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ホップとバレリアンでママの匂い。
#20231118-293
2023年11月18日(土)
美容院に行きたいのに、なかなか予約できないまま日が経ってしまった。
我慢限界で、担当美容師さんと私の予定をむーくん(夫)に送ると、今日の午後を指定された。ノコ(娘小4)の習い事の送迎があるが、送るのは私、お迎えは仕事から帰ったむーくんがしてくれるとのこと。
私はノコを習い事先に預けたら、そのまま美容院へ向かえばいい。
ノコは学校でも習い事でも友だちがいれば、すっ飛んで行き、私のことなんて振り返りもしない。
別行動なら別行動でいい。
ここでバイバイならバイバイでいい。
私としてはどちらでもいいのだが、何もいわずに駆けて行ってしまうと困る。追いかけなければならない。いきなり走るはめになり、ひぃひぃと息を切らせてノコのそばへ行っても母のことなんてどうでもいい感じで会話が成り立たない。
一言、いってほしい。
「ママ、バイバイ」でも、「ママ、ここでいいから」でも。
そうすれば、私は晴れて解放となる。
日頃の扱いがそんななのに、いざ私に用事があるとノコは一変する。
子どもなんてそんなものか。
習い事にノコを送った後、ママは美容院に行くこと、お迎えはパパということは伝えた。
習い事先へ向かう電車のなか、ノコは私の腕にしがみついて離れない。電車の揺れに合わせて、私と一緒に揺れる。
ノコの指先が荒れている。バッグからハンドクリームを出し、ノコの手の甲に出した。
「ほら、甲と甲を合わせて。クリームをよく伸ばして」
ついでに私の手の甲にもクリームを出す。ノコは甲をすり合わせ、手のひらをすり合わせ、それから手のひらを開いて鼻を寄せると深く息を吸う。
「あー、いい匂い。ママの匂い」
うっとりと目を細め、甘い声を出した。
「ママはどこまで送っていけばいい?」
駅の改札まで、というときもある。
「ずっと一緒にいて!」
こういうとき、ノコは無理なことをいう。しがみつく腕に力を込めたので、踏ん張りがきかず、電車が揺れると同時に一緒によろめいてしまう。
「入口まででいいかな」
「ずっとがいい」
いやいや、そもそも今日の習い事は保護者はなかまで入れない。
「入口でバイバイね。ママ、電車に乗って髪切り屋さんに行かないと」
返事をする代わりに、ノコは自分の手のひらで顔を覆った。
「淋しくなったら、このママの匂いを嗅ぐね」
そういいながらも習い事先に着けば、ノコは振り返らない。
先生の元へ駆けて行く。
さっきまでのは何だったのだろう。
私はノコの背を見つめながら思う。
まぁ、そんなものか。
うん、これでいいんだ。
駅に戻る私の頭上に秋空が高く高く広がっていた。
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