません。
さて、渡航とはいってもいろいろな形式がありますが、年齢的に自分はワーキングホリデービザは利用できない状況でした(31歳)。失ったものは仕方がないと、今の自分にできることをやろうと模索した結果、ビザなし長期旅行をする形に落ち着きました。
お金と時間について
大前提一番重要であろうお金と時間の確保の部分について。ここは特に裏技はありません。ただ、敢えて言うなら、フリーランスのエンジニアという立場をフルに活用させていただいたことに尽きると思います。お世話になっているクライアントの方々には感謝しかありません。
PCさえあればリモート作業ができる、いわゆるデジタルノマドが可能な職種であること
各クライアント先が身内の繋がりで、交渉しやすい環境であったこと
この2点は今回の旅を実現させるにあたって大きな土台となりました。預金やプロジェクトの状況を考慮し、仕事を完全に止めることは現実的ではなかったので、時短勤務で金銭的な負担を減らしつつ、観光の時間も確保できるように調整しました。また、仕事と観光のバランスを取るため、各地の滞在期間は通常の観光目安よりも長めに日数を確保しました。
こうして、仕事をしながらも拠点はヨーロッパに置くことで、午後や週末に観光するという状態を作ることができました。例えば「仕事終わりにベルリンフィルを聴きにいく」なんていう体験も実現できました。
とはいえ、実際のところ月々の収支は大幅にマイナスです。差分は貯金を切り崩して旅行を決行しました。Die With Zeroです。30代貯金なし独身男性の爆誕です。お金はまた稼げるさ!帰国したらちゃんと集計しようと思いますが、集計するのが怖いくらいお金が動いてます。気が向けば記事にしようと思います。
今後の人生、この思い出をガチホできると思えば意を決してやってよかったなと心から思えます。
旅行計画スケジュール
2月
長期旅行に行こうと決断する
仕事の関係各所との調整
3月
旅程の大まかな整理、行きたいところの調査
ヨーロッパ滞在の基本的な要件の調査
4月、5月
シーズン情報の解禁、チケット情報の調査
行きたい演目に応じて旅程をブラッシュアップ
チケット購入
6月、7月
パスポート取得
航空券取得
宿泊先の確保
言語の学習や観光情報のリサーチ
8月
旅行準備
9月
旅行開始
事前準備①基本的な調査
海外旅行にまともに行ったこともなかったので、ヨーロッパ渡航の基本的なところから情報収集していきました。すでに旅行に慣れている人には基本的な内容かと思うので、適宜読み飛ばしていただければと思います。
シェンゲン協定に関する調査
そもそも「ビザ」という言葉をきちんと認識できていませんでした。ビザ=入国許可証であり、ビザが必要な場合もあればビザが不要な場合もある。という大前提を学びました。その上で、ビザなしでのヨーロッパ渡航にあたってはまず最初に「シェンゲン協定(シェンゲン圏)」およびそのビザ無し滞在要件を理解する必要があります。
まず、シェンゲン協定基本的なところについて以下の記事を引用します。
つまり、シェンゲン圏内(≠EU加盟国)の国であれば、国境を自由に行き来できます。最初はEU加盟国ならば自由に行き来できる、と勘違いしていました。例えばスイスはEU加盟していないが、シェンゲン圏内のようです。また、イギリスはEUを離脱していますが、シェンゲン圏にも加盟していません。そのため、シェンゲン圏の国からイギリスに渡航する際は入国審査が必要になります。
90日ルールについて
シェンゲン圏でのビザなし滞在については「あらゆる180日期間内で最大90日間」というルールがあります。
ただし、例外的に日本国籍の場合、オーストリアでは180日間滞在できるルールが存在します。ポーランドも個別ルールがあるようですが、今回は滞在しなかったので割愛します。
オーストリアのビザなし滞在の個別ルールに関しては以下のオーストリア大使館のページが詳しいです。
ここまでの情報を踏まえ、旅行日程について以下の観点をベースに計画しました。
イギリスの滞在は90日ルールに関与しない
シェンゲン圏の国を90日滞在した後、オーストリアならば追加で滞在が可能
※ 2024年10月22日に以下のルールが追加されています。
