天秤
くたびれた布地に腰を下ろして
流しかけた視線の先
声を上げるちいさな身体
私の面影が見えたから
聞かれなければ話さないこと
目の前のことに必死で
乗り越えたような気でいた
それでも耳に残る響き
喉が枯れる感覚と
向けられた視線を思い出す
すがりつく脚は硬く
振り払う腕は強い
名前も知らないけれど
立ち上がって抱きしめたい
呼び起こされた記憶は
音楽で癒せるけれど
人混みの中あふれる涙
どう見ても変な人ね
共感したような言葉
安心した頃もあったけど
分からなくても側にいて
前に進みながら手を引いて
私を離さないでくれればいい
泣き叫ぶ声は高く
疲れた顔は動かない
名前も知らないけれど
立ち上がって抱きしめたい