私にはない。「一段上の高みから見て言語化する力」。
#20230811-197
2023年8月11日(金)
尊敬する先輩里母さんがいる。
今から2年前――里子のノコ(娘小4)が小学2年生だった秋。
私はノコのことでどうしたらいいかわからず、真っ暗な闇のなかを歩いていた。
新型コロナウイルスの流行が人々の暮らしに強く影響し、小学校も夏休みが明けたものの、学校での授業は午前のみ、午後は家でタブレットを通じてのオンライン授業だった。
どうやら学校の休憩時間も短縮されていたようで、友だちと遊ぶ時間があまりなく、子どもたちにとって下校時間がワイワイきゃっきゃっと戯れられるひとときだった。だが、帰宅すればオンライン授業がはじまる。家で待っている私はちっとも帰ってこないノコにハラハラしていた。
帰宅した途端、早く早くとタブレットの前に座らせる。
先生方もオンライン授業に慣れておらず、テンポのよい、子どもが飽きない授業といえず、まだ低学年――2年生たちはあっという間に集中が切れていた。
学校に行っても友だちと遊べない。
帰ればすぐつまらないオンライン授業が待っている。
それが終われば宿題だ。
確かにストレスたっぷりだと今の私ならわかる。
だが、当時の私は始終不機嫌で、癇癪を起こすノコに疲れ果てていた。
どうしたらいいのか、わからなくなっていた。
私の地域の里親会はとても交流が盛んで、私もよく里親さん方とお会いし、頼りにしていた。
それがコロナ禍になり、頻繁に開かれていた集まりがなくなった。
里親さん方の連絡先は知っている。取ろうと思えば、連絡は取れるし、対面は難しくてもオンラインを通じてならば言葉を交わすこともできた。
ランチ会ならば、何人もの里親さんが出席し、あれやこれやと話に花が咲く。困り事があれば、するすると「〇〇さんがそのあたり経験しているよ」「こういう接し方もありだよ」と人と情報がつながっていく。
だが、集まる場がないと、たくさんいる里親さんからある里親さんを選んで連絡を取ることになる。他愛もない雑談ならいいけれど、重い話であればあるほど、聞き手の里親さんの負担になるのではないかとためらってしまう。その里親さんの時間を奪ってしまうことにもなる。
知っている里親さんはたくさんいるのに、集まることができないだけで、私は身動きが取れなくなった。
そんなときに手を差し伸べてくださったのがその先輩里母さんだ。
あぁ、でもそれも私が悩んでいると誰かが気付き、その先輩里母さんに連絡してくださったのかもしれない。
その先輩里母さんは実子、里子と何人も養育中なのに、私のために時間を割いてくださった。
その方の言葉掛けや導き方が私にはとても合っており、少しずつ少しずつノコとの関係を持ち直すことができた。
今も口を開ければ、「ヤダヤダ」のノコに手を焼いている。
だが、当時のような暗闇ではない。
お忙しいその先輩里母さんの手を煩わせたくなくて、連絡回数はぐんと減った。だって、私の後にも新しい里親子が誕生しているのだ。その里母さんの経験や知識を求めている人がいる。
時折、ノコの様子や私がそんなノコをどうとらえ、どう接しているのか伝えている。
先日も懲りて改めることについて(※ 「#20230808-191 満足するまで助ける。」に書いたような内容を)話した。
ノコは失敗した体験をなかなか次回以降に活かせない。
そのことを先輩里母さんはさらりとまとめる。
「経験から得る認知力が育ちにくい」!
私はノコの様子やそれに対して自分が感じたことを綴ることはできるが、それをもう一段上の高みから見た言葉に変換することができない。
具体的な言葉は残せるが、抽象的な言葉に変換できない。
先輩里母さんはノコだけでなく、もっと多くの子どもにも当てはまる視野を持っている。
ノコは「嫌だった」気持ちの記憶が強く残る。
「こうされて嫌だった」「ああされて嫌だった」ということはずいぶん前のことも忘れないが、その状況を避けるためにはどうすればいいかまで考えが及ばない。それは嫌な気持ちが強すぎて、当時の嫌な気持ちをリアルに思い出してしまうため、冷静に状況分析ができなくなってしまうのだ。
先輩里母さんが懲りて改める手順を分解して示してくれたことによって見えてきた。
ノコは「失敗したくない」気持ちより「当時の嫌な気持ち」のほうがかなり強い。だから、「失敗しないためには」と回避方法を考えることができず、「嫌だ嫌だ嫌だ!」という感情の渦に飲まれてしまう。
先輩里母さんは、自身の養育では先のサイクルではなく次のサイクルに持っていこうと考えているそうだ。
成功する→褒める→自信になる→予測ができるようになる。
嫌な感情の再現が強すぎるノコも「成功する→褒める→自信になる→予測ができるようになる」というサイクルなら好転しそうだ。
まずは「成功体験」。
目下ヤダヤダだらけのノコはそこにたどりつくのも時間がかかりそうだが、進む方向を変えることで歩む足に新たな力が入る。
嫌な気持ちが起きる状況を減らし、よい気持ちになる場を増やす。
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