15分遊び。それは娘と真剣に遊ぶ時間!
#20231031-275
2023年10月31日(火)
我が家には「15分遊び」と呼ぶものがある。
キッチンタイマーをセットして、15分間ノコ(娘小4)と遊ぶ。
その間は、家事に立ったり、スマートフォンを見たり、トイレに行かない。ノコとしっかり向き合う。30分ではなく、15分というところがミソだ。子どもには物足りないが、大人には疲れる手前でちょうどいい。
「ママママ、ママママ、今日15分遊びしたい」
私は17時になったら夕飯を作りはじめる。もう時計が読めるのに、ノコは16時50分や55分と、15分遊びをしたら17時を過ぎてしまう時刻にやりたいといいだすことがある。
「何時にやるの? それまでに宿題もしてね」
ノコが壁掛け時計を見上げ、人差し指を動かしながら時間の計算をしだす。
「4時45分ならいい? もしそれまでに宿題が終わらなくても遊んでくれる?」
「仕方がないなぁ。それまでは、宿題頑張ってね」
「ヤッタ!」
いそいそとノコはランドセルから計算ドリルやノートを引っ張り出した。
16時45分。
仕事から帰り、夕飯前に少しお腹に入れたいむーくん(夫)が遅いおやつを食べはじめた。
「はい、何して遊ぶの?」
「魔女学校ごっこ!」
ノコは私がはじめたこの遊びが好きだ。私が先生役から生徒であるノコのお友だち役まで何役も演じる。厳しい先生もいれば、ちょっと抜けている先生もいる。優秀なお友だちもいれば、ドジっ子もいる。
いきなり私は老婆になる。
「なに、ぼーっと突っ立ってるんだい、早く薬草を摘んでおいで」
しわがれ声でぶっきらぼうな口調でいう。
ノコはたじろぎながらもはじまった遊びに乗っかろうとする。
「何、採ってくればいいんだっけ?」
「忘れたのかい。ちゃんと覚えておくれよ。パラパラにペラペラにピリピリだよ。間違えるんじゃないよ」
見えない小屋の扉を開け、ノコは森へ探しに行く。
「えーっと、パラパラ? それからなんだっけ……」
身をかがめ、右に左に床の上に目をやりながらノコがむーくんの方へ近づいていく。
「あ! ピリピリって書いてある。これを摘めばいいのかな」
「いや、書いてあるのはダメだろ。誰かが植えたやつだろ」
むーくんがすかさず突っ込む。
「いいの!」
ノコが叫ぶ。だが、そこのは摘むのを諦めたようだ。
「じゃあ…… これがパラパラでぇー、ペラペラはこれかな、じゃあ、これがピリピリ!」
薬草を摘む仕草をし、急いで小屋へ戻ってきた。
「摘んできたら、ほら、刻む。鍋に入れる順番を間違えたらいけないよ」
私がぐつぐつと煮込むふりをすれば、ノコは刻むまねをする。
「入れていい?」
「パラパラからだよ。ほれ、今だ」
こうやって作った回復薬を瓶に詰める。
完成したところへ、注文主が現れる。
この回復薬を作ったノコをぜひ魔女学校へ入れてくれないかと老婆が頼む。といっても老婆も注文主も私、1人2役だ。
こうして、ノコは魔女学校へ入学することになる。
校門をくぐると、キャピキャピとした女の子が駆けてきてノコの腕にしがみつく。
「あなた、お名前はなぁに? え? ノカ? 私はミツキ」
そして、見えない掲示板を指差す。
「きゃあ、私たち同じクラスよ。ノカ、よろしくね!」
ハイテンションなクラスメイトがノコをぶんぶんと引っ張ってUターンすれば、そこはもう教室だ。
私は先生役に友だち役と複数役を演じる。
「みなさん、入学おめでとう」
重々しい口調で生徒ひとりひとりの顔を見つめているかのようにいう。
「では、自己紹介をしてもらいましょうか。右の方、そう、あなたからよ」
手のひらを上に、ノコを指名する。
「いやぁん、ノカったら一番最初なんて緊張しちゃうね」
小声でノカもといノコにささやくと、ノコはぎこちなく立ち上がった。
「えっと、ノカです。よろしくお願いします」
頭を下げると、ノコはそそくさと腰を下ろした。
「それだけですか」
先生に問われて、ノコが困った顔をする。
「では、その隣」
ミツキがスッと立ち上がると、すました声で自己紹介をはじめた。
「ミツキです。魔法陣に詳しくなりたくて、この学校に入学しました。皆さんと一緒に学べること、とても嬉しく思っております。どうぞよろしくお願いいたします」
落ち着いた声音ですらすらと自己紹介を述べ、優雅にお辞儀をして席についた。
様子が一変したクラスメイトにノコが目をむき、おやつを口に運んでいたむーくんがむせかえったところで、キッチンタイマーが鳴った。
15分遊び終了!