女の子は本当に目ざとい~かすみ嬢の居場所(12)


 疲れた…。 

 でも、これは心地よい疲れ。泳げるとそれだけで嬉しい。調子良いときしかできないから。カロリー消費って面もあるけど、泳げてるって幸せ。昔ほどのタイムを出すためには当時くらいまで体重増やさないとダメだろうから、速くはなりたいんだけど、泳げる最低限の体重を保てていれば、今はいいの。

 そういえば、入学直後の体重測定。今まで通りジャージ可だったから、わざと少し大きめデザインのジャージ羽織って「ぶかぶかじゃん!」なんて言われても「間違ってサイズ大きいの買っちゃってさ、そういうデザインだからだよ?」って返してた。「痩せすぎだよ」なんて、そんな言葉は要らない。

 ふだんもね、手を足を鎖骨を、目立つ部位はできるだけ隠すような服装を選んで、用心しいしいやってるのに。新生活早々から指摘をされてる。女の子は本当に目ざとい。

 それに、もうそろそろ暖かくなってきて。これから先、梅雨はイヤだなぁ。服が濡れて万一にでも身体に貼りつくと、身体の線が露わになってもっと何か言われちゃう。
 冬はまだふかふかのダウンとブーツでカサ増しできるから楽だったなぁ…。体型のこと考えずにお洒落したいなぁ…。

 痩せたいと疲れたが、交錯してる。

 やっぱりさ、周りの人に口出しされるのはとてもイヤ。昼ごはんどきに「もうちょっと食べなよ」ってクッキー差し出されたり「ちょっと細すぎない?」って言いながら腕を掴まれると、嬉しい気持ちがないわけじゃないんだけど、反応に苦慮する…。またいっぱい言われるのかなって思うと、胸がぎゅんってなる。

 その点、中学生と一緒にいるのは楽でいいな。
 彼女たちのすらっとした西洋カモシカみたいな脚のなかでは、私は目立たないもん。成長期前で、脂肪があまりついてなくって羨ましい。あの子たちに「美脚ですね?」なんて言われると、お世辞だってわかっててもすごく嬉しくなっちゃう。
 比較対象が中学生自身の脚だろうから、中学生のあの細い脚と比較されても見るに耐える脚でいたいなぁって思うから。

 それにしても、いつまで泳げるんだろ。高校時代、泳ぐのを禁じられた体重はもう下回ってて、当時の最低体重に近づきつつある。
 もうすぐ健康診断があるのだけど、何か言われるのかしら。


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