このため、シェンゲン圏の国を90日滞在後、オーストリアで滞在し、その後数日ほどイギリスに移動、再度オーストリアに入国する、といったことはできなくなりました。今回の計画には幸い組み込んでいませんでしたが、旅行開始後にルール厳格化の件が発覚したので少し焦りました。
事前準備②劇場巡りのプランニング
劇場調査(2月〜3月ごろ)
まずはGoogle Mapで有名な劇場や、各都市にどんな劇場あるかのリサーチ。
ここでいう「劇場」はオペラハウスに加えてコンサートホールなど、演奏会が行われる場所を指すものと定義します。調べていくうちに、名前は聞いたことある有名な劇場はもちろん、発展している街には大体一つは伝統的な劇場があることに気づきました。文化の格の違いを早速感じたのを覚えています。
以下に今回の計画に組み込んだ劇場の一例を記載します。
ロイヤル・オペラ・ハウス(ロンドン)
専属のバレエ団、歌劇団を有する言わずと知れた世界屈指の劇場。
ロイヤル・アルバート・ホール(ロンドン)
クラシック音楽の祭典であるBBC Promsの会場でお馴染み。
ベルリン・フィル・ハーモニー
三大オーケストラと呼ばれるうちの一つの拠点。五角形の舞台が特徴的。
フェニーチェ劇場(ヴェネツィア)
イタリア三大劇場の一つ。火災により全焼、その後再建されるという歴史を数回くり返しており、「不死鳥」の名を冠するにふさわしい。
楽友協会(ウィーン)
年明けに行われるニューイヤーコンサートはとんでもない人気で、チケット入手が極めて困難(今回も例に漏れず。。)
有名な劇場だけでもまだまだ一部。上記に加えて、各都市での劇場をリサーチし、滞在拠点で一つ以上の劇場に足を運んできました。訪問した劇場については別途記事を作成できればと思います。
シーズン情報解禁(4月〜5月ごろ)
ヨーロッパの各劇場、オーケストラ団体はおおよそ夏をバカンスシーズンとおいて、秋からシーズンが始まります。9月始まりの場合もあれば、場所によっては11月始まりのものもありました。
シーズン情報については毎年春頃にリリースされるようです。各劇場、団体のホームページでも確認できますが、月刊音楽祭というサイトでも逐次更新されており、こちらで確認するのが便利でした。他にも音楽祭に関する情報など、音楽に関するホットトピックを取り上げています。大まかなトレンド把握にはとても役立ちます。
▼記事の一例
また、「この演目が見たい!」という場合には Operabase というサイトも重宝しました。世界の演奏会情報が場所ごと、演目ごとに検索できる優れものです。演目によっては載ってないものもありましたが、メジャーな団体は概ね網羅されていたかと思います。日本の演奏会も漏れなく掲載されていました。Web屋さんとしてはデータ集め苦労するだろうなと敬服するばかりです。僕が1番好きなマーラーの演奏会もこちらで発見できました。ロンドンでマイケル・ティルソン・トーマス指揮のマーラー2番、ウィーンでマーラー8番が聴けたのは今回の旅でも指折りの思い出です。
チケット購入(6月以降)
シーズン解禁とともに、行きたい演目をピックアップし、発売日などを整理しました。それぞれのホームページにどの演目が何日の何時から発売されるかが記載されています。注意点として、時間はもちろん現地時間なのでそこだけ気をつけました。
また、サイトによっては発売開始の数十分前くらいに待機しておいた方がいい場合もありました。ヨーロッパの劇場のサイトや観光地のサイトでよく見かけましたが、アクセスが集中すると順番待ち状態でしばらく待機させられます。場合によっては数十分から一時間を超える場合もありました。
例えば、Promsのラストナイトのチケットなどの人気チケットは、発売開始の30分前にアクセスすると順番待ちで1時間以上の待ちと記載があり、とても焦りました。BBC Promsのラストナイトのチケットはやや特殊な購入方法ですが、こちらはまた別記事にできればと思います。こちらもなかなか手に入りにくいという噂でしたが、今回なんとか入手できました。
どうしても行きたい優先度の高いものは事前に購入しつつ、あとは行く先々で気になったものがあれば都度購入するというスタイルをとりました。やはり予定がどう変わるかわからないので、決めすぎないことを念頭に置いていました。
事前準備③:旅程の決定
以上の下調べをもとに旅程を詰めていきました。
最終的な旅程
2024年9月5日に東京発、9/6から滞在開始
