仕事終わり飯っていいよね。

この前初めて金曜の夜、帰りに回るけどスシローよりちょっと高い回転寿司屋さんで1人寿司を食べて帰ってきた。意気揚々席に着いてメニューを眺めるがしかし、ビールが650円していて、「え、これなら大トロの炙りが1皿食べれるくない？」とか思ってしまい、あろうことかビールを飲まず寿司と粉緑茶だけで店を後にしてしまった。

帰りの電車の中と帰り道ずっと「しまった」という思いが拭えなくて、コンビニでお酒を買って帰るも時すでに遅し。家に着いたらあの時あんなに飲みたかったビールを欲する気持ちはもうきれいさっぱり消えていて、「ああ、あの時ケチらないで飲んどくんだった」と心底後悔し、泣く泣く冷蔵庫にビールを寝かせた。

夜中に食べたいと思うラーメンとか、ホットケーキとか、今だ！というタイミングを逃すと、しばらく姿を現してくれなくなる食べ物があって、でもたいていそういう食べ物というのは、「食べてもいいのかしら？」と迷う時間にふいに立ち現れるから、我慢、我慢♪と思ってるうちにその食べたい気持ちは消えてしまってることが多い。

「なんでなんだあ！」、としばしうつむくけれど、次その食べ物を適切な時間に食べたいと思うまでは、なるべく、それと似た代用のものでは自分を満たさないようにしている。なぜなら代用品を食した次の日とか早ければ数時間後とかに、その食べ物を食べられる状況ができていて、これまた「なんでなんだあ！なんで食べてしまったんだあ！」とそこはかとない後悔に襲われるからだ。

この手の失敗を私は本当によくしてしまう。この前もハーゲンのクッキーアンドクリームが食べたくて、もうその口になっていて、だけどたまたまクッキーアンドクリームだけが売り切れていて、1日待てば補充されているかもしれないと一瞬思ったけれど、「うーんハーゲンならストロベリーも美味しいからいっか」、と思ってハーゲンストロベリーを代わりに買ってそれなりに満足して食べた次の日に、案の定クッキーアンドクリームは補充されていて、消え去っていなかったハーゲンのクッキーアンドクリーム食べたい欲が「あぁこれ食べたかったやつ！」と騒ぐけれど、昨日ハーゲンを買った手前、2日連続ハーゲンはさすがに貴族行為すぎて憚られて、「なんてことをしたんだ」と中途半端にハーゲンストロベリーで満たされた自分にとても落ち込む。

ハーゲンダッツなら、まだ手が届く距離にあるから、買い損ねても次食べたいと思ったときに食べられるチャンスは残されているけど、海外旅行先で迷った末に買い損ねたものとなるともう、取り返しがつかない。

一時期寝ても冷めても忘れられなかった買い損ね品がある。大学の卒業旅行で、これまでのバイトの貯金をはたいて友達と2人、ヨーロッパ旅行をしたときのこと。フランス、ベルギー、オランダの3カ国を2週間かけて巡っており、ベルギーにいたときに、私はもう、とんでもなくかわいい靴とショーウィンドー越しに目が合ってしまった。

瞬間、［欲しい！］と思って店に入り、値段を見ると€250。ざっと換算して日本円だと3万円。買えなくもない。5年履くとしたら1年あたり6,000円だ。悪くない。なんせ日本に帰ったらもう出会えないかもしれない。買おう、買おうよ。と思いっきり買う方に傾きかけていたのだが、本当にタイミング悪く、ヨーロッパ旅行の2日前に家のカギをなくし、管理人さんにカギ再発行代27,500円を宣告されていた私は、日本に帰ったら払わなければならないであろう27,500円がちらついて、一目ぼれの可愛い靴を見送ってしまった。

日本に帰って、その靴が到底手の届かない距離のものになってから、届け出を出していた警察署からカギが見つかったかもしれないという連絡が入り、結局無事カギは返ってきたしお金も払わずに済んで、「あぁやっぱりカギなくしてようがなんだろうが、あの靴買っておけば良かった」と、後悔の波に飲まれそうだったから記憶を頼りにネットで調べたら、どうやら日本でも買えるみたいだったけれど現地の倍の6万円もしていて、さすがに手が出せなかった。その後何か月もかけて、やっとのことでその靴への思いを断ち切った。

話がかなり脱線してしまったけれど、何が言いたかったかというと、食べたい、と思っものやほしい、と思ったものは、なるべくそう思った時に自分に与えた方がいいし、仮に手に入れられなかったとしても、また本当に望んでいるものに出会えるまでは、望んでいたものと似た何かで、自分の気持ちをごまかすように代替してはいけない、ということだ。

650円の生ビールにビビり、寿司とビールのマリアージュをみすみす逃したと落ち込んでいた私に、「そんな日があってこそ、また頑張れるんだよ」と母から励ましのラインが届いた。確かにそうか、と母に火をつけてもらった私は、いつか自分の稼いだお金で回らないお寿司屋さんに行って、値段を気にすることもビビることもなく、好きなだけお寿司もお酒も堪能することを、当分の目標にすることにした。