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そこは善も悪もない世界。
※ 昆虫が苦手な人は、お気を付けください。
#20230709-161
2023年7月9日(日)
柵にからまるヘクソカズラに小さな幼虫が2匹いた。
ピンと黒い尾角が立っているので、スズメガの一種だろう。まだ小さ過ぎて何かわからない。ヘクソカズラにいたところを見ると、おそらくホシホウジャクか。
そっと持ち帰る。
ノコ(娘小4)が命名したがっていたのでまかせると、「オトちゃん」「ヒコちゃん」とつけた。七夕が近かったので乙姫、彦星からいただいたそうだが、それなら織姫、彦星だ。「オリちゃん」「ヒコちゃん」じゃないだろうか。乙姫だと浦島太郎の竜宮城のお姫さまになってしまう。
「オートちゃん、ヒーコちゃん」
飼育ケースに向かってノコがハシャいだ声を掛けているので、水を差すのはやめる。
ヘクソカズラは葉や茎を傷つけると独特の臭い匂いがする。
小さな2匹はよく食べ、よく糞をした。まだ黒い粒ではなく、粉のような糞がパラパラとケースの底にたまる。
1日1回、ケースを掃除し、食草を新しくし、2匹の様子を観察する。
脱皮もし、ほんの少し大きくなった。
今朝、ケースのなかを覗くと幼虫の体の脇に白い俵型のものがくっついていた。
あ……
やられちゃった……
自然界のことゆえ、あがいても嘆いても仕方がないが、寄生されていた。体に寄生痕がなかったし、ごくごく小さい幼虫だったので大丈夫かと思ったが、そんなに甘くなかったようだ。
おそらく寄生蜂。
体の横に黒い点がある。そこから寄生蜂の幼虫が出てきて、繭を作ったのだろう。
どうしても心は飼育している昆虫に寄り添ってしまう。
今ならばスズメガの幼虫。
こちとら寄生蜂を飼っていたつもりはない。でも、寄生蜂が悪いわけではない。
いいも悪いもない。
生き残るため、種を絶やさないため、なのだ。
ノコにもケースのなかを見せながら、その事実を伝える。
「やだね、この白いの!」
ノコは白い繭を憎々しげに指差す。
「ヒドイよ。死んじゃえ!」
「ノコさんは、オトちゃんとヒコちゃんが大切だからそう思っちゃうよね」
白い繭をつまようじの先でそっとつついてみる。幼虫の体から簡単にはがれた。
「多分、寄生蜂だと思うんだけどね。この蜂のお母さんはね、卵を芋虫とかの体に産むの」
蜂の卵は、芋虫の体のなかで孵化して幼虫になって、芋虫の体を食べて成長すること。ある程度成長したら、芋虫の体の外に出て、繭を作り、蛹になって、成虫になること。でも、母蜂は芋虫をいじめたいわけではなく、子どもがしっかり成虫になるためにいいと思うことをしているだけだと話す。
実際は考えてやっているわけではなく、種としての本能だろうが、そこに善悪はない。
善悪ではわけられない世界があることをノコに届けたい。
この飼育ケースのなかでノコに見付けてほしい。
スズメガの幼虫は繭を体からはがしても助からないだろう。おそらく体のなかはもうボロボロで動くこともできないと思う。ゆっくり乾いて縮んで死ぬだろう。
それでもどうなるか、見届けたくて幼虫と繭のケースを分けた。
幼虫のケースには新しい葉を入れる。繭からはそのうち、小さな寄生蜂が羽化するだろう。
明日か、あさってか、近いうちに。
ここで1つの種がつながる。
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