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9/6 - 9/15 ロンドン🇬🇧
9/15 - 9/22 パレルモ🇮🇹
9/22 - 9/29 ナポリ🇮🇹
9/29 - 10/2 パルマ🇮🇹
10/2 - 10/6 フィレンツェ🇮🇹
10/6 - 10/13 ローマ🇮🇹
10/13 - 10/15 トリノ、ミラノ🇮🇹
10/15 - 10/17 ツェルマット🇨🇭
10/17 - 10/22 チューリッヒ🇨🇭
10/22 - 10/25 ロンドン🇬🇧
10/25 - 11/1 ベルリン🇩🇪
11/1 - 11/4 ライプツィヒ🇩🇪
11/4 - 11/11 ミュンヘン🇩🇪
11/11 - 11/18 ケルン🇩🇪
11/18 - 11/23 ハンブルク🇩🇪
11/23 - 11/28 プラハ🇨🇿
11/28 - 12/2 ヴェネツィア🇮🇹
12/2 - 12/4 インスブルック🇦🇹
12/4 - 12/8 ウィーン🇦🇹
12/8 - 12/15 パリ🇫🇷
12/15 - 翌1/13 ウィーン🇦🇹(予定)
旅行日程のプランニング
絶対に行きたい演目と、シーズン情報の大まかなスケジュールを照らし合わせて旅程を組んでいきました。今回の旅は宿泊施設をほぼ全てAirbnbで確保しましたが、宿はできるだけ旅行出発前に確保していました。Airbnbはキャンセル可能な宿の確保もしやすく、柔軟に計画を盛り込むことができました。宿泊や交通に関するまとめもまた改めて別記事で取り上げられればと思います。
以下、各ポイントで大まかに思考したポイントを記載します。
まずは旅の開始について。
9月のロンドンのPromsには絶対行きたい。ラストナイトのチケットが取れたのでラストナイトまで滞在。
せっかくなのでイタリアは暖かいうちに訪問してみたい。9月中旬ならばシチリアはまだ充分に夏を感じれるのでは?
というところからロンドン→パレルモの旅程を決定しました。イギリスはシェンゲン圏ではないので、パレルモから90日ルールがスタートします。
パレルモにはマッシモ劇場というこれまた有名な劇場があります。映画「ゴッドファーザー」の舞台になったことでよく知られているみたいです。すみません、、見たこと無いです。
その後はイタリアを北上。演目の都合で
ナポリ→パルマ→フィレンツェ→ローマ
と、やや変則的に巡りました。パルマで開催されている「ヴェルディ・フェスティバル」の演目がうまくハマるのが9月後半だったので、早めにパルマを訪問しました。
そうしてイタリアは1ヶ月ほど滞在後、涼しくなってきた頃にスイスに行ってみようと計画。10月中旬にスイスへ1週間行きました。結果的には、もう少し時期が早い方が天気も良く景色がいい日を狙えたかなと思います。気候的にも涼しいどころかかなり寒かったです。今回の訪問は曇りがちだったので、またリベンジしたいところです。
その後、ロンドンでマーラー2番の鑑賞のため一度シェンゲン圏を脱出。片道2, 3時間で国を移動できるのはとても体験として良いなと思います。
ちなみに、イギリス滞在を挟むことで、90日ルールの換算としては空白になるので、シェンゲン圏の滞在可能日を後ろ倒しにできます。今回は3日間だけでしたが、このハックはうまく使いたいところです。
ロンドンからドイツへ移動する際、入国をオーストリアで行いました。先述したオーストリアの180日ルールをスムーズに適用するには、入国審査をオーストリアでしておいた方が無難であろうと各種調査のもと判断したためです。そのため、ロンドン→ウィーン→ベルリンと飛行機を乗り継ぎました。パスポートにはオーストリアで入国スタンプが押されたことを確認。これが重要になるはずと考えていますが、出国するまでまだ答えはわかりません。。(無事帰国できたらアップデートします)
ドイツは秋以降でも楽しめるだろうと判断し、10月後半から周遊開始。念願のベルリンフィルにも訪問しました。ドイツ滞在は今回はあまり多くの都市には行けませんでしたが、東西南北の超主要都市には訪問できたかなと思います。
その後はベルリン→ライプツィヒ→ミュンヘンと南下。
ドイツは魅力的な街が多そうですが、今回は多くは巡れなかったので、また機会を見つけてリベンジしたいところです。
