ヒアリング型営業からディスカッション型営業へ:改めて考える”顧客思考”
初めまして、藤本です。法人営業のキャリアを歩んできて、今はスタートアップで事業責任者を務めています。これまでにキーエンスやリクルート、スタートアップで多くの営業パーソンを見てきましたし、時代の流れも直に感じてきました。その経験を活かして、今回のテーマに触れたいと思います。ポートフォリオは別途リンクを貼っておくので、興味があればそちらをどうぞ!
①営業は今が変革期
営業での差別化がキーになる
営業の世界は、ここ数年で急速に変わっています。以前は「商品を売る」というシンプルなアプローチが通用していましたが、特にB2B営業では、顧客は事前に自社や競合についての情報を十分に把握できるようになっています。ネットで簡単に製品情報や口コミ、他社との比較ができる時代ですから、営業パーソンがただ商品説明をするだけでは、差別化が非常に難しくなっています。
さらに、SalesTechやAIツールの進化によって、営業のプロセス自体が大きく効率化され、商談のオンライン化も進んでいます。これにより、営業の生産性は向上し、顧客の期待値もそれに比例して上がっています。結果として、パフォーマンスの高い営業パーソンと低い営業パーソンの差は顕著になってきており、これまでのやり方に固執している人は、ハイパフォーマーとの差がますます広がっていくと思っています。
顧客視点の重要性が増す背景
「顧客視点って大事だよね」という話はもう擦り尽くされた話ですが、いよいよ本当に顧客視点を持たずに営業する人は成果が出せなくなり始めているなと感じています。その背景は下記の通りです。
1.「何を買うか」から「誰から買うか」へ
テクノロジーの進化により、製品やサービスの差別化が難しくなってきています。たとえば、ある機能が他社に先駆けて導入されたとしても、その差はすぐに埋められてしまう時代です。結果として、顧客は「何を買うか」よりも「誰から買うか」を重視するようになってきています。顧客は、信頼できるパートナー企業との長期的な関係性を求めるようになっています。
ネットを使えば、顧客は簡単に複数のサービスを比較でき、その結果、営業パーソンが提供する「関係性の質」が大きな差別化要因となっています。
2.「無駄な打ち合わせは淘汰されやすい」
さらに、コロナ後の世界では、オンライン会議や商談の回数が劇的に増加しています。2022年には2~3件だった顧客との商談が、2024年には6件程度に倍増しているとの話もあり、顧客は非生産的な打ち合わせに対して厳しい目を向けるようになっています。
顧客視点を欠いた営業は、もはや顧客の時間を無駄にするものと見なされ、結果として信頼を損ねる=成果が出せなくなるリスクが高まります。
②”顧客視点”も変わっている
×ヒアリング力 ○理想像に向けたストーリーを作る力
顧客視点の営業とは、単に顧客の「課題」を聞き出すことではなく、顧客が描く理想の未来像に向かって一緒にストーリーを作り上げる力です。
従来の営業スタイルでは、ヒアリングを通じて売るための情報を集め、営業主導で商談を進めていました。しかし、今の時代ではそのアプローチは限界があり、より「共創的な議論」が求められています。
顧客がすぐに明確な課題を提示できるわけではありません。むしろ、課題を見つけ出し、整理するためには、営業パーソンと顧客が一緒になって議論を重ねること。
営業パーソンが一方的に質問を投げかける「ヒアリング型」ではなく、顧客と共に理想の未来を描く「ディスカッション型」へとシフトすることで、顧客の深いニーズや本当の課題が見つかるはずです。
営業の役割は、顧客が求めている未来の姿を理解し、その実現に向けたストーリーを一緒に作り上げることです。これには、単に商品やサービスを売るのではなく、顧客のビジョンに基づいたソリューションを提案する必要があります。
例えば、提案資料は営業側が売りたい商品やサービスを押し付けるものではなく、議論を通じて共に描いた顧客の理想像に向けたストーリーを描くスケッチみたいなものです。
顧客と一緒に未来を描く=信頼構築
顧客視点を持つ営業パーソンが成功する理由は、単なる商売相手ではなく、顧客にとっての「ビジネスパートナー」としての立場を確立するから。
共に描いた未来像に向かって、営業パーソンが顧客の一部のように寄り添うことで、初めて信頼関係が強化されます。
信頼を築くためには、顧客のビジネスや業界を理解し、その中で何が成功をもたらすのかを見極めた上で、顧客にとって最適なストーリーを考える姿勢が重要。まあ、この辺りはいろんな記事で話されていることなので、詳しくは割愛します。
