空気をよむ猫
我が家には ミュウと言う猫がいる。捨て猫さんの子猫で クロとグレーの縞模様で「きじねこ」と言うらしい。目が黄色がかった緑色で NPOで預かってもらっている時から 面倒見がよく他の猫も平等に接するお利巧さんと言うことだった。我が家に来て 7年目になるが人の言葉がよくわかる。お留守番の時も「すぐ帰ってくるから、いい子にしててね」と頭をなでると、娘のベッドの布団の間に はさまって黒い鼻先だけ出して寝ている。 留守の間に悪さをする猫もいるようだが、そんなことは一度もない。ほんとうにお利巧さんのミュウ。 そんなかわいいミュウだから、少々甘えたさんにしてしまったようで、出窓に上る時も こちらの顔を見て「にゃ~」と訴える。 私は出窓の台をトントンしながら「あんた 猫やろ?ほら、ジャンプ、ジャンプ!」と言うと、ようやく腰を屈め2,3回腰をふり後ろ脚で蹴って お見事!となる。
寝る前も 娘手作りのネコジャラシをくわえて来て「あそんでちょうだい!」と三つ指そろえてつぶらな瞳でおねだりする。 それがいつも、寝る体制に入ってからなので、参いった、まいった!でも、その可愛さにつられて 仕方なくネコジャラシを操ることになる。が、眠気をこらえての操りは、ミュウにとっては面白くない。気持ちが入っていない操りを見抜いて、すぐ追っ掛けるのを止めこちらをジッと見ているだけになる。 仕方なく、私はのし餅のようなミュウの背中にかぶさり、ほんの少し胸で押さえつけると「フニャ~」と潰されそうな情けない声を出す。それが何とも面白い。 なんだか、ママー人形のお腹を押さえたような快感だ。その後ホッペをこちょこちょして「goodボーイ」と呼びかけるとミュウの上機嫌は頂点に達する。まるで、喜びが体内の臓器を楽器にかえたように、息をする度 ”グーゴロゴロ、グーゴロゴロ” 背中に耳をあてて聞いていると、気持ちがいい。このままこうして眠りたいな~、と思ってしまう。でも、ミュウは私の重い体重をかけられ苦しいのか 体をモソモソ。だから仕方なく、私はゆっくり身を起こし、毛並みを整えるように背中を撫でてやりながら「もう、寝よか~?」と言う。その言葉を聞くと、ミュウはちょっと眩しそうな目をして一度瞬きし、小さく「にゃ~」と答える。そんなミュウに調子にのって「今日はママと一緒に寝よか」と耳元で言ってみる。と、チラッと娘の部屋に視線を送ったかと思うと、おもむろにしずしずと私の部屋を去っていくのでる。
4月に入って気温の差が大きくなり、私と娘の体調が崩れストレスが溜まったある日、ちょっとした事で大喧嘩になった。雨が降って窓を閉めている安心感もあって、思いっきり大きな声で応戦した。久しぶりだった。大きな声をお腹から出すことが こんなにも快感だったとは、、。そして、ピークを越した時、ミュウはどうしていたか?というと、気が付けば、出窓に座ってジッと我等を見つめていたのだった。オホッ!
以前、デイジーと言うゴールデンレトリバーを 飼っていた時。やはり娘と大喧嘩したことがあった。激しい言葉を発している者に向かってデイジーは正座し「言うな!それ以上、言うたら、あかん!」と 言うように吠えた。それは見事に平等だったように記憶している。そして、思わずデイジーの仲裁に二人の喧嘩が中断されたことは確かだった。 それでは 猫は? ジッと見ているだけなのか? いえ!喧嘩が終わってから、弱勢の者にソッと寄り添ってくれていたのだ。それに 気が付いた時、「猫は猫なりのこころ配りをしてくれているのだなあ」と あたたかいものを感じた。
「夫婦喧嘩は 犬もくわん」と言うが「母娘の喧嘩は 猫もくわん」と言うのかもしれないのかなあ?と思った次第です。