ミュンヘン滞在中、ウィーンでのマーラー8番の演目がどうしてもぶつかるので、ミュンヘンから片道4時間の日帰りで訪問することに決定。ウィーンに滞在しても良かったのですが、どうせウィーンは後からたくさん滞在できるし勿体無い、という無駄なこだわり思考が働いて日帰りを決行。前述した通り、オーストリアには例外で180日滞在できるルールはありますが、シェンゲン圏でもあるので前半の90日ルールの日数にカウントされてしまうので、最小限の訪問にしました。
ところで、ドイツといえばクリスマスマーケットが有名ですが、時期的に開催時期が微妙に合わなかったので、あまり多くのマーケットには出会えませんでした。計画段階でそこまで考慮してなかったのもありますが、少し念頭に置いておいても良かったかなと思います。
続けてミュンヘン→ケルンおよび周辺都市→ハンブルクと周遊。
11月後半まで約1ヶ月のドイツ滞在を計画しました。ハンブルクの後はチェコのプラハへ。プラハは年間を通して有名オペラの公演が行われていそうだったので、訪問時期は気にしませんでした。また別記事にできればですが、プラハの国立歌劇場はお値段もお手頃でクオリティも高く、お気に入り劇場に仲間入りしました。
プラハの次はヴェネツィアへ。変則的な計画になりましたが、フェニーチェ劇場の演目で都合のいいのが11月下旬公演の椿姫だったので、後半に持ってきました。冬のヴェネツィアは楽しめるだろうかと不安視してましたが、結果的にはとても楽しめました!たまたまなのか、晴れの日が続いたことが幸いしました。人もおそらくピークより少ないかと思うので、冬のヴェネツィアは結構ありです。
ところで、これも別記事にできればと思いますが、昨今のオペラの演出ってとても現代的なものが多くて、個人的にはそれがとても苦手です。今回の椿姫も例に漏れずでした。みなさん本当にこういう演出楽しんでるんでしょうか。。
ヴェネツィアの後は、当初はミラノに行く予定でしたが、発売日を失念してミラノ・スカラ座でのヴェルディの「運命の力」の公演チケットを取り逃がす失態。今回の計画段階では一番大きいミスでした。ミラノはスイスに行く前に1日だけ滞在しましたが、行ける演目がないので再訪はいいかと断念。代わりのの演目を探したところ、同じくヴェルディさんのヴェルディレクイエムのコンサートがウィーンであることを知りました。ヴェルディはヴェルディで取り返す。合唱属性なので、ヴェルディレクイエムもお気に入り曲の一つです。結果的にこの演奏会も今回の旅の指折りの思い出となったので、無事に取り返せたかなと思います。結局ウィーン滞在を挟みましたが、音楽体験を優先するにあたっては些細なことです。
90日ルールの最後はパリへ。パリは旅のきっかけをくれたワーホリ中の友人に会うのと、バレエのチケットを12月に押さえていたので、こちらも主に演目によって日程が決まりました。
各国巡った後に満を持してのパリ訪問となりましたが、街のレベルがワンランク上がったなと実感しました。個人的に街の充実度や文化の充実度を見た時にロンドン、パリならば住めるイメージが湧きました。パリ症候群なんて言葉もありますが、華やかな幻想の中のパリ、というよりは歴史や文化に富んだ等身大のパリを味わえた気がします。昨今治安がどうとか移民がどうとかいろいろ言われていますが、実際に足を運んでいい街だなと実感しました。逆パリ症候群とも言えます。これもまた記事にしたい。
そして現在、最後の計画のウィーン滞在中です。
シェンゲン圏の90日ルール期間中をできるだけオーストリア以外で過ごし、その後オーストリアで延長戦、という計画で進めましたが、振り返っても悪くない計画だったかなと思います。逆にウィーン滞在は他の都市と比べて長いので、油断してゆったり過ごしちゃってます。そろそろメインどころの観光地にも行かないと。。とは思いつつ、年末年始も重なって結局のんびり過ごし中です。
さて、計画の振り返りと言いつつ、旅の振り返りも挟んでしまいましたが、概ね上記のような形で旅程を決めて進行しました。細かく日程調整した部分もありましたが、公演をベースに日程を組んでいたこともあり、ミラノ・スカラ座に行けなかったこと以外は概ね計画通りに進められたかなと思います!
最後に
長くなりましたが、旅のきっかけから計画時に調べたことや思考したことについて記してみました。ヨーロッパの長期滞在のポイントや、コンサートの探し方など、参考になる部分があれば幸いです。
読んでいただきありがとうございました!