③営業パーソンに必要な力
あまり○○スキルみたいな話はHowっぽくて好きではないのですが、「これからより必要になる力」という視点で、営業パーソンが鍛えるべき力について書いてみます。
当たり前のことを当たり前にやる力
顧客思考や信頼関係の構築を語る前に、まずは「当たり前のことを当たり前にできる」ことが不可欠です。営業の世界では、この基本的なスキルが最も重要であり、意外とできていない人が多いのが実情です。
たとえば:
これら一つ一つは、誰にでもできる基本的な行動です。しかし、実際には疎かになっていることが多い。
顧客視点の営業パーソンに求められる最低限の”マナー”として、まずはこの基本を徹底することが重要です。
いわゆる「名言を語る前に、まず約束を守れ」ですね。
顧客に信頼されるための第一歩は、プロフェッショナルとして基本を確実に遂行すること。もしできていないければ顧客思考や戦略考える以前に、こうした業務スキルを磨きましょう。
70%で達成し、30%で遊ぶ気持ちを持つ力
営業パーソンは常に数字に追われています。しかし、目標を100%達成しようと全力で取り組むだけでは、かえって行き詰まってしまうことがあります。重要なのは、「70%で達成し、30%で遊ぶ」というバランス感覚。
現時点を100%の力で仕事をしているとして、その中の30%を新しいアプローチやこれまでやってこなかったことに費やしてみる。
多くの営業パーソンは「どうすれば100%のパフォーマンスを出せるか」ばかりを考えがちですが、それだと結局80%で、「まあ頑張ったよな」と満足してしまうことが多い。
重要なのは、「70%で目標を達成するためにはどうすればいいか」を考え、残りの30%を自己成長のための「遊び」に使うことだと思っています。
「成長は快適ゾーンの外にある」ですね。
好奇心を持つ力
顧客視点を持ち、営業パーソンとして成長するためには、「好奇心を持てること」が強みになります。
営業はさまざまな業界の顧客に会い、転職や異動で自分が扱うプロダクトやサービスが変わることが頻繁にあります。自分以外全てが変わりうる環境に常にいるのが営業です。
映画、読書、現場での経験など、どんな方法でもいいと思います。重要なのは、好奇心を刺激し、コントロールできるようになること。
営業パーソンは、顧客を好きになる必要はないですが、「興味を持つことは義務」です。興味を持つことで、顧客のニーズや課題に対して自然に関心が生まれ、それが結果として提案の質や商談の成功に繋がることをみなさんはすでに知っているはずです。
まとめ&一言
営業スタイルの変化:ディスカッション型営業で顧客と未来を創る
現代の営業において、従来の「ヒアリング型営業」から「ディスカッション型営業」へのシフトは不可避だと思っています。
これまで営業パーソンが一方的に顧客から課題やニーズを聞き出し、その解決策を提示するというアプローチは、顧客の期待に応えるには限界が来ているように思います。顧客はすでに多くの情報を持ち、どの製品やサービスが自分に適しているかある程度の見通しを立てているため、単なる情報収集型のヒアリングは意味を失いつつあります。
一方で、「ディスカッション型営業」は、顧客と共に課題や理想の未来像を作り上げるプロセスです。このプロセスでは、顧客が気づいていない潜在的な課題や新しい視点を引き出すことができ、顧客にとって真のパートナーとしての信頼を得ることができます。(そして営業がとても楽しくなる!)
この変化は今後加速していくと思いますし、これができる営業パーソンがハイパフォーマーとして残っていくんだろうと確信しています。あとはAIに淘汰されていくか、成果が出続けない状態が続くんじゃないかなとも思っています。
顧客思考の再定義:営業のための顧客思考→顧客のための顧客思考
営業スタイルは「ヒアリング型」から「ディスカッション型」へと変わりつつあります。この変化は、単なる営業手法の進化ではなく、顧客との信頼関係を築き、長期的な成果を上げるための本質的な変化です。
これからの営業パーソンに求められるのは、顧客と共に未来を描く力です。そして、そのプロセスを楽しみながら、信頼を築くことができる営業パーソンこそが、今後のハイパフォーマーとして活躍できるでしょう。
営業はこれからどんどんクリエイティブな仕事になっていきます。全国の営業パーソンのみなさん。一緒に変化し、一緒に楽しんでいきましょう。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
藤本についてはこちらのポートフォリオを。面談やご相談の連絡はいつでもお待ちしているので気軽にご連絡ください。